前へ次へ
49/99

初めてのデスペナルティ

デスペナルティ。略してデスペナ。

モンスターによって倒され死亡するか、罠にかかって死ぬか……何かが理由で”死亡”した時、死んだプレイヤーにペナルティが課される。

それがデスペナ。


ペナルティは、簡単なものだ。

所持アイテムの3割を消失ロスト、ゲーム内通貨の2割を消失、自身に複数の弱体化(攻撃不可、魔法不可、ステータス低下)。


そして………召喚したモンスターを、一定時間、召喚不可。


更に、デスペナを食らった者にはそれが分かるように、首に黒い首輪を巻かれる。無理に剥がそうとすれば、デバフ期間がさらに長くなるという謎の仕様付。


「フフ、フフフフフフフフフフ」


気づけば俺は、『噓偽りの温泉旅館(フェイク・ランド)』ギルドの、案内された客室に一人、横たわっていた。

暫く脳みそが動かなかったが……数秒後には全てを思い出した。


そうだ、死んだのだ。

抵抗も出来ず、怯ませるどころか傷一つ、骨の一欠けらすら破壊できず。ただ、無様にやられたんだ。


ああいう時って、大体はいきなり覚醒したりだとか、第三者が助けに来てくれたり、別の大妖怪が現れて、結果的に逃げ切る事が出来たとか………まぁ、それはあくまでフィクション。そして俺はエンジョイ勢。ガチ勢みたいに、ゲーム攻略をあんまり本気で挑んでいない。


だから負けたのかもしれない。だから、仲間を死なせたのかもしれない。


それに気づいた時はもう…………笑うしか、なかった。


「いやぁ、良いお湯だったなぁ!」

「うむ!丁度いい湯加減、目の前に広がる絶景!まさしく極楽!」

「だな!この後のご馳走が楽し……」

「アーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!!」

「うおぉ!?な、なんだぁ!?」

「あれ、雨天いつの間に?てかうるさ!?一旦落ち着け馬鹿!!」



~~閑話休題(何とか落ち着いた)~~



「成程、デスペナを食らったのか……それは発狂不可避だなぁ……」

「ん?デスペナを食らうとどうなるんだ?」

「簡単に言えば、攻撃できなくなるし、ステータスに大幅弱体化!そして召喚したモンスターや、今回みたいな特殊召喚した天使と悪魔を、一定時間、つまりは丸一日だな!経たないと再召喚する事すら出来ないって事だ!」

「!?!?!?」

「いや、召喚士なら知っとけよその情報くらいは…」


落ち着いた所で、湯上りホッコリスタイルの三人に事情を説明。一人よく分かってなかったっぽいが、仮面セイバー1号の説明で理解したっぽいな。


「つー事で、俺は決意した。必ず、かの邪知暴虐ながしゃどくろをこの手でぶっ殺す事を!」

「……お前、妖怪好きなんじゃねーのか?」

「愛ゆえに殺す!」

「お前は何を言っているんだ?」

「成程!」

「理解したのか!?すごいな!」


次は油断しない!僅かではあるが、アイツの攻撃方法も知れた!性格も知れた!なら、次は殺せる筈だ!!


「やっほー皆!楽しんでるー?」

「あ、ニセモノさんだ」

「イエス!皆の頼れる魔王様!ニセモノさんだぞ!これから宴会場でご飯を用意するから、皆来るように!」


あぁ、ご飯の用意がもう少しで出来るから、宴会場で待機しといてーって事ね。

……あ、そうだ。


「ニセモノさん、ちょっと相談いいですか?」

「うん?何、もしかして加入希望?」

「いえ……【大妖怪】についてです」


大妖怪、というワードにニセモノさんが反応した。そして、俺の状態異常に気付いたようで…


「じゃあ、俺はちょっとこの子の相談に乗るから、先に行ってて~!」

「あ、分かりましたー。……何する気だ?」

「ん、ちょっとな」

「……変な事はすんなよ?」

「しないよ、流石に」


ここで、また三人とは別れて、ニセモノさんと二人、部屋に残る。


「さて……その首輪、そして大妖怪というワード………それらから察するに、唐傘君。君は大妖怪と遭遇してしまったんだね?」

「あぁ。がしゃどくろだった」

「どこで見つけた?」

「草原地帯の奥、未開拓温泉地帯で」

「えぇ……」


困惑してる。どうやらそこは既に調査済みの地域なのかもしれない。なのに出てきた事に、困惑しているっぽいなこれ。


「そっかぁ……がしゃどくろとは、また厄介な相手と遭遇したねぇ」

「アイツ、あの図体で早いの反則じゃないですか?」

「雷獣とか大百足とか、がしゃどくろより早いぞ?」

「うわぁ想像したくねぇ……!」


やっぱり、大妖怪ってどいつもこいつも規格外ばかりだなぁ!!やっぱり運営って頭おかしいわ!!


「っとと、忘れる所だった。それで本題なんですが」

「はいはい。相談というのは?」

「……がしゃどくろは、俺の獲物だ。絶対に俺が殺すと決めた。だから、アンタたちには悪いが」

「あ、りょーかーい」

「………緩いなぁ!!」


そこはさぁ!!なんか、こう……あるじゃん!漫画とかでもさぁ!あるじゃん!「ボロボロに負けたお前如きが、本当に勝てると思ってるのか?」とかぁ!!「じゃあその間、がしゃどくろが攻めてきても、俺達は黙って町が破壊されるのを見ているだけにしろって言うのか?」とかさぁ!!


俺に色々と、覚悟を問いに来る場面だったりするんじゃないのぉ!!?いやまぁ、スムーズに話が進んで正直助かってるけどもぉ!!


「アハハ!別に緩い訳じゃないさ!君の覚悟を尊重しただけだよ♪」

「だとしてもさぁ!こっちはちょっと拍子抜けしたというかさぁ!!」

「いやぁ、新人君をからかうのは面白いねぇ♪」

「おい!?」


この魔王、本当に魔王なのか疑いたくなる……!ピエロとかって言われた方がまだ納得できる気がしてきた……!!


「まぁ、君ががしゃどくろを倒すのを気長に待つよ!こっちは天下無敵の魔王率いるギルドだからね!」

「えぇ、気長に待っていてくださいよ。絶対に復讐してやるからよお……!!」

「燃えてるねぇ~。そんな頑張る君には、これからご馳走をプレゼントだ!これからのゲームライフ、パーっと楽しむ為にね!」

「ありがとうございます……!」


よし、じゃあ飯食いに行こう!すっごい腹が減っているんだ!色々ありまくったせいでな!!

取り合えず、恨みとか決意は一旦置いておく!八雲達と合流出来たら、作戦会議とか色々しよう!一人で悩んでたって解決出来やしないんだ!それに、強くなるためには皆がいないとな!


と、いう訳で!今から飯食いに行ってきまーす!!八雲達の分、調達しとくからね!!


「……あの、出来ればがしゃどくろの攻撃手段とか教えてくれないですか?」

「そういうのは、自分で見つけて自分で開拓していくものだよ?」

「ぐぅっ、正論……!」

前へ次へ目次