殴り合い
「お前、今レベルどんくらい?」
「丁度22になったくらいだな」
「あ、そうなの?実は俺もなんだよ」
「ほーん……」
「「…………やるか!!喧嘩!!」」
はい、てことで始まりましたよ、稲葉と俺による喧嘩が。
理由?シンプルな話だよ。
「お互いの実力を知るのなら、タイマンが一番!」
「数の利はこっちにあるぜ?そっちは大丈夫かぁ~?」
「へっ!進化したおトヨさんの実力、舐めてもらっちゃあ困るぜ!」
「はっ!こっちは八雲にすこちゃん様、アシュラに世海がいる!全員最高のメンバーだ!お前等なんぞ、あっちゅう間に征服できるさ!」
最後に喧嘩をしたのは、中学二年の時以来だ。
久々にやる、本気の殴り合い。本気の喧嘩。久々に楽しめそうだなぁ…!!
『Full powerで叩きつぶしてあげよう!』
『そん言葉、そんまんまお返ししてやっど…!』
うん、アシュラもおトヨさんも殺る気いっぱいだな!
「ふふふ…!ご友人と戦える事が出来るとは…!ドキがムネムネという奴だねぇ!」
「にゃーぅ!」
「がんばるぞー…!おー…!」
そして、八雲達も元気いっぱいだ!
え、過剰戦力じゃないかって?フフフ……喧嘩に綺麗も汚いも存在してねぇんだよぉ!それに、稲葉からこうしてくれって頼んだのよ!いずれ来るだろう、集団戦に慣れておきたいって意味でな!
「お、なんだなんだ?」
「おい、あれって…妖怪の変態とオカンじゃないか?」
「ホントだ!え、喧嘩か?」
「あぁ、ついにオカンの堪忍袋の緒を切っちゃったか…」
……おい、ギャラリー共。おい。妖怪の変態は認めるが、そのあだ名は辞めろ。なんか嫌だ。妖怪スキーとか、妖怪に憑りつかれた男とか…そういうのにしろよ。
んでなんだ、オカンって。もしかしなくても稲葉の事か?初めて聞いたぞ!?
「…俺、オカンって言われてるの?」
「みたいだな。俺に至っては妖怪の変態だし。事実だけども」
「認めるのか。確かにそうだけども」
「だがせめて、もっとこう…良い名前無かったかなぁ?ってなる」
「諦めろw」
「お前等、全力でアイツ潰してもオッケー」
「ごめんって!!」
許さない。俺は絶対に、許さない(俺、怒りの句)。
『PvPを開始します。バトルステージへ転送します』
さぁ、そろそろ時間だ。全力で叩きのめす。
『Ready... fight!!』
「行け、八雲!」
「任されたとも!」
試合開始と共に八雲を稲葉に向かわせて、奴の十八番とも言える機動力をそもそも使わせない戦法で行く。
しかし、障害はある。
『チェエアアアアアアアアアア!』
「おっとぉ!」
おトヨさんの存在だ。おトヨさんはゴリゴリの前衛職だから、パワーも当然桁違いだ。八雲の方が、ステータス的には若干リードしてるとは言え、無傷でいられるのは難しい筈だ。
なら、おトヨさん潰しに!
「アシュラ!すこちゃん様!世海!」
「にゃん!」
『roger that!』
「まーかーせーよー…!」
PvPを連れまわしたお陰で、皆のレベルはそれなりにある!進化で職業もステータスも、大幅に変更したアシュラを中心に、すこちゃん様と世海でおトヨさんに向かわせる!
っ!殺気!
「お見通しなんだよ、お前の戦法は!!」
ブンッ!
「っとと!」
くそ、やっぱアサシンなだけあって、動きが速いな!オマケにあの新調した短剣の効果も相まって、かなり早い!
接近戦はあまりしたくないけど、これは覚悟決めなきゃダメだな!
「食らえ、『ウインドアロー』!」
「『水妖術:水壁』!からの、『風妖術:風刃』!」
「当たるか!」
稲葉の攻撃を水の壁で防いで、風刃で攻撃するも、それより早く稲葉が動いて躱す。やっぱ敏律が早いと、こういう時に厄介なんだよな…!
