忍者で鬼なガンマンの悪魔
状況をまとめよう。
まず、俺は今日からスタートした【天使と悪魔の天獄戦争】というイベントに参加するつもりで、悪魔を召喚しに、トラベル鉱山までやって来た。
鬼系の悪魔が出てくる事を、二人と一匹で必死になって祈りながら、特殊召喚を開始した。
で、その結果……。
『Hmm, isn't that strange? I'm sure he speaks the language of this world. Judging from the reaction, it seems like they are not getting through. What do you mean? I can't deal with it, hey! I can hear you!?』
……英語をベラベラ喋りまくってくる、忍者なのかガンマンなのかよく分からん……というかお前そもそも鬼なの!?悪魔なの!?みたいな奴がやってきた。
改めて、出てきた奴の姿を見る。
白髪で、赤肌。額からは二本の赤い角が生えている。そして金色の瞳と鋭い眼つきが、俺をジーっと見てくる。うん、鬼だ。顔はまさに鬼の姿そのものだ。
だが……鬼なのは首から上まで。……いや、上もある意味問題っちゃ問題はあるにはあるけど…今は無視。首から下が、違和感満載なのだ。
まず、着ている服。
あの……なんていうの?忍者のさ、あの黒い装束みたいなのあるじゃん。あれを着ているその上から、なんか……カウボーイだかガンマンだかが着ているような、革ジャケット…?を着ている。
ズボンは……うん、普通のズボン。だが、靴が下駄!!ミスマッチすぎる!!
そんでもって首!マフラー!なんか漫画で忍者とかがしてそうなマフラー!めっちゃ風になびいてそうな感じのあのマフラー!
そんでテンガロンハット!角で貫通しちゃってるし!もうちょっと後ろにずらせよ!!しかもよく見たら、アクセサリー感覚で十字手裏剣みたいなのあるし!
そして腰辺りから生えてる悪魔っぽい羽!なんて言えばいいんだろ…!俺から見て左側は、翼の骨だけがあって、羽みたいな感覚で手裏剣っぽい形の黒い光が出ているし!反対側はなんか、弾丸っぽい形だし!
なんだろう、こう…!色々と情報が渋滞した感じになってるんだよ!!
おかしいだろ!?
こういうツッコミは基本的には稲葉の役割だろ!!?なんで俺がツッコむんだよ!!
『Oh, Lord? You've been glaring at me for a while now, what's wrong? Did I do something that bothered you?』
「ごめんちょっと喋んないで…!」
『..I have no idea what you're talking about!』
そして英語!何故英語!?おかしいな、俺ってばいつの間にか言語設定を英語にしてたかな!?
「ちょっと、八雲…なんか喋ってみて?」
「え?あ、ぇーと……ち、ちぴちぴちゃぱちゃぱ?」
「……うん、ちゃんと死語だね」
「えっ」
だってそれ、昔流行った謎のミームだもん。死語というには十分な理由だよ。
そして八雲がちゃんと日本語で喋ってくれた。すごい安心感!
てことは……やっぱり、悪魔は基本的に英語を喋ってくるって…事になるな。
うーわ、ダル~…。いや、英語は嫌いじゃないけど…得意っていう程でもないんだよなぁ。しかもあの悪魔、結構早口で喋ってくるんだよなぁ…!聞き取りにくいんだよぉ~……!!
……待てよ?確かスキル欄に……。
「えーっと……あ、あった!」
やっぱりあった、【翻訳】!これが良い具合に作動することを願いながら、これを発動させる。
さぁ、どう出る!?
「あー、あー……俺の言ってる事分かる?」
『yeah? Oh! I finally understood what the Lord was saying! Ah, of course I understand!』
【ん?おぉー!やっと主の言っている事が理解できたよ!あぁ、勿論分かるとも!】
う、うぅ~ん……!せ、成功…!かなぁ~!!?
あの、なんていうのかな…!彼が発する言語は、未だに英語!
でも、その上にテキストウィンドウが現れて、翻訳された言葉が出てくるって感じなんだよね!
まぁ、これでアイツが何を言いたいのかを理解する事は出来る!これで翻訳が機能してなかったら、ずーっと英会話本を片手にする必要があったよ!
「…我等が王よぉ~い…。我等にはまだ、理解できない言語で聞こえるんだがぁ~…?」
「んまぁ~う…」
…どうやら、八雲とすこちゃん様には分からないみたいだ。えーと確かなー…
「【翻訳】スキルを召喚妖怪にも自動で分かるようにして…よし、これでどうだ!」
『Hello Hello! Cute female student♪』
【ハロー、ハロー!可愛らしい学生さん♪】
「お、おぉ~…なんとも不思議な感覚だねぇ」
「んみゃう…!」
さて、言葉の壁も(一応)突破出来たところで、改めて。
「俺の名は雨天決行。こっちは俺の召喚妖怪の八雲と、すこちゃん様だ!」
「よろしく頼むよ、後輩君」
「にゃう!」
『Utenkekko!Yakumo!Suko-chan!Yes, I remember! Thank you in advance!』
【雨天決行、八雲、すこちゃん様!うん、覚えたよ!これからよろしくお願いします!】
「さて、恒例の名前決めの時間だ」
こっからはお決まりの時間だ。
ただ…なーんて名前にしよう?うーん…。
忍者で鬼なガンマンの悪魔な訳だし……つか、そもそもなんでこうなった?名前つけ終わったら、ちょっと聞いてみるとして…うーん……?
…………考えるの適当でいいか、もう。ツッコミ疲れたからね。
「今日からお前の名は―――!」