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92:王都ミナカタ-15

『第4章:夢現と雪飛竜』開幕となります。

これからもよろしくお願いしますね。

 結局夜通しで宴会をやり続けて職人銀貨一枚以上が吹っ飛びそうになった所で慌ててミカヅキたちに土下座をして許して貰った翌日。

 忘れない内に聞いておくべきかと思って俺はアステロイドに北の山についての話を聞く。


「北の山に怪しい点ですかぁ。」

「ああ、イベントで技巧神の神殿の司祭が北の山を越えた先に職人神の神殿という所があると言っていたからどこかに道があるんだと思う。」

 俺の言葉にアステロイドは悩む様子を見せる。

 なお、俺とミカヅキ、それ以外の三人でオオゴンズワム戦後のイベントが違ったことは宴会中に既に話してある。


「うーん。思いつくのは山腹にあった何かを置けるような台座ですね。」

 アステロイドはそう言って台座の詳しい位置についても話をしてくれる。


「台座かぁ……。というか、職人神の神殿と言う名称から察するに職人系スキルがまた関わってるかもな。」

「今やっている三神殿のイベント開始にも職人系スキルのレベルが関わっていたそうですから可能性はありますねぇ。」

 ちなみに三神殿のイベント開始は武器系スキルと職人系スキル両方にレベル5以上のスキルを所有した状態で灯台下のセーフティエリアに入るのが条件だと確定されたらしい。


「なら、何か職人街の方でフラグが立ってたっぽいからまずはそっちに顔を出してみるわ。」

「頑張ってくださいねぇ。」

 そして俺は素寒貧になりつつ支払いを済ませると一度ガントレットのオッサンたちに会って装備品のグレードアップ(ベースはウルグルプ素材から変えずに、それぞれの特性を強化できるようにサブ素材を変えてもらう。)を頼んでから職人街へと向かった。



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「ふむ。今なら頼んでも良さそうだな。」

 ≪メイス職人≫の店に顔を出したところで開口一番そう言われた。


「今のお前は≪メイス職人≫Lv.13。これだけのレベルがあるならアレも任せられるな。」

 そう言って店主から俺へとイベント専用であろう素材とレシピが送られる。

 まず素材は……


△△△△△

奉納用聖石 レア度:1 重量:1


イベント用アイテム。この素材を使ってアイテムを作成することによって奉納アイテムが作成できる。

譲渡・売却・棄却不可

▽▽▽▽▽


 うん。これ確実にイベント用だわ。

 で、レシピの方にもプライベートエリアでしか作成できないと但し書きがされた上で奉納メイスと言うものが表示されている。

 うーん。これは≪酒職人≫の方でも恐らく同じイベントが起きるかな。


「そいつを使って奉納用アイテムを作ったら北の山の祭壇にそれを捧げて来てくれ。ちょいと分かりづらい場所にあるがきちんと物が出来ていれば問題なく見つけられるだろうさ。」

 なるほどな。恐らくだけどその祭壇=アステロイドの言っていた台座だと考えても良さそうだ。


「ああそれとだ。」

 うん?まだあるのか?


「作成に失敗した時は俺に言ってくれれば魔物銅貨10枚で奉納用聖石は売ってやるから安心しろ。」

 ……。ユフが何で時間がかかりそうだと言ったのかその理由が分かったわ。

 恐らくだけどアレだ。このアイテムは作成難易度が時期にそぐわないレベルで高い上に、失敗するたびにこうして魔物銅貨10枚が必要になるからとかだ。間違いない。


「じゃ、頑張って作れよ。」

「ああうん。とりあえず頑張るわ。」

 で、≪メイス職人≫の店だけでなく≪酒職人≫の店に行ったところやはり同様のイベントが発生し、奉納酒と言う物を作るように言われた。

 さて、これからどうするかな。別に北の山なら修理に出してない装備品で行っても問題は無いけど、その先のボス戦は厳しいだろうしなぁ。

 とりあえずは試しに奉納メイスと奉納酒を作ってみるか。失敗したら防具が返ってきた後にでもウルグルプを倒して金稼ぎでもしよう。ウルグルプの素材なら例え未加工でも協会でそれなりの値段が付くだろうし。


