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決着

※一部中身を改訂しました。

突如始まった、二人の詠唱。


それにより、ステージ内……いや、()()()()()()()()()()()()()


「なんじゃこれ!?」

「うわっお米が()()()()()()!?」

「いや、お前もだからな!?」

「んな、マジだ!?」

「私は男になってるんだけどー!」


どういう訳か、俺の体が性転換を起こし、女性型になっているのだ!しかもそれは俺だけじゃなく、お米もそうだし、クマ先輩に至っては男性型になってる!


……とゆーより、コロシアムの中にいる人全員が、性別逆転を起こしている!あっちこっちで、自分の性別が変化したことに驚いてる声がいっぱいだ!


なんで!?

観客席側には、結界が施されてるんじゃないの!?運営側が作ったんだから、ある意味絶対無敵とも言える代物!それが、どうやったら結界を貫通して、こっちに被害が来る訳!?


『おぉ!私もwomanになってるねぇ!』

『ほぉ?男ん体ってんな、意外とガッチリしちょっもんなんじゃな。これならどしこでもチェスト出来ろごたっ!』


しかも変化は俺達だけじゃなく、天使と悪魔にも起こっている!一体全体、どういう事なのこれ!?


《さぁさぁ、盛り上がりすぎてしまってきたー!!プレイヤーニセモノさん、奥義である『嘘偽リノ幻想郷(サカサマ・セカイ)』を発動させたぁー!!直径500メートル程の空間を生み出した後、空間内にいるもの”全て”を”あべこべにさせる”、地味なようでめっちゃ厄介な能力だぁー!!しっかり頭を使って行動しないと、痛い目に合うのは必然だぞー!!効果時間はキッカリ3分!果たして、3分間の内に仕留める事が出来るのかぁー!?》


あ、あべこべになる?逆転するって事?あ、だから性別逆転してんの!?

ほんでもって、ゲームマスターの解説を聞く感じ、多分この性別逆転はまだ序の口かもしれん!


………いや、よく考えたら、結界を貫通する理由を言ってないぞ!?


「相変わらずふざけた能力だなぁ、ゴミめ。私と戦う時は、ふざけられないと言っていなかったか?」

「ふざけずに戦うと言ったな。あれは嘘だ!」

「ふざけた野郎だ!!」

「そのとおーり!俺はふざけるのが大好き!人生、真面目も大切だけど、ゲームの時くらいはふざけなきゃ!そういうお前さんは、いつも通り決戦型だなぁ」

「貴様とは違うのだよ、永遠の愚者め!」


でも、何故かAMENプリーストだけは、女性型になる事は無く……しかも、なんか黄金のオーラを纏っている。どこの戦闘民族?って思うくらいだ。


《さぁ、AMENプリーストも負けてはいないぞ!奥義、『AMEN(そうあれかし)』が発動したことにより、自身に超絶強力なバフ+状態異常完全耐性を付与したぞ!シンプルな効果ではあるが、とても強力だ!なんせ最高ランクのバフだからな!効果は折り紙つきだ!》


ゲームマスターも認める程の、最高クラスの奥義。それでAMENプリーストだけが、性別が変わっていないのか。


《しかし、効果は長くは続かない!こちらもまた、効果時間は3分間だ!時間内に解除しなかったら、双方共に、自身に超絶デバフと状態異常が降りかかる、正に諸刃の剣だ!さぁ、戦え英雄!迎え撃て魔王!真の戦いは、これからだぁー!!!》


ゲームマスターの声に合わせて、周りも、さっきまでの混乱はどこへやら、大熱狂の歓声へと早変わり!


そうだ、あの二人が時間制限付きの奥義を使ったんだ!つまり、この戦いもあと少しで終わる!

だったら、性転換なんて些細な事に、騒いでいる場合じゃねえ!


二人の戦闘を、しっかり見届けなくては!


『おいMaster!なんで私までManになってんだぁ!?』

「あとでちゃんと元に戻るから!さぁ、行くぞガタノゾアちゃん!」

『Yes, sir!』

「我等も行くぞ、マルタ」

『分かりました、神父様。悪魔は私にお任せを…!』


天使と悪魔が、空へと飛び立ち、交戦を開始する中。


ニセモノさんとAMENプリーストが、それぞれの得物を()()()()……静かに、歩き始めた。


一歩一歩、ゆっくりと。時間制限がある筈なのに、二人はゆっくりと近づいていき……。


そして……!


