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魔王VS英雄

「なぁ神父!最近どうよ、調子は!迷える子羊、増えてきてるぅ!?」

「あぁ。まだまだ救いを求める者は多い。私はただ、一切の迷いなく、救える者は救うのみよ!」

「ご立派、神父の鑑!なら、俺の事も救ってほしいもんだね!」

「あぁ、良いだろう。貴様には”死”を以て、その罪を赦してやろう!!」

「アッハハ!ざけんな!!」


コロシアムステージにて、ニセモノさんとAMENプリーストが、軽口を叩き合いながら、激戦を繰り広げていた。


「何あれ、終末戦争か?」

「トッププレイヤーの戦いって、マジで参考にならないわね」

「俺もいつか、あれほどの高みへ…!」


皆で見ているが、本当に参考になりすらしないような戦闘しかしていない。


まず始めに、ニセモノさんは魔法陣から大量の剣を生成して、それを次々に射出するという、ロマン溢れるやり方で、AMENプリーストと戦っている。


《さぁー!出たぞ出たぞ!魔王の十八番!数秒間しか存在出来ない+耐久力がほぼ0の状態でしか生み出せない代わりに、ノータイムで大量生産する事が出来る、ほぼ鍛冶屋泣かせの『贋作魔剣』を使った、某金ピカを彷彿とさせるその攻撃、まさに剣の流星群!『流星魔軍(メテオシャワー)偽型(イミテーション)』だぁー!》


おぉ、名無しの神威の実況解説が唸るねぇ。ゲームマスターだからこそ、プレイヤーの攻撃が何だーとか、これはこうやってるんだーってのが分かるのか。


そんなニセモノさんの相棒である悪魔も同様に、火縄銃を量産して放つという、遠距離火力型だ。ニセモノさんが放つ攻撃に合わせて、弾丸に闇を纏わせた攻撃をしていき、ニセモノさんを支援している。


『以前の私と同じ戦闘方法だね。ただ、彼女の方が、よりWarlikeだけど』

『遠くからチマチマと、鬱陶しか事しかせんな。正々堂々戦わんか!』

『はぁー、Angelは本当にbarbarismだねぇ』

『あ゛ぁ゛?なんかゆたか、ゴミムシが』


そこ、頼むから喧嘩しないでくれ。

…目の前に集中しよ。


AMENプリーストは、両腕に装備した十字型の籠手トンファー(仮称)で、その攻撃を全て受け止め、砕いていく。どれだけの量が、こっち(観客)側から見ても、眼で追えるかギリギリレベルの速さで来ようとも、全てをその籠手トンファーで受け止め、一切自身に被弾させる事なく砕いていってる。


《さぁさ、神父も負けてはいないぞ!迫りくる剣の流星群を、顔色一つ変えずに破壊しながら、前へ前へと突き進む!我が道を阻む者は、誰であろうと救済して(殺して)いく!それが神父の生きる道だぁー!》


……ゲームマスター、絶対楽しんでるよね?何というか、【AO】の中の人ってこんな感じなのかぁ……だからこのゲームも色々ありなんだぁ……って、謎の納得が出来ちゃう程だぞ?


おっと、目の前の戦闘に集中。

お、AMENプリーストの相棒である天使もまた同様に、持っているデスサイスを使って、攻撃を捌いている。悪魔が放つ弾丸や魔術を切り裂いていき、すぐに悪魔の懐にまで跳んで、鋭い攻撃を放つ。


勿論、悪魔も攻撃を食らう前に、柔術を使って躱し、すぐさま後ろに下がって距離を取っていく。


『そこじゃ!行け、斬り殺せ!』

『撃て撃て、我が同胞よ!』

「……あの二人、なんだかんだ仲良しでは?」

「言うなお米、言ったら多分面倒な事になる」


ツッコミをしたその時、周りがざわつき始めた。どうやら、試合に変化が起こったようだ。


ステージに目を向けると、先ほどまで攻撃を受けるだけだったAMENプリーストが、ここで突然、捨て身の突進した!


