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お待ちかねの時間

『勝負あり。勝者は雨天決行に決まりました』

『勝負あり。勝者はおい米食わねぇか?に決まりました』


「「イェーーーーーーーーーーイ!」」


イベント後半戦となって、トラベラーでは今、PvPが大流行しています。

無論、俺達もその流行りに乗っかって、道行く人に声をかけてPvPを仕掛け、勝ったり負けたりしているぞ。


理由?そんなもん、自分の相棒とも言える悪魔&天使を”進化”させる為に決まってるじゃないか!


「『PvPでの勝利回数が30になる事に、自身が召喚した天使または悪魔を進化させる事が出来る』…かなり回数こなさないとだよなぁ、これ」

「だから運営も、全国的には夏休みに突入するというこの期間に、こんなイベントを用意したんだろうさ」

「我等からしても、レベルアップを図るには丁度いいからねぇ♪」

「にゃ~う♪」


という事なのだ。


後半戦へアップデートした際、天使と悪魔陣営それぞれに、”進化”という新たなステージが用意された。

進化をすると、外見に限らず、ステータスやら魔術にも詩術にも、影響を与えるのだ。あ、詩術というのは天使バージョンの魔法だ。…流石に分かるか?


で、だ。その進化する条件というのが、さっきも言った”PvPでの勝利回数が30回”なのだ。多くも無く、少なくもない。まぁ丁度いいと言えばいい…のかな?

”特定のレベルで進化”しないっていうのが、ちょっと…ポ○モンと差別化を図ってたりするのかな?


で、現在は勝ったり負けたりを繰り返して…確か、20戦中11勝9敗だったな。稲葉は7勝13敗。


俺の場合、八雲っちゅー切り札がいるから勝ててたりはしてる。でもまぁ、それでも負ける時は負けるのだ。主に俺がフェイントに引っかかったり、攻撃を相殺しきれなかったり、相手の捨て身の特攻に負けたり…そんなんで。

対する稲葉は、元々スピードアタッカーとも言える性能をしてるせいなのもあるし、相方がその…な?バーサーカーなせいで、思ったように連携が取れなかったり…というのも何度かあった。


そんな感じで、最初は負けたりまぐれ勝ちをしてきたんだが…PvPにも大分慣れたからか、今のとこ連戦連勝中!


「ふぅー…疲れたぁー!」

「久々に体をたっぷり動かした気分だねぇ♪」

「ふぅー…ふぅー…」

『Oh my, Suko-chan looks tired. Lord, I would like to suggest that you take a break.』

【おやおや、すこちゃん様はお疲れの様子。主、ここは一つ休憩を提案しますよ】

「そうすっかぁー…」


流石に俺も疲れたので、一時休憩。

でもって…色々レベルアップした筈だ。となれば、”アレ”も出来る筈…!という事で確認していこう、ステータスオープン!



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PN:雨天決行

Lv:22

メイン職業:召喚士

サブ職業:鍛冶師

種族:唐傘お化け

HP:56

MP:66

力:21

敏捷:19

器用:62

耐久:37


スキル

【召喚術】【翻訳】【鍛冶術:Lv.10】【風妖術:Lv.15】【水妖術:Lv.20】【刀術:Lv.7】【木工】



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「…ふふ、ふふふふふふ……!!」

「いやぁ~、疲れた疲れた…!何度も戦ったお陰で、おトヨさんの癖がなんとなく理解出来てきた……雨天?」

「休憩は終わりだ!次の作業に移る!全軍、行動開始ー!!」

「にゃう!?」

「え、お、おい!?」

あっじんご友人、どうかしたんか?』


やはりレベルは上がっていた。つまり!


「召喚の時間だオラァ!!!」

「進化は!?」

「うるせぇ!それより新しい仲間を呼ぶのが先だボケナスぅ!!」

「口悪っ!?」

『あたいんあっじを侮辱したか今…?』

「おトヨさんステイ!!」


と、いう事で!召喚準備が整いました!!今回召喚したいなーと思っている妖怪は!!


