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進化

「よーっす」

「よぉ!」


世海を召喚した翌日。

稲葉と合流した俺は、今日も今日とて、PvPに勤しむ事にしたのだった。


「お前、今どんくらいまで進んだんだ?」

「ふっふっふ…!お前が新キャラの面倒を見ている間に、こっちはもう、あと6回勝てばオッケーな所にまで来てるぞ!」

「おぉ、すげぇ!?」

「どーだ!」


どーやら、予想以上に世海にかまってたっぽいな…。

その結果、俺はあと19回も勝たなきゃならんっつーのに…!ええい、こうなったら全力でやるしかない!幸い、こっちには期待の新人がいるんだ!レベリングも兼ねて、全力でぶつかってやる!


「と、いう事で!そこのお前さん!勝負してくださいお願いします!」

「うおぉ?!きゅ、急だなぁ!?別にいいけどさ!」

「ありがとござます!」


よっしゃ、やってやるぞコンチクショー!



~~~~~~~~~~~~~~~



「はぁー…!はぁー…!」

「ぜぇ…!ぜぇ…!」


稲葉と合流したのが、朝の9時。そっから時間が経って…現在15時。

まるっと6時間、PvPに費やしました。


勝ったり負けたりを繰り返し、残りは一回勝利するだけとなった。


そんな現在、俺はモンスターテイマーと呼ばれる、モンスターを使役して戦う、俺達サモナーと似て非なる職業の相手と戦っている。


相手のモンスターは、ホブゴブリン・タンカーと、ボーパルホーンラビット、グレイベア。そしてフレイムリザードだ。

ホブゴブリンはゴブリンの進化系で、ゴブリンより一回りも二回りも大きいし、力が強い。ボーパルホーンラビットはホーンラビットの特殊進化系のモンスターで、執拗に首を狙ってくる。グレイベアは言わずもがなだが、フレイムリザードは火山帯に生息するモンスターだ。


従えているモンスターが俺より多いという事は、俺よりレベルが高いという事。

つまり、俺は今、かなり苦戦している。


八雲の攻撃をホブゴブリンが上手い具合にいなしながら、フレイムリザードが炎で攻撃。俺達が攻撃しようとしたり、攻撃を食らって隙が出てきたその瞬間を狙って、ボーパルホーンラビットがいきなり突撃。そしてグレイベアが、こっち側の防御を無理やり剥がそうとしてくる。

そんな連携技を食らって、こっちはかなり苦戦気味。


それに、相手側の天使…雪のように白いライオンなのだが、あれも中々だ。攻撃力が高いのは勿論、タイミングよく支援詩術をかけているので、思ったように削れなかった。


「連携が上手だねぇ…!おったまげたとも!」

「お褒めに預かりどーも…!こっちも、レオルの進化をさせたいから、必死なんだよね…!」

『ガルルルルル…!』

『I wouldn't have to feel so much pain if you just lost quietly.』

【大人しく負けてくれたら、あまり痛い思いをせずに済むんですがねぇ】

「誰がするか!」


それはごもっとも。


だが、俺も負ける訳にはいかんのでね…!ここは一気に攻めるとしよう!


「世海!海妖術だ!」

「まかせてー…!『かいようじゅつ:うずしお』ー…!!」


世海が妖術を発動し、渦潮を四つ作り出す。

それがモンスターと天使に向かって投げつけられるのと同時に、俺は世海を片手で拾い上げながら、テイマーの方へと走りだす。それと同時に、頭の上にすこちゃん様が乗っかってくる。


当然、そうはさせまいとモンスター達は動き出すのだが、それを八雲と鬼銃が阻止してくる。


「ゴゴ…!ドケ、蛇!」

『ゴオオオ!』

「どく訳が無かろう!我等が王が、君たちの主人をギッタンギッタンにされる様を、この場で見続けてるがいいさ!」

『Shall we dance!』

【一緒に踊ろう!】


よし、いいぞ二人共!

そうだ、最初からこうしてりゃ良かったんだ!妖怪達を盾に、俺が前進して、攻撃する!後ろでただ指示厨なんて勿体ないじゃないか!


「くそ!なら、これでも食らえ!」

「っ!」


く、やはり持ってたか攻撃魔法!そらそうだ、万が一を考えて、護身用として持ってない奴の方がおかしいからな!

でも、それは想定内だ!


「そぉー、りゃあ!!」

「わー」

「なぁっ!?」


