料理の時間だァ!!
「これより!おい米食わねぇか?による、お料理の時間を開始する!」
「お、おぉ~…」
「ドンドンパフパフ~♪」
「にゃお~♪」
『What will come out?』
【何が出るんでしょうねえ?】
えー…現在、トラベラーのとある宿屋に来ています。キッチン…というか、料理人系の職業を持つ人たち御用達とも言える施設らしい。詳しい事は知らん。
「で、ここで料理するから味見とかしろって?」
「その通り!元々俺はこのゲームの世界でも料理がしたいから、サブ職業を料理人にしたんだ!お前だって俺が定食屋の息子だってのは知ってるだろ!?」
「知ってるも何も、この前食いに行っただろうが」
料理したい欲が出てきて、稲葉の記憶に若干のバグが発生している様子。
…まぁ、今までバトルだトラブルだなんだってあったからな。料理する隙なんて、確かになかったな。
コイツ、俺が妖怪に対して異常なとこがあるのと同じで、料理に関して異常になる。つまりはただの料理馬鹿。
「で?何を作るんだ?」
「それなんだが…まぁ、うさぎ肉とか狼肉とか、色々あるし色々チャレンジしてみるさ。だからお前、手伝えよ?」
「はいはい」
という事で始まりました、稲葉のクッキングタイム。
まずは稲葉、アイテムボックスから肉を取り出した。
その肉は、まな板よりちょい大きめな、ちょいと脂が多く見えるような肉だった。
「それは…先輩の肉か?」
「そ。表現規制オフだからなのか、血抜きされた状態で皮が既に剥がれた状態のまんまなんだよ。表現規制オンだと、マンガ肉みたいな……既に下処理済みみたいな感じのあれになる」
そう説明しながら、稲葉はうさぎ肉を妙に手慣れた感じで捌き始める。
「ネットって本当に便利だよな。こういう作業の動画がいつでも見れるんだもん」
成程、納得。
で、捌いた肉を……ん?鍋の中に入れて……水入をれた。その鍋をコンロの上に乗せて……点火した。
「茹でるの?」
「調べた感じ、ホーンラビットの肉って筋があるし固いしで、そのまんまだと食えたもんじゃねえって見てな」
「ほーん?」
「で、まずは軽く茹でて肉を柔らかくして……うさぎの肉って鳥みたいな感じって聞いたからな……よし」
そう言って稲葉は、アイテムボックスから色々と取り出した。
えーっと…これはー…
「見た感じ…この白い粉は片栗粉かな?そんで生姜ににんにく…と、醤油か?」
「あと、料理酒と揚げる用の油」
…あー、稲葉が何作ろうとしてんのか、ハッキリと分かった!
「唐揚げか!」
「揚げは正義。油が正義。結局この世の中、茶色い料理が世界を支配してるんだよ!!」
「おい料理人!?思考放棄するかのような発言やめろ!?」
「さて、じゃあ衣の準備と味付けをするか」
「おい無視するな、おい」
稲葉は皿の中に醤油をドバドバ入れて、そこにうさぎ肉をイン。
そこへさらに、すりおろした生姜と、潰したにんにくもイン。良いねぇ、見た目だけでも美味しそう!
「あとは、これを暫く漬け込んでおく」
「その間に衣の準備か?」
「つってもまぁ…片栗粉を器の中に入れておくだけだがな」
それが終わったら、漬かるまで暇な訳で。自然と雑談タイムへと入っていく。
「8月になったら、イベントの後半戦が始まる訳だが…雨天はどうするんだ?やっぱ、積極的に参加する?」
「うーん…その時の情報次第だな。今はただ、のらりくらりみたいなノリで過ごしてるような感じ。そもそも俺は妖怪の為に動いているのであってだな」
「ストップ、早口」
「すまん」
オタク特有の、好きな事についての話になったら、急に早口になるアレ。布教しようって気持ちが前面に出過ぎて困らせちゃうんだよな…。まぁ、相手が稲葉だから別に気にしないんだけどな!なー!!
『Personally, I want to become even stronger and enjoy various things.』
【私としては、もっと強くなって色々な事をやってみたいんだがね】
「ほら、お前の悪魔もそう言ってるんだし、もっとイベント楽しめよ」
「そーっすかぁ」
鬼銃の頼みとあっては断れない。頑張るとしよう。
「あ、そういえば今のお前ってレベルどんくらい?」
「俺?えーっと、以前のリーダー格(笑)とのPvPの時と…ブラックグリズリー戦の時で色々上がって…18だな!」
「高っ!?すごいな!?俺まだ15とかそんななのに!」
「十分すごくね?」
頑張ってる方だろ、お前も。まぁ俺の方が頑張ってるみたいだがな!…
……ごめん嘘、半分運が良かったみたいなとこあった。そんな褒められるもんでもねぇわ。
「我等が王よ。実は我等、例の大熊退治の時にレベルが1上がったのだよ!」
「「マジ!?」」
前々から上がんねぇー上がんねぇ―って、皆で悩んでた時もあった、八雲のレベルが!?遂に1上がったって!?
「良かったなぁお前さん!」
「あぁ!これで我等が王をさらに護れるというものさ!」
「すげぇな八雲!俺ぁ嬉しいよ!!」
「にゃーん!」
『As expected, Yakumo-senpai!』
【流石だよ八雲先輩!】
皆で八雲を褒めちぎってたら、いつの間にか漬け時間を過ぎてた。
うさぎ肉を片栗粉にまぶして…油へ、ポーン!…これも大分死語だったりする?八雲に毒されたかな…。
「おー!パチパチとしているねぇ!」
「やっぱ、揚げてる時の音とか一番なんやなって…」
「あぁ…!俺、今ちゃんと料理人してる…!」
なんか感極まってる人いる。こわ。
大体三分くらい揚げたら、揚げたうさぎ肉を一旦回収。少し油を落としてから、再び油の中へ。二度揚げってやつだな。詳しい事は知らん。
そんで、二度揚げし終わった肉をまた回収して…器に盛りつけて、完成!
『ホーンラビットの唐揚げ 品質:8』
器に盛られたうさぎの唐揚げは、カラッと揚がっていて…見た目、すげぇ美味しそう…!
品質も8と、かなりの高評価だ…!
「ゴクリ…。よし、そんじゃあ…行くぞ…!」
「せーので行くぞ…!せーの!」
一人一個ずつ、口の中に頬張る。
ホーンラビット先輩の唐揚げ肉。その味はというと…!
「「「美味い!!」」」
「にゃう~ん!」
『It was my first time to eat such delicious meat dishes!』
【こんなに美味しい肉料理、初めて食べました!】
とても美味しかった!外はカリッと中ジューシー!でもって茹でであったり、にんにくとか入れてあったりするお陰か、臭みとかは全くない!
あーでも、強いていうなら……ちょっと歯ごたえというか…何というか、少し固さを感じる程度かな?クセのある固さで、砂肝とかそういう、内臓系の感じだ。それがまたいい!
「これは大成功だな!よーし、肉はまだまだある!沢山揚げてもっと食うぞ!」
「おい料理人。賛成ではあるが料理研究はどうした!?」
「んなもん後だ後!」
「おい!?」
結局、マジで稲葉は唐揚げを大量生産した。そんでほぼ一人で完食しやがった。お前そんな大食いだった…大食いだったわ。今思い出したけど、大食いだったわ。
でもって、ちゃんと忘れずに他の肉の料理研究もしたわコイツ。
狼肉…かなり固かった…。でも、ステーキとか肉丼は美味かったぜ!