期待の大型新人
「え、何あの子…黒…」
「でもなんか微笑ましい…微笑ましくない?」
「それな?肩車なんかされちゃって…ちょっと俺、あの子に貢いでくる」
「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!?」
…………えー……皆して、俺の方を…正確には、俺の頭の上を注視している。理由?んなもん…。
「……♪」
…新しく召喚した子を肩車してるからに決まってるでしょうが!!
「…辛くないか?それ。特に首」
「愛さえあれば、全てオッケー!!」
「流石は我等が王!ご立派!」
「にゃーん!」
『Hey, what a great father!』
【よっ、立派な父親!】
『馬鹿しかおらんとな。主を除いて』
頭殺天隼人に言われたくないよ、その台詞に関して言えば。
…ゴホン。改めて。
今回召喚してすぐ、俺の事をおとーさん呼びしてきて、すぐに肩車を強請ってきた、この大型新人…結果的に言えば、妖怪である事が分かった。
んで、その正体っつーのが……
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個体名:世海
Lv:1
職業:海妖術士
種族:海坊主
HP:20
MP:20
力:20
敏捷:1
器用:1
耐久:20
スキル
【海妖術・極】【防壁】【ウソ泣き】【反撃】【形状変化】【物理攻撃耐性】【魔法攻撃耐性】
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…はい、御覧の通り。この子、海坊主なのです。
……そう、めっちゃデケェあの妖怪。海に生息しているとされる、超巨大な…それこそ、海の化身だとか鯨の妖怪だとか言われている、あの海坊主。
つまり…文字通り、大型新人だったという訳だ。大型新人(物理)って訳だけど。
でもまさかさぁ、こんなちっこい姿で出現するとは思わなかったな。
そんなこの子の名前は、世海に決まりました。世界の海という感じでね、世海。俺にしては洒落た名前だとは思わないかい?
そんで世海君…そう、この子ショタなの。世海君…ステータスバグり散らかしてるんだよ。
敏捷と器用が1っつーとんでもねぇクソ雑魚なのに対して、他のステータスが最高品質なんだよね。
それで、ステータスとかスキルを見る感じ…この子、どっちかってーとタンク側だわ。攻撃系魔法系の軽減スキルがあるのは素直に嬉しい。攻撃も出来るタンクって考えたら強いよね。
…ただ、この【ウソ泣き】ってスキルが気になる所だ。どういう効果なの?これ。
「んー……悪い、お米。俺ちょっと世海の力を見たいから、一旦離脱する。またあとでな」
「おー、分かった。じゃあ俺はPvPしまくってるから!お前より先におトヨさんを進化させてやる!」
「絶対すぐに追いついてやるからな!」
て事で、稲葉とは一時離脱。世海の性能を知るべく、俺はトラベル草原に到着。あっちこっちでPvPが行われているが、それでもモンスターは湧くもので。
先輩とか先生とかが、いい教材になると思っている。
「ほんじゃ世海、一旦降りてくれー」
「……ん」
「よしよし、いい子だ」
…本当に小っちゃいな。小学一年生くらいの身長じゃないか?でもステータスすごいんだよな…。
さて、そんじゃ世海の腕試しに丁度よさそうなのはー……お?
「ゴブ、ゴブゴブ」
「ゴゴゴブ、ゴブ」
ゴブリンが5体おった。ゴブリン先生、今日もよろしくお願いします。
「頑張れ少年!応援してるぞ!」
「にゃーん!」
『I look forward to your success, brother.』
【貴方の活躍に期待していますよ、兄弟】
他の皆には、マジでやべぇってなった時以外は、俺と一緒に見守る形でいる。なんだかんだ力もついて、すこちゃん様も鬼銃もレベルは18、八雲はまだ2だけど、3レベル一歩手前だ。ステータスに関していえば、このトラベル草原で勝てない存在はいない!と言える。
さぁ、世海!ド派手にやっちまいな!
「ゴブ?ゴブブー!」
「ゴブリャアー!!」
「……がん、ばる」
ゴブリンが世海に気づき、短剣を持って近寄ってくる。世海は拳を握って、迎え撃つようだ。頑張れ…!
「「「「「ゴブー!!」」」」」
「ん……!」
攻撃が入る、その瞬間。世海の両腕が、突然巨大化した!そんでその巨大な腕で、ゴブリン達の攻撃を受け止めた!
「ゴブ!?」
「んん……!いたいこと、するひと…きらい!」
そんで…おぉ、その腕でゴブリンを全員捕まえた!そんで…上にぶん投げたー!!
「『かいようようじゅつ:…うずしお』ー……!」
そんで、その手の中に水を作り上げて…?それを、ゴブリン目掛けて射出!水は渦を巻きながら、ゴブリン達を飲み込んでいき、着実にダメージを与えていく!まさしく渦潮!
「いたいのぜんぶ…かえすよぉー…!」
そんな渦潮も、時間経過で小さくなっていき、やがて消えた。するとどうなるかってーっと…中で攻撃を受けてたゴブリンが落ちてくる。
そんなゴブリン達の着地地点に、世海が待ち受けていて…その右腕は、若干光り輝いてた。
「くらえー…!『だいはんげき』ー…!」
「「「「「ゴブリャアアアーー!!?」」」」」
地面にぶつかるギリギリのタイミングで、世海が強烈なビンタをお見舞いして…ゴブリン達、どこぞの悪役の如く、空の彼方へと吹っ飛んでいった。
…やがて、世海の目の前に、ゴブリン達のドロップアイテムが出現した。つまり、世海の勝利という事だ。
「…やだ、うちの子強すぎ…!?」
「すごい攻撃だったねぇ。将来が楽しみだよ♪」
「なーご!」
『Hmmm...I can't lose this.』
【むむむ…これは負けられませんね】
あまりの活躍っぷりに驚いてたら、世海がドロップアイテムを両手で抱え込みながら、俺達の方にとてとて歩いてきた。待ってこの子可愛くないか?
「あるじー…これ、どーぞ!」
あ待って笑顔可愛すぎて死ぬ。健気すぎて可愛い。死ぬ。死にそう。
……と、取り合えず!これで新戦力、世海の実力は大まかに分かった。
…これは色々と、楽しくなっていきそうな予感がする!
「さて、取り合えず…ご褒美の魔石をどうぞ」
「…!」
あー美味しそうに頬張る世海が可愛すぎる…!甘やかしてしまう…!
爺ちゃんが孫に向ける感情、今ならすごく分かる気がする…!!