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プロローグ

諸君、私は妖怪が好きだ。


どれくらい好きかというと、自分がそんな存在になりたいと思うくらいだし、自分がこんな妖怪だったらなぁ~と、授業の合間に空想するくらい大好きだ。何だったら、死ぬ時は妖怪に食われて死にたい。そんくらい大好きだ。


正直、自分でもちょっとイカれてんなって思うくらいには、妖怪が大好きだ。でも仕方ない、大好きなんだもん。


え、キッカケ?運命はいつだって運命的で唐突的なのさ…!


「おい、妖真ようま。聞いてる?人の話」

「ん?勿論聞いてるさ稲葉いなば!妖怪がいかに素晴らしい存在についてかの話だろ?」

「すごい!何一つ合ってない!ぶん殴っていいかな!」

「待て、落ち着くんだマイフレンド!」


いかんいかん…俺とした事が、友人の話を聞き流してしまっていたとは…。

こんな妖怪ガチ恋勢の塊みたいな存在の俺に対して、キモイとかどうこう言いながら友達でいてくれている彼に失礼だ!


なんとか思いだせ、話の流れぇ~…!

……あ、思い出した。


「まぁ待て、全部を聞き流している訳じゃないぞ稲葉。アレだろ?今巷で大流行している、あのVRゲームの話だろ?」

「なんだ、ちゃんと聞いてたのか」

「大雑把にだけどな!だからもっかい説明プリーズフォーミー」

「腹立つなその顔…。まぁいいや、ちゃんと聞けよ?」


【Alternative Online】。通称【AO】。

数年前に発売された、世界売上第一位を誇るゲーム。


プレイヤーは多種多様な種族と職業ジョブを選び、そこから《もう一つの自分(オルタナティブ)》を見つけて、自分だけの物語を作っていくという、世界で初めて“仮想現実”…所謂、『VR』を使ったゲームだ。


このゲームは、バカ高い専用のVR機材と共に購入する事で、初めてプレイする事が出来るのだが、そこから編み出される景色というのが、本当に仮想空間なのかと疑うくらいのリアリティの高さ。

ゲーム内で味わえる、料理の味やダメージの感触、水や風の空気等が、まるで本物を味わっているかのような体感を、家で気軽に楽しむ事が出来るんだそうな。


そして何より、“自由度の高さ”が、この【AO】を世界的にヒットした要因である。

冒険を楽しむもよし、何かを作り上げるのもよし。誰かと一緒に、のんびりまったり牧場を経営するのもよし。何だったら、他プレイヤーを襲う事もよしという、ある意味自由すぎると言っても過言ではないのが、この【AO】の良いところだ(同時に悪いところでもある様子)。


正直に言って、俺もこのゲームをプレイしたい!そして、『野望』を叶えたい!

しかし、先も言った通り、このゲームは専用機材もセットで買う事が前提で、それがまぁー高い!高校生である俺にとっては、まさに高嶺の花すぎる代物!


「…で?そんな俺達高校生にとっては、喉から手が出るほど欲しくてやまないゲームの話を、何故今したんだ?」

「フッフッフ……!なんと!俺の姉貴がこのゲームを買ってくれたのだ!テスト高得点記念になぁ!!」

「はっはっは!成程、要するに自慢って訳だな!野郎ぶっ殺してやるぁあああああああ!!」

「悔しかったらお前も買えばいいじゃないかー!!わーっはっはっはっは!」


あ、クソ!逃げられた!!

…野郎、道理で今までよりめっちゃ勉強頑張ってた訳かぁ……!くっそぉぉぉ…!


「……俺もバイト探すしかねぇかぁ…。あ、やべ。お袋に帰るついでに買い物するよう言われてたんだった…」


あまりのショックで忘れる所だったわ…。今時、高校生にお使いを頼む親って中々いないぞ…。

……ああああああああくっそぉぉ!俺も欲しいよぉおおお!



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「…くじ引きかぁ」


家の近くの商店街で買い物をし終えたら(多分、今夜はカレーだな…。)、一回プレイ分のくじ引き券をプレゼントされた。


「…折角だし、チャレンジしてみるか。この悔しさを晴らす為にも……!!」


そう思い、くじ引き会場にまで足を運んだのだが…。


「…なんだこの行列ぅ!?」


とんでもない列が出来ていた。くじ引き会場が見えないほどにだ。今までこんな行列見たことがないぞ!?何が景品なんだ!?


「あ、くじ引き参加されますかー?」

「え?あ、はい…。あの、この列って…?」

「気になりますよねぇ~。実はですね…なんと!特賞として、【Alternative Online】をプレイできるソフトと専用機材が、まるまる一つプレゼントされるんですよー!町内会長が地域活性化の為、奮発してくれたんですって!」

「やります!!!」


なんという事だ!千載一遇の機会とは正にこのこと!しかも列整理のお姉さん曰く、まだ特賞が出ていないとのこと!なら、まだチャンスはあるはずだ!!


乗るしかない、このビックウェーブに!!


そんな勢いに身を任せて、いざ参加。

そうすると、あの長かった長蛇の列がみるみると短くなっていってる。特賞がデカい分、他の景品はそれなり~の物のようで、それを当てた人がすごすごと帰って行ってるのを、横目で確認できた。


「はーい、3等のゲームソフト数本でーす!おめでとうございま~す!」

「くっそぉぉ…!ティッシュじゃないだけまだマシだけどもぉー…!」


おぉ、結構良い景品もあるんだな…。っていうか、もう次の次が俺か…!捌くの早すぎだろ、運営…!


「残念!5等のカレーセット一か月分が3個、そして残念賞のティッシュ箱が二つね!」

「うわあああああああああ!!」

「あぁ~!お父さん惜しい!一等の北海道ツアー、三泊四日チケットだよ!ご家族と楽しんでおいで!」

「ああああ…!すまん、息子たちよ…!」

「次の人~!」


も、もう俺か…!

えぇい、ここで引いては男が廃る!くじ引きチケットを受け取れ、受付のおばちゃん!


「一回だけのチャレンジだね?それじゃあ、頑張って回してお兄さん!」

「ゴクリ…!」


緊張で震える右手を押さえつけながら、くじ引きレバーを握りしめ、ゆっくりと回す。


『ガラガラガラガラガラガラ』


神様仏様九尾の狐様~…!

頼むぅー…!出てきてくれぇー…!!そして、俺の『野望』を叶えさせてくれぇ!!!!


『カラン!カタン…』


出てきた!色は……き、金色!?


『カランカランカランカランカラーン!!!』


「大当たーりぃーーー!!特賞、【Alternative Online】プレイセットだよぉおおおお!!!」

「…………よぉっしゃあああああああああああああああ!!!!!」


神様ー!仏様ー!九尾の狐様ー!!ありがとおおおおおお!!!!

これからこの俺の…香月こうづき妖真ようまの『大いなる野望』が始まるのだあああああ!!Fooooooooooooooooooo!!!

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