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特訓って大変ですね(白目)

妖狐御殿の客室の間にて。

俺達は、疲弊しきっていた。


「はぁー…!はぁー…!」

「い、いっぱい動いたねぇ……」

「にゅぐぅぅ…」

『いやはや、ここまで大変だとは…!』

「おなかすいたぁー……」

「師匠、マジで容赦ねーっす……!」


ひたすら逃げ回る事が条件の特訓を開始して、早くもゲーム内日数だと、数日が経過しました。

ログインをしてはここで逃げる練習、そんでバタンキューなって起きたら逃げる練習。その繰り返しだ。


本当にね……シューティングゲームでよくある弾幕ゲーみたいな感じだよ!センコもノリノリでやって来るからさぁ、攻撃の隙間とかが見つけにくすぎる!!馬鹿か!!?


そんでもってさぁ!何が酷いって、あの狐火にぶつかりでもすれば、大量のデバフを食らうんだよ!!なんで一回しか食らってないのに、鈍足化×5とかさぁ!暗闇状態付与とか、感覚遮断状態とかも同時に付与される訳!?

そんでもって、本人ならぬ本狐はさぁ!


「こんなものでは、がしゃどくろを倒すなんて夢のまた夢だぞ!あいつの繰り出す怨念による弱体化は、我等の術よりさらに強力だぞ!」


って平気でぬかしやがる!!ざけんな!こっちはエンジョイ勢なんだぞ!いきなりプロ御用達みたいな特訓されても困るんだけど!?

と言われても、ぶっちゃけこれ以外に良い方法とか思いつかないっちゃつかないので、甘んじて現状を受け入れるがな!!


で、まぁ……そんな特訓も、本日は終了。ゲーム内で寝ると、10秒近くであっという間に朝になってて、休息もとれる。流石【AO】。


それに、この特訓は全く無駄という訳ではない。


「……うん、ちゃんとレベルアップしてる…」


ジャホンに来る前の俺は、レベルが22だった。

そんで今はと言うと……。



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PN:雨天決行

Lv:26

メイン職業:召喚士

サブ職業:鍛冶師

種族:唐傘お化け

HP:61

MP:70

力:25

敏捷:31

器用:66

耐久:50


スキル

【召喚術】【翻訳】【鍛冶術:Lv.10】【風妖術:Lv.18】【水妖術:Lv.24】【刀術:Lv.12】【木工】



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と、22レベルの時と比べたら、敏律と耐久度が大幅に上がっていたのだ!


最後に見た敏律ステータスは、確か19とかそんくらいで、耐久は37。そこへたった4レベル程上げただけで、こんなにも違いが出てくるんですよ!


いやぁ、経験ってちゃんと反映されるんだね……!

……耐久もかなり上がってるのは、被弾しまくったからだな、これは。


「わ、我等が王よ……我等はお風呂に行ってくるよぉ…」

「にゃーぅ…」

「あ、自分も行きたいっす!仲を深めましょう!」

「おぉ、気をつけてな。風呂で寝るなよ?」

「気を付けるともぉー……」


ここで八雲が、すこちゃん様とココノを連れて風呂へと向かった。八雲もすこちゃん様も、お疲れ様だ。

………明日辺り、皆のステータスを確認しとかないとな。皆のステータス、全然見ていなさすぎた。ちゃんと仲間のステータスを見て、喜ばないと!


「くぴゅー……すぴゅー…」

「おろ?世海は寝ちまったか」

『では、私が寝かせてきます。実を言うと私も眠たいので…』

「そうか、良い夢を」

『Good night, my lord. A good dream』


そう言って、アシュラは世海を連れて、寝室へと戻っていった。


さて……俺はどうしようか。正直、もうちょっと起きていたい。

となれば、散歩だな。


重い体を起こして、俺は客室を出て、妖狐御殿の中を歩く事に。道中、妖狐の仲居さんがお辞儀してきたり、働いている所を見て少し癒されたりも。


少し歩くと、中庭へ繋がる通路を見つけたので、そこを通る。そしたら、先客がいた。

簪できつね色の髪を整え、着崩した着物はとても艶やかで……何というか、大人な色気というのを醸し出す美女だ。


「やぁ、お疲れやす。頑張ってるようやな」


俺に気づいた女性は、煙管を吹かしながら声をかけて……ん?その声は…。


「タマモ……さん?」

「そや。そういうたら、人の姿で前に出るのんは初めてやったかいなあ?」

「そう……だな、少なくとも初見だ」

「うふふ、そうかい。なら、しっかりと目に焼き付けとくかい?」

「健全な男子にそれはキツイ!!」


妖怪好きとは言え、俺もしっかり男子なので!その誘い文句は色々とダメ!!