「「死ねオラァ!!」」

バキィッ!!


二人同時に、相手をぶん殴った!!


………いやバフかけといてやることがクロスカウンタぁー!?


《おぉーっと!綺麗なクロスカウンターが発動だぁー!!お互い、自分にバフをかけているようなものだから、この一撃はかなり強烈だぞー!!》


お互いに顔面を殴り、顔面で受け止めて。

暫く拮抗した後、お互い殴り飛ばされ、数歩下がった。


お互い、たった一発の拳を食らっただけで、口からは血を垂れ流し、鼻血が溢れ、殴られた箇所がもう腫れあがっていった。


それでも、二人は戦う事を辞めずに、再び対峙した。


「こん、にゃろ!」

「ウルルァ!!」


そしてまた、互いに殴り始めた。


ニセモノさんの拳が腹にめり込み、AMENプリーストが一歩下がる。しかし倒れる事はなく、前に一歩進んで、ニセモノさんの顎をかち上げる。

アッパーカットを食らって、よろけそうになるニセモノさんに追い打ちをかけるように、AMENプリーストが、お返しだとでもいうように、お腹に掌底を打ち込む。

その一撃が効いたのか、うずくまって吐血するニセモノさんだが、すぐにまた不敵な笑顔を浮かべて、AMENプリーストの膝を蹴り上げ、一瞬よろけた所に、顔に膝を打ち込む。


何の捻りもない。駆け引きの様子すらない。

純粋な、ただの格闘戦。


こっちに被害が及ぶ程の空間を作り上げておきながら。自身に強力なバフをかけておきながら。


やっている事は、ただの喧嘩だった。自分が一番だ!と奥義発動前にやっていた、魔法や技のぶつけ合いじゃない。


絶対に跪かせてやる!という意思がこっちにも伝わってくる程の、意地と誇りのぶつけ合いだった。

気が付けば、息をするのを忘れるくらいに、二人の戦いに夢中になっていた。


「な、なんつーか……地味だな?」

「いいや!俺には分かる!あれはライバル関係にある者だけが行う事を出来る、友情の喧嘩だ!自身の想いを拳に乗せて、相手にぶつけて語り合う!正に、正義と悪のぶつかり合いの原点とも言える!」

「うわ、急に早口になるじゃん」

「先輩、辛辣すぎます!」


しかし、その殴り合いは、ただの殴り合いで終わる事は無かった。

最初こそ、蹴りとか掌底だの、武器以外何でもありな格闘戦をしていた二人だったが、いつの間にか殴る事しかしなくなり、その拳と拳の応酬は、徐々に動きを速めていった。最初こそ、互いの顔をぶん殴っていたんだけど、次第に二人は殴られることはなく、代わりに拳と拳がぶつかり合う方が多くなっていった。


そんで最終的には―――


「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」

「ブルルルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


急にジ○ジョ始まったんだけど!?拳と拳の連打が急に始まって、衝撃波が出てきているんだけど!?


でも、小細工無しとも言える殴り合いは、ちょっと、その………すっごい興奮する!どっちが先に倒れるのかが、気になってしまう!


あ、そういえば天使と悪魔は!?すっかり忘れてた!!


『え、何やってんのMaster…こわ……人じゃねえよアレ…』

『わ、わぁー……ひ、人の身であそこまで……』


おい相棒たちにすらドン引きされてるじゃないか!?

どんだけ人間離れした感じになってんの!?あの二人!


「これで終いだあ!AMENプリースト!!」

「ルゥアアアアアアアアアア!!」


っ!決着か!?

距離を取った二人は、右腕にエネルギーを集中させていき、強大な力を生み出していった。


ニセモノさんの右腕は、闇の竜のようなオーラを纏い。

AMENプリーストの右腕は、金色に煌めいていた。


「『泡沫ヘノ子守唄(エンド・ララバイ)』!!」

「『黙示録の日まで(アポカリプス・ナウ)』!!」


右腕にエネルギーを集中させた、二人の渾身の右ストレートがぶつかり合い、激しい衝撃波を生み出し……!


遂に、決着がついた!!


勝者は――――!!!

戦闘描写って、難しいね……。

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