奴が攻撃魔法を放つと分かったその瞬間、俺は持っていた世海を、テイマーに向けてぶん投げる!

さぁ、どう出る!


「えぇい、ままよ!『サンダー・ランス』!」

ドッゴォーン!

「あばばばばばば」


でもすまん、世海…!お前を囮にするような使い方をして…!

だが、お陰でチャージ出来た筈だ!!


「やっちまえ世海!ぜんゼン全力大全開!!『大反撃・イカヅチ』だ!」

「うおりゃああああ」

「え何それ聞いてなバババババババババBABABABABABA!!!!!?!?!?」


うーん、良いダメージ!流石は我が軍の反撃系タンク!PvPに散々付き合わせたお陰で、レベルはもう1から6まで行ってるんだぞ!弱い訳がない!


テイマーはHPが少ないから、そのまま行けば…!



『勝負あり。勝者は雨天決行に決まりました』



「よっしゃあああああああああああ!!」

「ああああああああ負けたあああああああ!!」


やったやったー!流石は世海、良い仕事してくれた!


「偉いぞ世海、立派立派!」

「えへへ~。おとーさん、うれしい?」

「めちゃ嬉しい!」


嬉しすぎて、世海を抱っこしてその場でくるくる回転するくらいには舞い上がった。


「っとと…。対戦、ありがとうございました!」

「いてて…。あぁ、対戦ありがとう。GGだったよ」

「次はもっと正攻法から勝ちに行きますんで…!」

「次あった時は、もっと戦力揃えてボコすからね…!楽しみに首洗っとけよぉ~…!」

「受けて立つ!」


対戦してくださった相手の方には、ちゃんと挨拶と煽りをする。相手もしっかりと宣戦布告して去っていった。次も返り討ちにしてやる…!!


さて、これで目標の30回勝利だ。という事は…!!


『oh? ohhhhhhhh? ?』

【お?おおおおおお??】


当然始まる!鬼銃の”進化”が!


鬼銃の周りから、闇の粒子がポツポツと出始めて、やがて彼の周りを覆い始めた。

黒い竜巻とも言い換える事が出来る程に、その粒子は激しく渦巻いていき…そこから闇が去ると…?


『ほぉ~?まさかEvolutionすると、こんなchangeが待っているとはね。うん、初めてのexperienceだ!』


…以前まで着ていたナンチャッテガンマン+忍者の姿ではなく。満智羅と籠手が一体化したような、胸元に彼岸花のレリーフをあしらった、黒の小具足を身にまとい。背中に紅のロングコートを羽織り、腰には刀と脇差、そして火縄銃を装備している、より鋭くなった角を二本生やした、黒髪赤目のイケメンがいた。


「…そんな変化するぅ…!?」

「おぉ!生声でも、何を言ってるのか半分理解できるようになっているよ!」

「にゃおー!」

「おにいさん、かっこいいねぇ…!」


メンバーからも、軒並み好評!すげぇな鬼銃!……っと?


『悪魔、鬼銃の名前を変更しますか?』


…あー、何?もしかして進化する旅に、こういう表示が出る系?

……うーん、どうしよ。でもまぁ……確かに、鬼銃って名前は安直…っつーか、ふざけた名前だとは思ってたし。いっちょ、ここはカッコイイ名前に改名してやろう!


となれば…うーん…………お、そーだ!


「決めた!今日からお前は、鬼銃改め……!名を”アシュラ”とする!」

『Yes!これからは我がmasterの為、search(見敵)destroy(必殺)!のspirit!で、これからも仕えさせていただくよ♪』


よーっし!良い名前が付けれた!そこ、手抜きとか言わない!

さて、稲葉の方は…?


『うん、良か。こいでさらに強うなれたちゆもん。あっじ、あたいん為にあいがとごわす』

「これからもよろしくな!”おトヨさん”!」


…どうやら、無事にあっちも終わったようだ。どれどれ…?


「…うわ、二刀流になってる…つか待って?なんで新しい方の武器、チェーンソーなの!?」

「お、雨天!お前も無事に終わ……かっけぇ!?」


おトヨさん、外見に変化は…あ、ちょっと金髪が伸びた程度かな?

それだけなんだけど…武器は追加されて、剣とチェーンソーが合体したような奴を持ってた。天使がそんな武器持ってるとか、脳がバグるんですが!?


…本当、人型天使って色んな意味で常識を覆されている気がする…!

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