前へ次へ
3/99

ゲームスタート、そして合流

『冒険者の国、トラベラー』


ワイワイ

ガヤガヤ

ざわ…ざわ…


「ふおおおおおおおおおおおお!!!」


見渡す限りの人!人!人!

しかも完璧に人という訳じゃなく、獣人やらエルフやら、中には俺と同じであろう、妖怪と思わしき人物もチラホラと!


こ、これが…!夢にまで見た【Alternative Online】の世界!テンション上っがるぅーーーーー!


『ピコン!メッセージを受信しました♪』

「んぉ?」


あぁ、そういや自身のアカウントのSNSと連携できるっつーから、やってみたんだよな。メッセージの送り主は…やっぱり稲葉だ。



============



イナバ:よぉ!無事にログインできたか?

    もし出来たんなら、噴水広場で落ち合おうぜ!

    俺は今回、王道の姿で行くぜ!楽しみにしてなよ!



=============



…王道の姿ってなんだ、王道の姿って。たったそれだけの情報で、俺が分かると思うなよ?


「いやしかし、その姿が気になるのもまた事実…。見てみよーっと」


王道とか言って変化球とかだったら、盛大に嗤ってやろう。



~~~~~~~~~~~~~~~



「ここが噴水広場か」


アイツが指定してきた噴水広場にやって来た。

ゲームを始めてすぐに来るこのトラベラーという国のシンボルとして有名なこの噴水広場、シンボルの名に恥じぬ程、巨大で豪華だ。一軒家くらいの大きさはある噴水から、絶えず水が溢れ出ていて、とても綺麗だ。



「さて、アイツはどこにいるんだぁ…?」


トラベラーの名所なだけあって、この噴水広場には沢山のプレイヤーが集まっている。集合場所として最適なんだってさ。目立つし。


「…ん?」

「まだかなー、まだかなー?」


……多分、アイツがそうだ。

褐色肌に、尖がった耳。灰色の髪を一つに纏めて結っているその姿、まさに正統派なダークエルフ。さらには、暗殺者を目指しているとも言える装備をしている男が、しきりにキョロキョロしている。


…まぁ、確かに王道と言えば王道な姿をしているな。うん、間違いはないな。

ひとまず話しかけてみよう。


「…よぉ」

「お?あ、お前もしかして妖」

「シャーラップ!!ゲーム世界においてリアルネームはNGだって、古事記にも書かれている程常識な奴だろーがぁ!!」

「お、その反応はまさしくお前だな!無事に見つかってよかったぜ!」


はぁ、はぁ…!な、なんで俺よりちょっとした狂人っぽいムーブをしているんだよお前…!


「で?お前のその姿は…ダークエルフで、メイン職業は暗殺者アサシンってとこか?」

「正解!一度やってみたかったんだよ!そういうお前は…何それ、傘?」

「俺は種族、唐傘お化けよ!そんでメインは召喚士だ!」

「…不思議な組み合わせだな?」


黙らっしゃい!!俺の『野望』の為にはこれが一番良いんだよ!エンジョイ勢という枠組みでいる以上、過度に強すぎるのを選んでもしょうがない!そういうのは全部後回しだ!!


「いやぁーにしてもだ!まさかお前も【Alternative Online】をゲットしたとはな。タイミング良すぎてびっくりだわ!」

「それは本当にそう」


本当にそれはそう。このゲームを手に入れたの、本当についさっきだなんて誰が想像できるのよ?って話だわ。本当に俺は運が良かったんだなぁ…!!


くぅ~!感動がまたこみ上げてきた…!!


「あ、そうだ。お前名前何にしたんだ?教えてくれよ!」

「先にそっちが名乗るのが常識だぜブラザー」

「だと思ったわ…。俺はな、『おい米食わねぇか?』だぜ!」

「色々と不味くないかそれ!?」


だってそれ、ウェンズデーに放送されてたあの番組のネタだろ!?良いのかそれ!?


「なんだ?『お米食べろ!』の方が良かった?」

「それもそれで、熱血理論だけど実は本人が熱血理論嫌いな人のネタになるし!!というか、よくその名前、審査通ったな!?」

「過度な下ネタとかバイオレンスな名前はBAN食らうけど、こういうのは普通に審査通るぜ?」

「……そ、そういうもんか…?」

「そういうもんだろ、ゲーム内での名前なんて」


…言われてみれば、そんな驚くような事でもない、か?

よくよく考えれば、俺のPN(プレイヤーネーム)もネタよりだから、んな強く言える立場じゃなかったわ。反省。


それに、今こうして無事にいるんだから、本当に問題はないんだろ。【AO】の運営は、自由度をネタに頑張ってる訳だし。その代わり、チーターには一切の情け容赦無しって聞くけど。


「で?お前はなんて名前にしたんだ?」

「…さっきお前を怒鳴った手前、名乗るのに抵抗が…!」

「え、そんなネタ特化な名前?」

「という訳でもないんだが…!えーと…『雨天決行』だ」

「…?……あ、あぁー。成程、唐傘お化けにちなんで、か?確かにちょっとブーメランが刺さってる感じがー…」

「それ以上何も言うでない、呪うぞ」


今俺もそれで悩んだんだからな?改めて指摘されるとハートに刺さって嫌だ。


「ほんじゃ、無事に合流出来た事だし!早速近くの草原に行って初戦闘!としゃれこもうぜ!!」

「別にいいけど…俺まだスキル取ってねぇし、そもそもまだステータス画面見てないぜ?」

「別にそれ、あっちに着いてからでも出来るって!それに、お前召喚士なんだろ?だったら、草原で初めてのモンスター召喚ってのもアリだろ!てことで決定!すぐ行くぞ!」

「ちょ、分かったから引っ張…ちょ、力強っ!?振りほどけないんだが!?」


力が弱い弱いとは聞いてたけど、マジで唐傘お化けって力弱いのな!?こういう形で知るの、ちょっと嫌なんだが!?


「草原にいざ、しゅっぱーつ!」

「…おぉー」


稲葉…もとい、おい米食わねぇか?に引きずられる形で、草原へ向かう事に…。

…引きずられてお尻が痛くなる感触すら分かるなんて、本当にこのゲームはスゴイナー……。

前へ次へ目次