前へ次へ
45/99

ジャホン観光

「こちらが、男部屋となっていま~す」

「女部屋はこちらで~す」


さて、道中でクマ先輩と別れて、俺達野郎軍団は、ジーク君に男部屋の案内を受け、今回泊まる部屋にたどり着いた。


部屋の中は、まさに温泉旅館!という風貌で、畳が敷かれた和室だった。本当に旅行に来た気分になって、気分が良いなぁ!


そして、ここからは自由行動の時間となった。


「俺は早速、温泉を堪能するぜ!」

「俺も行こう!ヒーローも温泉が好きだからな!」

「我はこの施設を探索するとしよう!お前はどうする?雨天」

「俺?俺は~……逆に、外を探検するとしようかな」


てな訳で。


「探検していくぞ~!」

「よっ、待ってたとも!」

「にゃお~♪」

「わぁー……!」

『私の知らないcultureが多くて、とてもワクワクしているさ!』


てことで、いつメンを連れて施設の外を探索する事に。


ジャホン名物とも言えるギルドを出て改めて周りの様子を見ると、ギルド施設を中心に、城下町のように施設や家が同居している。まさに、江戸時代に来たかのような風景。


正直に言って、すごい興奮している。


「ほぉほぉ、こんなに妖怪がいるとは驚きだねぇ!」

「っ………!!」

「…あれ?もしかしなくても、我等怖がれてるのかなぁ?」


…道行く妖怪と思しき生物たちが、すこちゃん様や世海には反応しないのに、何故か八雲の姿を見つけると、めっちゃブルブル震え始めた。

これは……あれか。八雲がヤマタノオロチっていう、神話クラスの大妖怪だからなのかな。


「うぅーん…我等としては、普通に過ごしてもいいんだけどねぇ。こうも畏まれては、ムズムズするよ」

『八雲先輩には、そういう趣味があったんだねぇ』

「……アシュラくぅん?」

『おっと失言、sorryね』


はーいそこ、喧嘩しないの。折角の観光なんだから、普通に楽しもうよ!


「おとーさん、おとーさん」

「ん?どったの世海」

「あれ、たべてみたい」


世海が興奮気味に見ている先は…温泉饅頭!いいね、俺も食ってみたい!


「よっしゃ、いいぞ!こっちにはPvPで得たお金があるからな!」

「わーい!」

「にゃーん!」


奪い奪われ、潤い渇き。そんなPvP戦争で得たお金は、結構潤沢だ。召喚に使うお札も、攻撃に防御、補助用に仕込ませておくくらいの量を買える程にね!……ここまで来ると陰陽師だな、俺。


もし仮に陰陽師としてプレイするとしたら、芦屋道満かねぇ?安倍晴明は……なんか、嫌。なんか嫌なのだ。


さて、そんな話は置いておくとして。俺は皆に温泉饅頭を買った。お店の人はプレイヤーで、温泉饅頭狂いだった。休みの日は温泉饅頭巡りしてるらしい。執念ってすごい。


「それじゃ、いただきま~す」


天辺にくらげマークがある、ザ☆温泉饅頭という形のそれを頬張る。

ふむふむ……んん、美味しい!流石はジャホンで作られる温泉饅頭……餡子の仄かな甘さとか、温泉水で作られる生地とかがとても美味しい。


これは…温泉卵も期待できるぞ?


「ほぉ~?この饅頭、中々美味しいじゃないか」

「はむはむ……」

『これがOnsenmanju……食べた事ない味だが、悪くないね!』


八雲達も、気に入ったようだ。さてさて、他には何がー…お?


「足湯がある!あれ入るぞ!」


足湯を堪能できる場所があったので、その近くで販売していた温泉卵を買って、足湯を堪能する事に。


「おぉー……あぁー…!」

「わっ、あたたかーい」

「おぉ~…これは、じんわりと来る心地よさだねぇ…」

『へぇ、これは良い湯加減だ。feetを湯に浸かるだけで、こうまで気持ちがいいとは……恐るべし』


日本…じゃなかった、ジャホン文化に初めて触れたであろうアシュラは、さっきから感心しっぱなしというか……すっごいゆるゆるだ。主に頬が。


おっと、温泉卵も食べなければ。皆に配って、付属された塩をちょいパラ……と。そんじゃ、いただきま~す!


「はむっ。ふむ………ん、うま!」

「おぉ、トロットロだねぇ…!」


中々に美味しいぞ、この温泉卵…!白身がトロトロで、黄身はしっかりとしてて……塩もいいアクセントになってて、とても美味しい!


うはぁ~……!これは来たかいがあるなぁ……!

いかん、本気でこのジャホンに腰を据えてしまいたくなる……!


…でも、『野望』を叶えるんだったら、ここにいたらなんというか……甘えてしまいそうになる…!鍛冶師を辞めてテイマーになって、その辺にいる妖怪を捕まえて達成!っていう思考回路になってしまいそうになる!!


それだけはダメだ!『野望』というのは、自分の手で切り拓くからこそ、意味があるのだ!そこで少しの妥協が入ってしまったら、それはもう『野望』ではない!


うん、そう考えたらここに来るのは時々というか……それこそ、観光気分で来る方がいいな!


「にしても……本当、人に紛れて妖怪がいる風景は良いなぁ……!」


天狗が釣りをしていたり、プレイヤーと鬼が呑み比べしていたり、垢舐めが川の水垢を舐めとってたり……うーん、天国!


「我等が王は、本当に妖怪が好きなんだねぇ」

「妖怪に脳を焼かれたと言っても過言ではない…それほどまでに、妖怪を愛しているのだ!」

「じゃあー…ぼくも、すき?」

「大好きだぞこんりゃろー!!」


可愛い事を言ってきたので、世海の頭をガシガシ撫でる。マジでうちの子可愛い。誰にも渡さんぞ!


……取り合えず、足湯と温泉卵を堪能した後は、ジャホンの雑貨屋を訪れる。

うーん……何というか、本当にお土産屋で見かけるよーな玩具が…ん?POPがあるな。


『オンセンガエル人形 戦闘時、自身にリジェネ(小)効果付与 200A』

『酒呑み木彫りベアー 設置した数秒間、自身にヘイトを向けるようにする 500A』

『湯けむり玉 温泉の湯気を利用して作られたけむり玉。温泉の効果で相手をリラックスさせている隙に逃げよう 300A』


…………お土産屋とは名ばかりの、戦闘及び補助効果を持つアイテムを販売するお店だったわ。でも面白そうだから、色々と購入する。使う日がちょっと楽しみだったりする。


あとは……ちょっとだけ、武器も揃えたい。


今までは、俺が妖術で、すこちゃん様が回復要因として、アシュラになる前…鬼銃(きが)は銃やら暗器やらで後方支援、そんで八雲がフィジカルや妖術でぶん殴るのがそんなだった。


でも、鬼銃がアシュラに、新たに世海が加わった事で、前衛として戦うメンツが増えた。となれば、俺もそれに便乗したい!


それに、今後仲間はどうしても増えてくる。ならば、今の内に前衛も後衛も出来るようにしておきたい。あくまで俺はエンジョイ勢だから、好きなように生きるのよ!


さぁ、そうと決まれば武器屋にGO!面白い武器とかあればいいなぁー!

前へ次へ目次