よーし落ち着けー……すぅー…はぁー…!よし、落ち着いた。


「ふぅ。ここでは何を?」

「ん?月見酒をしていただけやわぁ。どうだい?一緒に月を見ながら、一杯」

「未成年なので、気持ちだけ受け取っときます」

「真面目やなぁ」


ゲームの中とはいえ、そこはしっかりとね。

……でも、確かに上を見上げれば、綺麗な三日月が空に浮かんでいた。これは見入ってしまうのも納得だな。


「どや?お客人。うちの可愛いココノは、元気に修行に励んでるかい?」

「ん?えぇ、元気に騒いでうるさいっすよ」

「アッハハ!元気やったら良かった!」


……九尾姿の時は、表情とかは全然分かんなかったけど、いざこうして人の姿で会話してると、しっかりとコロコロと表情を変えていて…ゲームのキャラクターである事をすっかり忘れてしまいそうになる。

最近のAI技術って、本当にすごいだな。


「あ、そうそう。アンタに少し相談なんやけど」

「なんですか?」

「アンタ良かったらでええんやけどなぁ?ココノを、そのままアンタのとこの仲間として、連れていったってくれへんかいな?」


おっと、ここでココノの勧誘イベント!?本人の口からじゃないのがアレだけど、こういう感じのイベントもあるとは!


「その心は?」

「あの子ぉねぇ、うちの血ぃ色濃う受け継いでるだけあって、才能の塊なんよ。そやさかいね、あの子ぉの成長を、この里だけに留めとくのんは、えらいえらい勿体ないのやで!そやさかい、アンタと一緒に旅をして、貴重な経験をいっぱい味おうてほしいねん」


うーん、これは族長の鑑。


「そんでいつかは、里を受け継いで、妖狐の未来を強固なものにしてほしい?」

「あー、そこまでは考えてへんわ。あの子ぉの未来を決めるのんはあの子ぉな訳やし。もし世界を見てきて、ほんでもうちの跡を継ぐのならそれでええし。逆に別の道を進むっちゅうのなら、他の子ぉ指名するだけやし」


お、人の未来を勝手に押し付けるタイプじゃなかった。こういうのって、しっかり受け継ぐことが大事!って言いそうなもんだけど……やっぱり、上に立つ存在の人ってのは、考えている事が違うんだな。


「そういう事なら、あとはココノの気持ち次第だなぁ。少なくとも、俺は歓迎する!」


きっと、他のメンバーも歓迎するだろう。少なくとも、仲間が増える事でギスギスするようなメンバーじゃないしね!……多分、きっと。


「そう?せやったら嬉しいわぁ!」

「あー……その代わりと言えばあれなんだけど…」

「うん?なんかいな?」

「……大妖怪について、色々情報ください」


そっちの要求は飲んだから、こっちの要求も通してほしい。という、ちょっと邪な思いを持って、提案をする。……どう出るかなぁ…?


「……そこは普通、何らかのお宝やら妖具と交換を提案するもんなんちゃうんかいな?」

「いや、俺にとっては金銀財宝(そんなもん)より、妖怪に関する情報の方がお宝なんで」


金銀財宝とかって、ゲームを進めてったら自然と手に入るからね。そんなもんより、年長者から得られる知識が欲しい訳だよ俺は!


「はぁー……変わってるねぇ、アンタ」

「よく言われる」

「……フフ、ウッフフフ!ええね、ますます気に入ったわぁ!こないな年寄りの昔話で良かったら、なんぼでも語ったるわ!」

「お願いします!」


そうして俺は、大妖怪についての情報をたんまりとゲットする事に成功したのだった。いやぁ、いつか出会ってバトって、可能であれば仲間にしたいね!!そう考えると、ワクワクしてくるわ!!

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