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大喧嘩

「貴様の名前はもう決めてある!今日からお前の名は“レックス”だ!」

『ゴアァ…!』


現れた恐竜、もといレックスに名を授けたダイノキング。

強力な存在が出来たなぁ…。


というか、あの恐竜かっこいいなぁ。あれだろ?ティラノサウルスって奴。

色んなヒーローの主役級の相棒枠にもなってるし、恐竜軍団の親玉!って雰囲気バカ高い感じの!


この【Alternative Online】でも見られるたぁ、本当にこのゲームの凄さを確認させられるよな!


「おい、早く掲示板に書き込め!」

「トラベラーは変態召喚士の巣窟かなんかか!?」

「俺、こんな出来事を目の当たりにできるんなら、召喚士になっとけば良かった……!!」

「神なんていない、心からそう思った」


…周りがなんか阿鼻叫喚だけど、まぁほっとこう。プレイヤーは色んな意味でタフだからね。


「レックス、今日からお前は俺の盟友ともとして、この世界を駆けまわるぞ!」

『ガアァ!』

「うむ!何を言ってるのかさっぱりだな!あとで【翻訳】のスキルでも取得しないとな!」


…お前、召喚士なのに【翻訳】スキルないの??


『グルルル…!』

「…ん?」


レックスが、いきなりこっちを睨み付け…いや、違うな。視線の先は……八雲?


「おやおや、これはこれは先輩。久しぶりだねぇ。元気にしてたかい?」

『グウウウウ…!』

「『まさかお前みたいな若造が、先に主を得る事が出来たな?』だって?はは、そりゃあ我等が王、雨天決行様が、我等をご所望したようなものだからねぇ♪」


…え、何を言ってるのか分かるの?


「…あー、八雲ちゃん?あの恐竜の言ってる事が分かるのか?」

「当然だとも♪我々は共に、“シークレット召喚”仲間さ♪まぁ、先輩の方が序列が上ではあるけどね。いわば同郷の存在でねぇ!言葉は分かるのさ!他にも何体かが、他の召喚士達が“シークレット召喚”を成功させる事を祈ってるのだよ!まぁ、その条件とかに関しては、箝口令が出されているから、話す事は出来ないがね?」

「…なんか裏話というか、とんでもない秘密をサラっと喋ってない!?」


クマ先輩のツッコミに同意だなこれ。

それってつまり、“シークレット召喚”にはまだ種類があって、それぞれにまだ【何とかシリーズ】があるって事だろ?


……しばらくは掲示板とかがお祭りになるだろうなぁ~、これ。


『フッ、グルルァ…!』

「おい待て、何故今俺を見た?なんで鼻で笑った今」


俺はお前の言葉は分からないけど、馬鹿にされたなってのは一発で理解出来るんだぞゴラァ!!


「…『ふっ、しかしお前の主は弱そうだな。そんな雑魚の召喚獣になるとは、お前も哀れだな』……だとぉ…?」

「…あのー、八雲?」


やっぱり馬鹿にされてた。しかし、八雲の様子が…?


「ふ、ふふふふ…!我等が王を馬鹿にするとは…!調子に乗るノモ大概ニシロヨ下等生物如キガァ!!』

「ちょ、八雲!?」

「八雲ちゃん!?」

「おぉ、巨大化したな!」

「なんでアンタはこんな時でも冷静なのさ!?」


八雲がいきなり、本来の姿であるヤマタノオロチの姿に…!


「かっけええええええええ!!」

「言ってる場合かあ!!」

「痛った!?急に後頭部をダガーの持ち手で殴るな!めっちゃ痛かったぞ!!」

「オメーが馬鹿な事言ってるからだろうが!八雲ちゃん、今にも飛び出しそうな雰囲気だぞ!!」


『黙ッテ訊イテイレバ、蜥蜴如キガ調子ニ乗リヤガッテ…!今スグ貴様ヲ絞メ殺シテ、我等ノ糧ニシテヤロウカ!!』

『ゴアアアアアアアア!』

『『上等!』ダト!?ドコマデ我等ノ王ヲ侮辱スルカ!モウ我慢ノ限界ダ、ソノ首、我等ノ牙デ斬リ裂イテヤル!』

『ガアアアアアアッッッ!!』


……本格的な大怪獣バトル勃発しそうになってるううううううう!!?

しまった、八雲の姿に見惚れてて、その後の展開をすっかり忘れてた!!!


「ダ、ダイノキング!早くレックスを止めろ!」

「わ、分かった!」

「雨天!お前は八雲ちゃんを!俺達は周りの人達を避難させるから!」

「すまねぇ、助かる!」


稲葉が指示を出して、仮面セイバー1号とクマ先輩と共に、避難活動を始めてくれた。

その事に感謝しつつ、俺は八雲の前に立ちはだかる。


おおおおおおお、改めて近くで見ると本当にデッカ……!いやいやいやいや!!違う違う!!