『どけ、きさんら!『ホーリースラッシュ』!!』
『どけと言われてGet outする奴がいるとお思いで!?『shadow blast』!』
あっちはあっちで、詩術で強化した刀とチェーンソーソード…言いにくいからチェーンソードにしよ。と、アシュラの新武器であり、魔術で強化されたゴツイ刀がぶつかり合っている。
「すこちゃん様!」
「にゃーん!」
よし、素早さ補正が入った!これで追いつけなくとも、アイツの動きを多少は見れる…!とくれば!
「八雲、攻撃!」
「任されたとも!」
八雲がマフラーを二匹の蛇に変化させ、稲葉に向けて放つ。
「いぃっ!?」
稲葉、たまらず逃げる。が、残念!そっちには既に待機させてるんだよぉ!
ドフンッ!
「んぐっ!?」
「つかまえ、たぁ~…!」
「な、いつの間に!?」
ふっふっふ…!びっくりしただろ!おトヨさんに向かわせてた世海が、いつの間にか俺達の方に参戦していて!
ブラフだったのだよぉ!実際に出した指示は、おトヨさんに向かって攻撃じゃなく、おトヨさん付近で待機だったのだ!
『主!?くそ、どけぇ!』
『どかないと、言ったでしょうが!』
良いぞアシュラ、そのままおトヨさんを妨害し続けてろ!
「クソ、こうなったら…!『ラピッドショット』!」
ドドドドドッ!
「あばばばば…!」
げ、短弓なんて隠し持ってたのか!?いや、よく考えたら初期スキルにあったな!?短剣で使う事がめっちゃ多いから、すっかり忘れてた!
あぁ、世海が連続攻撃に怯んで、手を離してしまった!でもこれは仕方ない!忘れてた俺が悪い!
「世海、そのままダメージをチャージしてろ!」
「う、うん…!」
俺は黒大熊の短刀を装備しながら、稲葉に向かって突撃する!耐久だけはアイツよりある!意地でもしがみついてやる!
「ちょ、来るなお前!」
「悪いが、これは戦闘だ!綺麗も汚いもないんだよ!」
「くっそ、お前本当に何でもやるな!『アローショット』!」
いた、痛たたたたた!?
くっそ、痛いじゃねえかこの野郎!食らえ、俺の八つ当たり投げつけ!!
ドスッ!
「いったぁ!!あ、なんか目の前急に暗くなった!?なんで!?」
お、ここで暗闇状態を引いたか!進化目指しPvPの時には仕事しなかったのに!だがナイスだ!お陰で稲葉の動きが止まった!チャーンス!!
「どるしぇえええい!!」
「どわああ!?」
よっしゃ捕まえた!こっから先は…!
「八雲!」
「任されたとも!『八岐王技:参ノ蛇』!」
「ちょちょちょちょちょちょ!!?」
八雲の髪の下から、5つの蛇の頭が出現し、マフラー蛇と共に、力を込めている。それと同時に、八雲も両腕に力を込めて…
「王蛇演舞!ジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャー!!」
「ぎゃああああああああああああ!!!?」
……7つの蛇と、両腕による怒涛のラッシュ攻撃が、稲葉を襲う!クリティカルヒット!稲葉は吹っ飛ばされた!
『勝負あり。勝者は雨天決行に決まりました』
………う、うん!勝てたからヨシ!!
「ヨシじゃねーわ!!?今のどう見たってジ○ジョのそれじゃねーか!?」
「わー!?馬鹿!今著作権とか色々激しいんだから言うんじゃねーよ!!?」
『主…!あたいが至らんばっかいに、主を怪我させてしめもした!あたいはげんね!生きていられもはん!』
「だぁー!おトヨさんは負けるとすぐに切腹しようとするのやめてー!!?」
「フッフーン♪どうだい、私の王技は!これでどんな相手もけちょんけちょんに出来るのだよ!」
「……八雲、頑張ってくれたのは認めるけどさ…けちょんけちょんって死語だぞ」
「えっ」
「……なんつーか…ぐだぐだだな」
「最後のアレに至っては、完全にス○ー・プ○チ○だったしな」
「方言女子っていいよね!」
「あの蛇娘、いつも死語言ってるな」
「取り合えず、掲示板に載せようぜ」