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妖狐御殿

『やぁやぁおいでやす!ようこそ、うちの家に!』

「お邪魔致しますー」


ナナセという、案内人ならぬ案内”狐”の案内により、特にトラブルも何もなく、無事に御殿にたどり着く事が出来た。


仲居さん妖狐に歓迎されながら、そのままナナセの後をついていったら、九尾…もとい、タマモの元へたどり着いた。


タマモは広い部屋の奥で、座布団の上に狐姿でちょこんと座っていた。可愛いなあれ。それに部屋が和室というのも相まって、すっごい似合っている。映え~って奴だな。


「ほぉ~……さっきまでいた宿泊所より広いねぇ」

「おっきーい」

『気に入ってくれたようで何よりやで。ほな、早速本題に入りまひょか?』

「お、早速か。それはこっちにとってもありがたい。よろしく頼む」


タマモが、部屋の中で待機していた一般兵のような妖狐達を退室させて、俺達だけにしてくれた。俺達にだけしか話さない事でもあるのかね?もしくはただの気分?


『さて、ほな始めまひょか。言うても、やる事は簡単やで。うちら、狐の一族があんたを鍛えるのを支援する。ただそれだけやで』

「成程……うん?」


言いたい事は分かった。だが、少し待て。


「俺達ががしゃどくろを倒すのはまぁ、別に良いといえばいいんだが……アンタらが直接戦ったりとかは?」

『言いたい事は分かるわ。そやけどなぁ、うちももう引退を考えてる程、全盛期と比べて力は衰えてんねん。それに、あの温泉宿を開いてる男たちに敗北したっちゅうのもあって、さらに弱なってもうたんやで』


あの温泉宿にいる男……ニセモノさん達か?

成程。年のせいもあるけれど、過去に大暴れしてた時に、ニセモノさん達と戦って負けて、その時に出来た傷かなんかの影響も加わって、さらに弱体化。がしゃどくろとかの大妖怪相手と、タイマン出来る程ではなくなっちまったんだな。


『ほんで、この里におる子ぉは皆、戦闘なんてからっきしやで。前までは戦闘出来る子ぉやらいたんだけど……数匹を残して、がしゃどくろ含めた大妖怪の餌食になってもうたの。それからは皆、もうすっかり怯えてもうて』


ふむふむ、つまり……。


「要するに、自分達だけじゃ、もう他勢力と喧嘩を売買する事すら出来なくなったから、我等が王に泣きついたという事だねえ」

『……合うてるけど、言葉に棘を感じるなぁ。年長者を敬うてほしいもんや』

「喧嘩腰にならないの、八雲」

「信用ならないからねぇ」


………うん、まぁ……糸目で狐のキャラなんて、確かにどの媒体でも腹に一物抱えてる奴多いけども。

でも、こっちとは利害が一致してるといえばしてるんだ。あいつを倒す道があるんなら、例え罠であろうと、乗っかってやるさ。


………それに、そういうのもアリかな…って。

………今、誰かからドMかよってツッコまれた気がする。失敬な、妖怪だけにだわ。


「まぁ、事情は分かった。そういう事なら仕方ない」

『分かってくれて嬉しいわぁ。ほな、本題に入ろう!さぁ、入っといで』

「お邪魔しまーす!」

「ん?」


なんだ?急に一匹の狐が……あら、この子も九尾だ。


『紹介するわ。うちの孫、ココノやで。うちの血ぃ受け継いでるだけあって、将来有望株やで!』

「よろしくお願いします!」


お孫さん!お孫さんがやって来るとは、どういう感じのシナリオになってくるんだ?


『今日からアンタとココノ、ほんで後ろのあんたたちを、うちと数少ない戦闘系の子ぉたちで徹底的に鍛えたる!』

「頑張ります!」


成程、そういう強化イベントか!あれ?でもさっき……。


「あんたさっき、もう戦わないって……」

『がしゃどくろを倒せる程の力は失うたとは言うたけど、戦えへんとは一言も言うてへんで。まぁ、里を守るさかい精一杯な所ではあるけどなぁ』

「んぅ……むずかしーの、わかんない…」

『要するに、あのfox queenは、故郷を助ける事で忙しいんです。だから、私達を呼んで、代わりに戦ってほしいと依頼してるんです』


解説ありがとう、アシュラ。


つまり、だ。自分達ではもう諦めていた、がしゃどくろへの復讐。そこへ丁度、自分達と同じく、がしゃどくろに復讐を誓う俺達が現れた。

ならば、俺達に自分達の技と知識を与えて、自分達に変わってがしゃどくろを倒し、自分達の悲願を叶えさせてほしい。という訳だ。


そういう経緯があるのであれば、妖怪好きとしては見過ごせないな!


「えーっと、ココノだったか?これからよろしく頼む!」

「はい!短い間になるかもしれませんが、一緒に頑張りましょう!」


という訳で、俺達の修行が開始するのだった!


『あぁ、そうやそうや。忘れる所やったわ。最近物忘れが多おして……年ってかなんわほんま。あんたにこれ渡しとくわ』

「?」


タマモに呼ばれ、何かを渡された。これは………う゛。


「狐耳と、尻尾………の、コスプレセットか…!?」

『この里に入れるのんは、狐だけ!そやさかい、あんたたちはこの里に入る時、それ着用してな!』

「……この里に入る前、我等は普通に入れたと思うんだがねぇ?」

『そら勿論、狐とちがうあんたたちでも入れるようにしたったさかいやで。結界ってね、貼り直したりやら大変なんよ?あんまり負担かけさせんといて』


………男の狐耳尻尾って、需要があるんだかないんだか分からん感じじゃない……?いや、まぁ……郷に入っては郷に従えっていうから、やるけどもぉ……なんか、なんかなぁ……!

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