「八雲!」

『ッ!ソコヲ避ケテクレ王ヨ!王ヲ侮辱シタ罪デ、アノ生意気ナ蜥蜴ヲ…!』

「俺の事を思って動いてくれたのは嬉しい!だが、これは『命令』だ!人と成れ、八雲!」

『ッ……。……………我等ガ王ノ、仰セの通りに…」


召喚獣は、基本として自分のマスターであるプレイヤー…つまり俺達の命令には“絶対”だ。だから、こうして大人しくあれと命令すれば、大人しくなると踏んだが…成功だったな。


そうして、ヤマタノオロチだった姿から徐々に小さくなっていって…いつもの、昭和セーラーとマフラーを身に纏う、普段見慣れている八雲に戻ってくれた。


…もう少し見ていたか……いやだからぁ!こういう時くらい分別を弁えろ俺の妖怪大好き欲ぅっっ!!


「…我等が王よ。我等は…」

「八雲。俺は確かに弱い」


実際、唐傘お化けっていう弱い妖怪になったのは、俺の意思だからね!でも、結果としてはそれが引き金の一部になってしまったようなものだ。ならば…


「ならば、強くなればいいだけの話だ!だから八雲、一緒に来い。俺の『野望』と、『強さへの頂』を昇る為に!」

「……。……ふふ、そうだね。我等の王がそう望むのであれば、我等は全力でさぽぉとするよ♪」


ふぅ、ようやく落ち着きを取り戻した。八雲も、何とか納得してくれたみたいだし…。

さて、ダイノキングの方…は………??


「人様に迷惑をかけるんじゃないよこの大馬鹿者めが…!」

「ッッッ……!ッッッッッ……………!!」


……えーっと…ダイノキングが、多分人の姿になったのであろう、それこそ昭和の不良…みたいになった、頭が炎になってる男に対して…綺麗な三角絞めをしていた…。


……うーわ、綺麗に絞められてる…。レックスも、必死になってギブの合図出してるし…。

あ、解放された。


「ふぅ…。改めてすまないな!我が盟友よ!」

「気にすんな。寧ろ俺としては、八雲が俺の事をどう思ってるのかを知れて良かったし!だから、そんな気に留めるな!」

「そうか!ではこれ以上は辞めとこう!」


うん、綺麗に終わったな!

……いやぁ~、でも…やっぱりあれだな。


八雲の、あの本来の姿であるヤマタノオロチの姿を見て…やっぱり俺は、妖怪が好きなんだなと再確認できた。

つまり…!


「「やっぱり、妖怪/恐竜が一番だな!!」」


……………


「「ア゛ァ゛!?」」


今、なんつったテメェ!!


「え、そこで喧嘩になんの!?」

「お互い、譲れないものがあるんだね!」

「関心してる場合か!?」


外野がうるせぇな…!

いや、それよりも…!


「妖怪はなぁ!ミステリアスな所とか人に害をなすも人に利益をもたらすも千差万別あっていいんだよ!それが理解できねぇのか!?アァン!?」

「そっちこそ、恐竜の良さを理解していないと見た!いいか!?恐竜は古代の種族!いわば我々(人類)の祖先!彼ら無くして俺等無し!だからこそ、敬うべきでもあるし憧れるべきでもあるのだぞ!」

「究極的に言っちまえば、恐竜なんてただの“トカゲ”じゃねえか!妖怪は実在したしていないにも関わらず、人との歴史に深く根付いているんだぞ!!それに最近の恐竜像はとてもダサい事で有名じゃねえか!それの何を敬うってんだ!?」

「あー!言ったな貴様!?そういう貴様の好きな妖怪だって、ハッキリ言ってしまえばただの人類が怒られない為の苦肉の策として生み出した、“便利な言い逃れ装置”とも言えるじゃないか!!」

「んだとテメェ!?」

「なんだと貴様ァ!!」


「……あー…我等が王よ?」

「…お前の主、かなり馬鹿だな」

「む。そういう先輩…お前の主も、よほどのチョベリバな性格じゃないか」

「あ゛?」

「やるかい?」


「………避難が終わったし、八雲ちゃん達の姿が消えたと思って戻ってきたら…なんでそっちが喧嘩してるの?」

「しかも八雲ちゃん、今度は人型で喧嘩しようとしてるし…」

「うーん、修羅場!!」

「兎に角……あ、二人共ちょっと耳塞いでて」

「「??」」

「すぅー…はぁー…すぅーーーーー……っっ!!」





「いい加減にしねぇかこの大馬鹿野郎共ォーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

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