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97:VS岩巨人-2

 さて、各種準備を完了した翌日。

 岩巨人との再戦として俺は赤いボスゲートをくぐる。

 なお、スキル構成としては≪大声≫≪嗅覚識別≫≪嗅覚強化≫の三つを外して≪蹴り≫≪器用強化≫≪鉄の胃袋≫の三つを付けてある。


「ゴガアアアァァァ!」

 さて、再戦なのでイベントは無しでボスゲートをくぐった直後に岩巨人が動き出して俺へと向かってくる。


「ゴガッ!」

 岩巨人が大きく腕を振りかぶると、勢いをつけて右腕で俺を殴ろうとしてくる。

 俺はそれを≪四足機動≫を使って横に回避するとアイテムポーチから3種類のアイテムを取り出す。

 と、同時に岩巨人の体を俺は観察するが、ごく僅かだが確かに不自然に盛られているような箇所が見受けられる。


「さて、対策その一だ。」

 俺はまず右手で普通のブランデーを投擲して岩巨人の右腕に当てる。すると当然ながらブランデーを入れていた瓶は割れてその中身は岩巨人の体にかかる。


「ゴッ!?」

「よいよいっと!」

 さらに続けて黒い丸薬の様な物を左手で投げつけ、それが岩巨人の体に当たるタイミングを見計らって右手で燃え盛る松明を取り出して投げつける。

 黒い丸薬は岩巨人の体に当たってもただ単に表面が酒に濡れて跳ね返る。

 が、松明が酒に当たって燃え盛った瞬間にその火が黒い丸薬にも到達。


「……!?」

 次の瞬間に俺は両耳を抑えると同時に黒い丸薬が轟音と共に爆発を起こし、岩巨人の右腕は爆炎に包まれる。

 ただ、同時に至近距離で発生した爆風によって俺も吹き飛ばされる事となり、慌てて空中で姿勢を正して着地する。


「結構、威力あんなぁ……まあ、単純に着火したんじゃなくてお酒ブーストが入っているからな。」

 俺の目の前で徐々に爆炎が晴れて岩巨人の身体が露わになる。

 その体には爆発に伴う煤の様な物がこびり付き、右腕の一部にはヒビのような物が入っている。その場所は俺が怪しいと感じていた場所である。


「ふむ。狙ってみるか。」

「ゴガアアァァァ!!」

 爆炎が完全に晴れた所で岩巨人がこちらに向かって再び突撃してくる。


「【サンダースイング】【ウルフファング】!」

 岩巨人が左腕でアッパーの様な軌道で殴りつけてくるのを俺は紙一重で躱すと≪四足機動≫を使って右腕に接近。【サンダースイング】をアッパーの様な形で右腕のヒビが入った場所に当て、さらに続けて【ウルフファング】を当てる。

 すると右腕のヒビが大きく広がって右腕から岩の欠片のような物が剥がれ落ち、その下に隠れていた物……赤く光る奇妙な文字列が俺の目に映る。

 恐らくあれがアーマさんの言っていた削られると拙い文字と言う奴なのだろう。


「ゴガガガ!!」

「ヤバッ!?」

 と、俺が思わずぼうっと文字列を眺めていたら岩巨人が怒り狂った様子で両腕を我武者羅に振り回そうとしている光景が目に映って俺は慌てて距離を取る。


「ゴガアア!!」

 距離を取っても岩巨人は俺を叩き潰そうとその巨体に見合わない程のスピードでこちらに迫ってくる。


「折角見えた弱点だ。試してみるか。」

 俺は岩巨人の動きと文字列の位置を確かめるとメイスをしまって一本のピッケルをアイテムポーチから取り出して構える。


「ふっ!」

「ゴッ……!?」

 そしてタイミングを見計らって投擲。

 投擲されたピッケルは俺を殴ろうと構えた岩巨人の右腕に記された文字列に突き刺さる。


「ゴガアアアァァァ!!?」

「うおう!?」

 すると岩巨人の右腕全体にヒビが一瞬にして走り、次の瞬間にはピッケルごと爆散し、岩巨人はその爆発によってその場で倒れる。

 同時にその光景に俺は慌てて再び距離を取る。

 仮に至近距離で爆発していたら……うん。ヤバいな。もしかしたらダメージ判定は無いのかもしれないが確かめるのは怖すぎる。


「急ぐか。対策その二だ。」

 俺は倒れている岩巨人に追撃はせず、急いでその場に穴を掘ってアイテムポーチから頭頂部が赤く光っている棒を突き刺して起動。光の色が緑に変化したのを確認してからその場から離れ、飛び散っている岩巨人の右腕の破片に剥ぎ取り用ナイフを使用して消滅させる。

