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ダイノキング

「自己紹介が遅れたな!俺の名は『ダイノキング』!恐竜を心から愛する変人!将来の夢は、ジュラ○ックパ○クみたいな施設を造り上げる事だ!メイン職業は竜騎兵ドラゴンライダー、サブで召喚士だ!」

「いや、夢めっちゃデカイな!?」

「応援しとくぜ!あ、俺は―――」


ダイノキングとの自己紹介を終えた所で、俺達は噴水広場へと到着した。

やはり休日なだけあって、ログインしている人の数がとても多い。


「さぁさぁ、早速やって行こうじゃないか!」

「おー!ドンドンパフパフー!!」

「よく分からないが、我等が王が祝うのであれば、祝うのも我等の仕事。ドンドンガラガラ~♪」

「んなぁ~~ご♪」

「……俺、あいつの事が時々分からなくなる」


失敬な。お前から俺の事を理解しようとやって来た癖に、何を今更一般人を気取ってるんだ。

俺と長年付き合ってる時点で、お前も変人だ。


「つまりだ、クマ先輩。俺みたいにヒーローに憧れて、このゲームをプレイしているようなものなんだ。その究極系とも言えるな!」

「……分かるような分かりたくないような気持ちで、いっぱいいっぱいだよ私は」

「ハッハッハ!気持ちは分かるが慣れてくれ!俺達みたいなやつは、総じて変態なんだ!」

「自分で変態って言わないでよ!?」


うーん、仮面セイバー1号が真理を言ってくれた感じがする。

そう、変態とは本来、こういう存在なのだ!好きを極めに極めた変人!それが変態だ!ニュースで見かけるお縄にかかるタイプの変態は、陰の者とも言えるし、変態の意味をはき違えたクズとも言える!


そういう意味では、我々は健全で陽の者な変態とも言えるな!


「それで?ダイノキング、どういう召喚の仕方をするんだ?」

「うむ!俺流のやり方は、まずこれを用意する!」


ダイノキングがそう言って、アイテムボックスから何かを取り出した。

それはー……岩?いや、ただの岩じゃねーな。よく見れば黒い光沢のある“何か”が埋まって…?


「これは、鉱山で発掘した『化石が入っている岩』だ!」

「化石!?このゲーム、化石とかも発掘されるのか!?」


最近、稲葉のツッコミに磨きがかかってるようで俺は嬉しいよ…!

しかし、化石とは!このゲーム、本当に色々と驚かされる要素が多くて飽きる要素が見当たらないな!


「つまり、化石を媒介にして竜…というより、恐竜を生み出すといった感じだな!」

「その通りだ!勿論、召喚石も使うがな!この化石岩と召喚石を使って…!おっと、長話はここまで!早速やろうじゃないか!お前たちはそこで、俺の偉業を見ているといい!」


という事なので、俺達は噴水に腰かけて、ダイノキングの作業を見守る。

周りもなんだなんだと様子を見てくる。中には俺を見るなり


「あ、妖怪ヤローじゃん」

「シークレット召喚成功させた変態だ」


なんて声も…。


いやぁ~そこまで褒められると照れるなぁ~!


「にゃう!」

「ん?おっと!」


いきなりすこちゃん様が足の上に乗っかってきたので、少し落ち着きを取り戻すついでとして、その体を撫でる事に。

あぁ~すこちゃん様の毛皮がふわふわでずっと撫でてられるぅ~…!


「我等が王よ、我等もすこちゃん様を撫でたいんだが…良いかな?」

「にゃう!」

「良いみたいだよ」

「それは良かった!まさか我等が、毛皮の心地よさに触れる事が出来るとはねぇ~…♪」


八雲にすこちゃん様を預けた所で、改めてダイノキングの作業を見始める。


えーと、まず化石岩を置いて…あ、召喚石を生み出した。おぉ~、綺麗な赤色…てことは、炎系統の魔法を使うのかな?それとも身体能力強化系統かな?


ダイノキングは、生み出した召喚石をそのまま――


「フン!」

バギン!!


力を込めて…砕い……砕…………え?


えーと?ちょ、ちょっと待ってね?ん~~~~………


は???????


『割ったぁ!!!?』


その場にいたプレイヤー全員、同時に叫んだ。召喚石を粉々に砕くという、とんでも光景。反応するなっていう方が頭おかしいわ!


「よし!」


何がよしなのか、変人である俺ですら理解できなかった。


ダイノキングは、粉々になった召喚石を…そのまま、化石の周りに振りかけていった…。


「では、始めるとしよう!『我が声に応え、顕現せよ!召喚!!』」


え、そのまま召喚詠唱っすか。いや、まぁ……アイツの中ではそれが正しいと思ってるんだろうけど…。


シーン……。


「む?失敗か?」


…まぁ、普通は反応しないわな。召喚石を砕くなんていう暴挙、普通に考えたら召喚出来る訳がない。


()()()()


そう、忘れてはいけない。この【Alternative Online】は“自由度”が売りなのであり…。


俺もまた、イレギュラーを生み出した存在なのだから。


「この流れ…俺、味わった事あるなぁ…誰かさんがあの日やった事を鮮明に思い出してきたよ…」

「当たり前だろ。お前その場にいたんだから」

「ん?どうしたんだ、二人共―――」



『“シークレット召喚”を確認。以後、この召喚手順を以て、新たな召喚モンスターカテゴリーに、【ダイナソーシリーズ】を追加致します。おめでとうございます。発見者であるプレイヤー、【ダイノキング】にこれより、特別な召喚モンスターをプレゼント致します。これからも、【Alternative Online】をお楽しみください』



「あー…」

「やっぱかぁー…」

『はぁ!?』


運営アナウンスの声が、トラベラーに響き渡る。

“シークレット召喚”。未だ謎の多い召喚方法。それを発見したのは、俺と……


「…ん?なんだこれ、成功したのか?」


…目の前にいる、ダイノキングだけだ。


一瞬の静寂の後、その“光景”は現れた。



豪ッッッ!!!



粉々になった召喚石から、突如として炎が燃え上がり始めた!


「おおおおぉ!?」

「おいおいマジかよ!?また新しいタイプが召喚されたのかよ!?」

「今年の召喚士、色々と頭おかしいって!?」


周りのプレイヤーが騒ぐ中、燃え盛る炎が、化石があった場所へと吸い込まれるように動いていく。

全ての炎が吸い込まれた後、化石岩に罅が入った。


まるで、“卵から雛が孵る”かのように。


罅はドンドン大きくなっていき…そして……!



バキバキ…!バキィーー…ン!!


『グルルルゥアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!』



巨大な、一頭の竜を生み出す事に成功したのだった…!


「おおお…!おおおおおおおおおお!!くっははははははは!!我が偉業、ここに顕現せり!!」


その時のダイノキングを顔を見て…俺はこう思った。


「俺もあんな、めっちゃキモイ良い笑顔してたんだろうなぁ…」

「あぁ、そんで泣いてたな」

「客観的に見ると、ああも汚い顔してたんだなぁ…って」

「自分で気づけて偉い」

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