99:職人神の神殿-2
さて、鍛冶作業を始める前に満腹度をきっちりと回復した上で、今回の強化対象は長らく強化先が分からなかったコヒツジジュウジである。
なお、事前にスキル構成は変化させて≪器用強化≫と≪大声≫は装備済みである。
「と言うわけで、早速始めますか。」
俺はいつも通りの設備とコヒツジジュウジ、それにストーンゴーレムの文字列片に防護殻、加えてアクティブコーラルの素材を取り出す。
では、必要なものを取り出したところで作成開始である。
①アクティブコーラルの素材をハンマーなどで砕いて粉にする。
②ストーンゴーレムの防護殻をコヒツジジュウジの中央に乗せ、①を繋ぎとして炉で加熱。
③ハンマーで叩いて防護殻とコヒツジジュウジを完全に繋ぎ合わせる。
④再び熱して今度はハンマーによって成形。
⑤狩人の水を入れたバケツで冷却。
⑥ストーンゴーレムの文字列片を十字の左右の先端に設置。
⑦再び①を繋ぎとして加熱、結合、成形、冷却。
「さて、ここからが本番だな。【獣人化:ウルグルプ】」
俺はここで一度手と目を休めて【獣人化:ウルグルプ】を使った上で喉の調子を確かめる。
⑧前回あまりの唐突な表示っぷりに思わず「何なのだ、これは!? どうすればいいのだ!?」とか言いたくなってきた讃美歌タイムである。
「~~~~~♪」
俺は表示された音程と歌詞に従って【獣人化:ウルグルプ】によって強化した≪大声≫を使いつつ歌っていく。
声量と歌詞は問題ない。ただ、やはりと言うべきか音程については微妙に外れることがある。
まあ、ある程度はしょうがない。そこら辺の細かい技術はシステムに悟られない様に声量で誤魔化す。多分気づかれるけど。
「~~~♪……ふぅ。」
と、ここで讃美歌が終わる。
うーん。俺的には前回よりはいいけど……と言ったところか。
「と、満腹度がヤバいし【獣人化:ウルグルプ】解除。」
俺は満腹度がかなり減っているのに気づいて急いで【獣人化:ウルグルプ】を解除する。
いやぁ、相変わらず酷い消耗スピードだわ。あっという間に腹が減る。
「まあいいや、作業再開っと。」
俺は適当に酒を呑んで満腹度を回復すると、作業を再開する。
⑨アレンジタイム。今回は十字の中央を少し削ってそこに金色に輝くオオゴンズワムの鱗を填め込む。勿論見栄えを重視して意味は無いがオオゴンズワムの鱗は2枚使用。表裏両面に填め込む。
「完成っと。」
そしてアレンジタイムも終わって完成品がこちらである。
△△△△△
イワジュウジモン レア度:3 重量:3 種別:メイス 作成者:ヤタ
攻撃力:150
属性攻撃力:光15
耐久度:100%
十字架を模して造られたメイス。ストーンゴーレムの体に刻まれている生命を表す文字列によって癒しの力と加護の力が込められている。
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出来上がったメイスの名前はイワジュウジモン。
外見としてはまるで大理石を十字の形に掘り出したかのようであり、アクセントとして使われているオオゴンズワムの鱗がいい味を出している。
ただ、オオゴンズワムの鱗は効果無しっぽい。いやまあ、俺が気づいていないだけでどこかに隠し効果みたいな形で効果が出ているのかもしれないが。
「使える祝福は……っと。」
俺は一時的に装備やスキル構成を弄ってイワジュウジモンでどのような祝福が使えるかを確認する。
イワジュウジモンで使える祝福は二つ。
一つはコヒツジジュウジの頃から使えた【ヒール】これはまあBPを消費してHPを回復する祝福だな。いつも通りだ。
もう一つはゴーレムの文字列片の効果なのかどうかは分からないが【エレメントライズ】が表示されている。これは以前アステロイドが使っていた属性耐性を高める効果のある祝福だ。
うん。見た感じだけどこの先は雪山で属性攻撃が多そうだし、多少攻撃力は落ちてもこっちを持っていくべきだろう。
「さて、まずはアーマさんたちへ報酬を渡してこないとな。」
そして俺はプライベートエリアの外に出ると一度王都に飛んでアーマさんたちに余ったストーンゴーレムの素材と鉱石類を渡す。
鉱石類もアーマさんたちに渡した理由としては、鉱石類をきちんとその性能を生かす形で利用するには≪地金職人≫のスキルを使って鉱石をインゴット化する必要があるからであり。俺にはこの先も含めて≪地金職人≫を取る気が無いからである。
理由?いや、だって金属を精錬するとか文明的過ぎて蛮族じゃないし。
で、渡してきたところで再び職人神の神殿である。
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「さて、どっちから行くかね。」
俺は目の前に広がる職人神の神殿から二つのエリアに向かって伸びる道を見る。
片方は壁に開いた大穴に繋がっており、恐らくだが外のエリアへと繋がる道だろう。この場に立っている時点で寒さを感じる。
もう片方は石切り場の近くに作られた木の梁で補強された坑道の様な道。何となくのイメージとしてこちらは坑道と言ったところか。坑道の中はここから見えている時点で暗く、今までのエリアと違って自前で明かりを持っていく必要がありそうだ。
「うーん。俺の武器的に鉱石はあまり必要ないんだよな。」
実際、俺の武器はモンスターの素材をそのまま使う形が多いからな。鉱石は最低限あれば問題ない。
なので、明かりに関しては≪嗅覚識別≫があるので問題は無いが、坑道へ行く旨味はあまりなさそうである。
「となれば行くべきは外か。」
そして俺は外へ続く道へと向かって歩きだした。
基本的に私の小ネタは某動画サイトの大百科クラスの小ネタぐらいです。