「と、その前に確認。八雲!」

「呼んだかな?我等が王よ」

「すこちゃん様!」

「にゃう!」

「鬼銃!」

『I'm here, Lord.』

【ここにいるよ、主】


うむ、いるな。で……。


「八雲は物理と魔法…いやさ妖術でアタッカー。すこちゃん様はヒーラー、で鬼銃は遠距離攻撃での支援系…」

「にゃう!にゃーご!」

「『僕は敵に弱体化を与える事も出来るよ!』って言っているねぇ」

「そうでした、ごめんなさい」

「女の子相手に、でりかしぃが無いねぇ」


すこちゃん様って女の子だったのか。僕っ娘…。

でも基本的にはヒーラーだから……となったらぁー…。


「盾役、デバフ要因……スピードアタッカー的な…あとは純粋な妖術使いが欲しいな」

「欲張るなぁお前」

「欲張ってもいいじゃない!妖怪狂いだぞこちとら!!」

「そこはだって人間だものって言えよ!?」


さて、稲葉は無視して「おい!」ちょっと、心の声読まないでもらえる?


気を取り直して…盾役ってなると、やっぱり真っ先に思い浮かぶのはぬりかべだよなぁ。あとは…鬼とか大入道とか、デカい系のだな。牛鬼もそんな感じだな。


そんでデバフっつったらー…化け猫とか管狐とかの、動物系?或いは人魂とかの怨霊系。日本三大怨霊…【AO】に実装されてるんか?無さそうだな。


んでスピードアタッカー……つったら、やっぱ鎌鼬よな。それと以津真天いつまでっていう妖怪は鳥だったからなー…これもアリ。


でもそれ以外にもなー…雪女なんて、それこそ氷でのデバフとか使えそうだし…あ、ぬっぺふほふとかはヒーラーとして使えそう!…いや、腐臭を放つって逸話も聞いた事あるから、逆にデバフか?

…枕返しとかって、どうなるんだろ?マスコット枠?それともデバフ?…うーん、分からん。


……両面宿儺とか、実装されていないでほしい。あんなヤベェ存在、制御できる自信がミリも無い。そういう意味では、酒吞童子とかもそうだし…清姫とか、がしゃどくろが良い例とも言える。


…………ええい、考えてても埒が明かない!!こうなれば手段は一つ!


「そぉい!!」


そうして、既に百鬼夜行と書かれたお札に、文字を一つ追加した。


そう、”謎”と。

何が来るか全くの謎!これで役職が被ったら笑うしかない!でも、たまにはこういうギャンブルもあり!そう思わないか諸君!!


「そして!使うのはこれ!!」


取り出したのは、黒く光る魔石。

これ、何だと思う?フフ……ブラックグリズリーの魔石よぉ!


これを、教官の魔石でくっつけて…禍々しい黒色の召喚石の完成!…怖いわ!!


「お、おい。それなんか色ヤバイぞ?やめよーぜ?」

「男ならぁ!やると決めたならば、引き返してはいけない時がある!それが今!!行くぞ!『我が声に応え、顕現せよ!召喚!!』」


さぁ、何が出るかな!何が出るかな!


お札は、黒い召喚石の中に吸い込まれていき……ん?なんか、いつもと反応が違うな。まるで、召喚石から”何かが孵るかのような”罅が…。


ピキッピシピシ…!バカァン!!


ザバァン!!


「うおぉ!?」


なんだぁ!?み、水ガボボボ!?


「だ、大丈夫かい我等が王!?」


ぶはっ!?や、八雲が回収してくれた…!助かった…!


「だ、大丈夫…!」

「ちょ、巻き添えブグブグブグ」

あっじ!?』


稲葉は…うん、おトヨさんが救出したな!そんですっごい睨みつけられてる!ごめんなさい!!打ち首だけは!切腹だけは!!


『Lord, that!』

【主、あれ!】

「えっ?」


鬼銃が指さす場所、そこは召喚を行った場所だ。そこにいたのは…。


「………?」

「「「『『………………???』』」」」


……肌が真っ黒、でも髪と着ている服は真っ白。そして目が真っ赤な…可愛らしい子がいた。

…え、どなた?


「や、八雲…ちょいと降ろして?か、確認をば…」

「え?あ、あぁ…だ、大丈夫かい?わ、我等としては突然の事でわけわかめだとも…!」

「…わけわかめは死語だぞ」

「えっ…と、取り合えず降ろすとも」


おっとっと…さて、謎の子供に近寄ってみるが…何だろう、この子?真っ黒いから烏天狗かと思ったが…羽がない。そんで山伏姿でもないし…何?


「……」

「しかも喋らないし…うーん?」

「………お」

「…?お?」

「…おとー、さん」


「「……は?」」

「…チンプンカンプンになってきたねぇ」

「にゃーぅ…」

『Unintelligible』

【理解不能】

『あたいは馬鹿じゃっで、こげんのは分からんのじゃけど…どげんこっと?結局』

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