「『マタイによる福音書』『マルコによる福音書』『ルカによる福音書』『ヨハネによる福音書』……!」

「んなっ、もうかい!」


ん?片手に本……成程、あれを使ってバフをかけたのか!

AMENプリーストは、あっという間にニセモノさんの目前にまで到達し、強烈な一撃をお見舞いすべく、拳を振り上げた!


そしてその拳には、雷のような光が、バチバチと音を立てながら迸っている!


「死ね。『ヨハネの雷鳴』」

「死ぬかよ!『大地の城壁(グランド・ウォール)』!」


電撃を纏った攻撃が振り下ろされる直前、ニセモノさんの目の前に、土魔法で造り上げられた壁が数枚、一瞬にして生み出され、AMENプリーストの前に立ち塞がる!


だが、神父は一切動じる事なく、壁ごと魔王を殴り飛ばした!


《オォーっと!これは強烈ゥー!!AMENプリーストの聖なる一撃、『ヨハネの雷鳴』がクリーンヒットぉー!!これにはたまらず、魔王ニセモノさんも吹っ飛ばされたァー!!AMENプリースト、勝利への一歩を踏み出し始めたぁー!!》

『Master!?ぐぁっ!』

『よそ見をするなんて…可哀想な子…』


AMENプリーストの活躍に、天使軍勢から大歓声の声が響き渡る。

逆に俺達悪魔陣営からは、嘆きと応援の声が響く。


「立てー!立って戦え、ニセモノさーん!悪魔陣営の力を見せてくれー!!」

「いいぞー神父様ー!悪魔なんてやってしまえー!」

「いけ、神父!正義は必ず勝つという事を、悪の組織に教えてやってくれ!」

「勝てー!勝ってしまえー!!」


おいこいつ等、ニセモノさんにお世話になってもらったというのにこの態度はひどくねぇか?いや、陣営の事を考えたら至極真っ当な応援なんだけども!!


「おい、ダイノキング!俺達もニセモノさんを……あれ、アイツどこ行った?」

「さっき急用が入ったって、涙流しながらログアウトしたぜ」

「おい!?」


おい、このメンバー俺だけ悪魔陣営なの辛いんだが!?


って、そうこうしてたら、AMENプリーストがニセモノさんに近づく!……つか、手に持ってんのって短刀と…紫色の如何にも毒です!って感じのオーラを纏ってるけど!?え、神父がそれ使っていいの!?大丈夫なのそれ!?


「早く負けを認めろ、愚かな悪よ。そうすれば…」

「何を……味気ねぇこと言ってるんだぁ…?まだまだ、これからだろうがよォ!」

「っ!」


お?なんだ?このままAMENプリーストが追撃するのかと思ったら、急に下がり始めたぞ?


「さぁ、さぁ!さぁさぁさぁ!俺劇場の始まりと行こうか!!楽しく狂おうぜぇ!?」

「……クハ、クハハ…!クハハハハハハハハ!!そうだな、そう来なくてはな!では、私も精一杯やろうではないか!!」


な、なんだ?急に、二人の周りの空気が一変したような…?


《おっとー?これは、まさか?やるのか、やっちゃうのか!?二人共、これが前哨戦である事をすっかり忘れてるー!!あとでやる人達の事を考えてほしいんだけどー!!?》


「『魚は空を飛び向日葵は冬に咲け 太陽は西から昇りて世界を凍えさせろ 赤は進み青は止まる 善人は闇に染まりて人を殺め 悪人は光を浴びて人を救え 世界はこんなにも嘘偽りで満ちている』!!」

「『我等は天罰の地上執行人 愛には花を悪には罰を 我等が使命は我等が神を愚弄する者共に 一切の慈悲なく 血の一滴すら残さず滅する事にあり』!!」



「『嘘偽リノ幻想郷(サカサマ・セカイ)』!!」

「『AMEN(そうあれかし)』!!」



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