 剥ぎ取ったアイテムは何かの鉱石のようだが名前は分からない。まあ、≪嗅覚識別≫があっても分からないだろう。元々鉱石系を識別するのに向いたスキルではないからな。


「ゴ……ガ……ガ……」

 ゆっくりと片腕だけになった岩巨人が立ち上がる。その動きは明らかに今までよりも鈍い。

 どうやら文字列を消されるのは俺の想像以上に岩巨人にとっては大ダメージになるらしい。


「ゴ……ガアアァァァ!!ガッ!?」

 岩巨人が突進してくる。

 が、俺が先程設置した棒の場所にまで来たところで突如として岩巨人の左足が地面の中に引き摺り込まれる。


「かかったな!」

 俺はそれを見て急いで岩巨人に接近する。

 岩巨人は右足と左腕を必死に動かして抜け出そうとするが抜け出せない。

 さて、ここで俺が先程仕掛けた棒について種明かしをしよう。

 あの棒の名前は『インスタントピット』。地面を浅く掘って設置・起動することによって落とし穴を作ることが出来る罠系アイテムである。


「いくぜ!」

 俺は岩巨人の頭の前まで移動すると跳躍。後ろ回し蹴り二連打から≪噛みつき≫、メイスでの攻撃へと横回転で連携を繋いで片足で着地。

 だがまだ岩巨人はインスタントピットからは抜け出せていない。

 故にそこから今度は縦回転で、今度はメイス、踵落とし二連、左手でのゼロ距離属性投げ矢投擲、噛み付きと繋げる。


「ゴッ……!?」

 すると岩巨人の頭にヒビが入り、欠けた部分から右腕の物よりも小さいが再びあの文字列が見えてくる。

 どうやら岩巨人は身体の各部に文字列が隠されているようだ。


「ゴガアアアァァァ!」

「おっと。」

 と、ここで残った手足を使って器用に岩巨人がインスタントピットから抜け出して俺は慌てて距離を取る。

 やはりと言うべきか、どうやら≪罠職人≫を始めとする罠関連のスキルを持っていない俺の設置した罠ではそれほど長い時間は拘束できなかったようだ。


「だが、これで終いだ!」

「ゴッ……ゴグアアアァァァ!!?」

 しかし既に岩巨人頭部の弱点は露出しているため、俺は岩巨人が暴れだす前に再びピッケルを投擲し、≪器用強化≫によって普段よりも精度が向上しているピッケルは寸分違わず岩巨人の頭に記された文字列に突き刺さる。

 そして爆散。と同時に岩巨人の体は力無くその場で轟音と地響きを周囲に撒き散らしながら倒れる。


「仇討ち完了だ。」

 俺はそう言って岩巨人に背を向けて万が一に備えて出しておいたメイスを納めた。


△△△△△

取得アイテム

鉱石(未識別)×6

鉱石(未識別)×2

鉱石(未識別)×1

ストーンゴーレムの破片×3

ストーンゴーレムの指×2

ストーンゴーレムの文字列片×2

ストーンゴーレムの防護殻×1

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Name:ヤタ


Skill:≪メイスマスタリー≫Lv.17 ≪メイス職人≫Lv.14 ≪握力強化≫Lv.13 ≪掴み≫Lv.14 ≪筋力強化≫Lv.13 ≪方向感覚≫Lv.13 ≪四足機動≫Lv.12 ≪投擲≫Lv.14 ≪噛みつき≫Lv.15 ≪鉄の胃袋≫Lv.12 ≪器用強化≫Lv.8 ≪蹴り≫Lv.4


控え:≪酒職人≫Lv.14 ≪嗅覚識別≫Lv.12 ≪嗅覚強化≫Lv.11 ≪大声≫Lv.15

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アイテムフル活用回

多少蛮族っぽくないですが、相性が悪すぎるのでしょうがないです。


なお、これは解法の一つでしかないので、実際にはもっと様々な戦い方があります。

というか、慣れてくればタイムアタックの相手にされ……


10/07誤字訂正

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