 というわけで、俺は一先ず自分のプライベートエリアに籠る事にした。



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 さて、まずは奉納メイスから行ってみるか。

 もちろん≪器用強化≫は装備済みである。


①ベースメイスを取り出す。

②ベースメイスと奉納用聖石を一緒に炉に入れて加熱し、ハンマーで指定された場所を叩く。


「じゃ、たた……!?」

 が、ここで俺の目に驚愕の光景が映る。ハンマーで指定された場所を叩けばいいのだが、その範囲が異様に狭い。親指の爪ぐらいしか指定された場所が無い。


「くっ!?だがやってやるとも!!」

 俺は精神を集中して細心の注意を払いながら渾身の力を込めてハンマーで指定された場所を叩いていく。

 カンカンと部屋の中に金属音が鳴り響く。


「ふう。何とかなったか。」

 で、何とか成功したのか次の工程が表示される。


③水の中に入れて冷却。

 うん。一応だけど狩人の水を使っておこう。


④②と③を数回繰り返す。

 ちくしょおおおおおぉぉぉおぉ!!やってやんよ!やってやんよおおぉぉぉ!!

 俺は血赤のウルグルプやマンティドレイクと戦った時の様に集中力を全開にしてハンマーを叩き込んでいく。


⑤最後に貴方が神聖だと思うものを使用して半日以上放置してください。

 神聖?ならこれじゃあぁ!

 と言うわけで俺は狩猟蜂蜜のブランデーをかける。

 ふっふっふ。狩猟蜂は狩猟神の神殿という神聖な場所に居る固有種。そしてその狩猟蜂が集めた蜜から作られる蜂蜜酒は見るからに神聖感丸出しな黄金色の酒。おまけに蒸留によって不純物が取り除かれていると言う儀式的な意味合いも加わって倍プッシュだ!


「……。」

 で、ぶっかけたのは良いけど半日放置ってすごく暇じゃね?

 いやまあ、恐らくはあんな極度の集中能力を有する作業の後に北の山に行くのは嫌だと言うプレイヤー心理を読んでくれたんだと思うんだけど、通常の運営状態ならともかく今のログアウト不能な状態だと暇で暇でしょうがないわ。

 うーん。奉納酒の方もやって、その後は職人街をいろいろ見て回ってみるか。アステロイドが持っているっていう携帯鍛冶セットとか欲しいし。


 その後、奉納酒は作成失敗し(奉納用聖石に特殊な加工をしてから狩人の水に入れるそうなのだが、加工がものすごく細かくて普通にミスった。)、俺は適当なアイテムを売り払う事によって得たお金で携帯鍛冶セットとピッケルを買うと、ガントレットのオッサンから強化された防具を受け取ってその日は休んだ。

 さて、明日の朝には奉納メイスの作成が成功したかどうかが分かるだろう。



△△△△△

Name:ヤタ


Equipment:攻撃力:165+雷15 防御力:52+水2+闇3

武器:マンティメイス 【サンダースイング】 【スイングダウン】

頭:ウルグルプヘッド 【ハウリング】 【ウルフファング】

首:巨大狼の首飾り  【獣人化:ウルグルプ】

胴:ウルグルプベスト 【アンチポイズン】(オオゴンズワムの黒鱗使用)

腰:ウルグルプベルト

腕:ウルグルプアーム 【アイアングラップ】

脚:ウルグルプグリーヴ

指輪1:アクティブコーラルリング

指輪2:スカルヘッドリング 


控え武器

Rシザーメイス 142+水15 【ディフェンスライズ】

コヒツジジュウジ 130+光5 【ヒール】

クロノコンボウ 150+闇10 【ダークスイング】 【ベノムスイング】

▽▽▽▽▽

10/02 誤字訂正

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