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89:海底洞窟-7

 決闘の翌日。

 俺、アステロイド、ハレー、ミカヅキ、フェルミオの五人は技巧神の神殿のボス攻略をするために一緒に海底洞窟の中に入っていく。

 もちろん武器や防具の修復や、アイテムの補給は昨日決闘が終わった後にしてあるので、道中の敵は省エネモードで今まで顔を合わせた事の無いフェルミオとの連携の確認をしつつ適当に討ち払っていく。


 で、そんなところでケース1『地上でアクティブコーラル×1、プルローパー×4のパターン』


「敵が来るな。」

 俺の≪嗅覚識別≫が敵の接近を感じ取る。


「行きますねぇ。」

 で、まずはアステロイドが囮として接近。

 当然プルローパーに絡め取られ、アクティブコーラルに殴られるがまあ大したダメージにはなってない。


「じゃあ行きますか。」

「ぶった切るニャ。」

「僕は周囲の警戒をしておきますね。」

 続けてハレーは周囲の敵がリンクしないかを見張り、ミカヅキとフェルミオが飛び出してプルローパーを攻撃し始める。

 まあ、当然ながら暗殺が成立する状態でのミカヅキの攻撃はプルローパーに大ダメージを与え、大剣二刀流などと言うネタ満載なフェルミオの攻撃はネタではあるがその見た目通りに恐ろしい威力を叩きだしてプルローパーどころか土台であるアクティブコーラルごと吹き飛ばす。

 で、その後もアステロイド、ミカヅキ、フェルミオの三人によるタコ殴りで為す術も無く5体のモンスターは撃破される。


 ケース2『水中でサハギン4体にソードフィッシュ×2のパターン』


「じゃ、撃ちますね。【ファイアショット】」

 当然の様に発見したのは俺の≪嗅覚識別≫なのだがそれはまあ置いておいて。

 先制攻撃としてまずハレーが【ファイアショット】を水中に居る敵集団のど真ん中に撃ち込み、敵に着弾した【ファイアショット】は水中であるにも拘らず爆発を起こして敵全体を巻き込む。


「ニャハハハハハ!」

 そして続けざまに地上よりも明らかに速いスピードでフェルミオが爆発で統制が乱れている敵集団の中心に潜り込んで抜刀。

 縦横無尽に両手の大剣を振り回して全ての敵を切り刻んでいく。

 というかフェルミオの奴どれだけ≪泳ぎ≫系統のスキルのレベルを上げているんだ?地上では大剣二刀流のせいで俺たちの中で一番動きが遅いのに遊泳状態に入った途端俺たちの中で一番動きが速くなったぞ。


「終わったニャー。」

「お疲れ様です。」

「早く次の浅瀬まで移動しましょうかぁ。」

 で、戦闘が終了した所で剥ぎ取りを済ませて更に奥へと進む。

 ちなみにフェルミオのニャという語尾は頭に付けているバブルキャット素材のネコ耳に合わせたものなので普通に喋る事も出来るらしい。


 ケース3『浅瀬でサハギン×4PT×2』


「やばっ!?挟まれんぞ!」

 俺の≪嗅覚識別≫が前と後ろの両方からサハギンたちが接近して来ている事を知らせる。


「後ろは私とハレちゃんで止めますね。」

「ですので前はお願いします。」

 そう言ってアステロイドが壁役としてハレーと一緒に後ろに向かい武器を構える。


「じゃあ、俺が囮に……」

「とっとと突っ込むニャ。」

「行きますよヤタ。」

 で、俺が≪四足機動≫を使って前の集団に突っ込もうとする前にミカヅキは姿を消し、フェルミオはやはり地上よりも速いスピードで敵集団に真正面から突っ込む。


「うふふ~ハァハァ。」

「≪固定砲台≫チャージ完了。【ファイアショット】!」

 後ろで戦闘が始まったのかアステロイドの声とハレーの攻撃による爆発音が聞こえ始める。


「【ファーストアサシネイト】」

「【アクアスタンス】【スクリュースラッシュ】ニャ。」

 そして前方ではミカヅキの【ファーストアサシネイト】による強烈な一撃にサハギンたちが反応して振り返った所でフェルミオが祝福によって強化された大剣から渦潮の様な斬撃を放ってサハギンたちを切り刻む。


 その後も鳴り響く爆発音に斬撃音。結局俺が突っ込む前にサハギンのPTは両方とも壊滅していた。


「……。」

 俺、出番なくね?

 いや、全体で考えればまったく出番が無い訳じゃないんだよ。≪嗅覚識別≫でいち早く敵の接近を捉えて知らせる役目を担っているんだよ。そうだ。だから何も問題ない。何も問題は無いんだ。


「どうしましたヤタ?」

 ミカヅキがサハギンたちから剥ぎ取りを終えて俺に近寄ってくる。


「いや、何でも無い。ちょっと考え事をしていただけだ。」

「?」

 そんな明らかに心配そうな目で俺を見ないでくれ!悲しくなってくるから!


「もうすぐ最深部ですし急ぎましょうかぁ。」

「そうだニャー。急ぐニャー。」

 そして、自らの存在意義に悩む俺を余所に海底洞窟の攻略は進んでいく。



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「これが海底洞窟のボスゲートですよぉ。」

 アステロイドがそう言ってハレーにボスゲートを指し示す。


「威圧感がすごいですね。今まで僕が戦ってきたボスとは明らかに違う感じがします。」

 そう言うハレーの顔色は特に悪くなっていたりはしない。どうやらハレーはこの気配に耐えられるようだ。


「実際、実力の方も相当らしいニャ。既に攻略組は何組か倒しているけど、それでもまだ倒せていない組の方が多いニャ。」

 フェルミオがハレーの横に並び立ってそう言う。

 実際この中ではフェルミオが最も長く海底洞窟に居るだろうし、そんなフェルミオの言葉なら確かにそうなのだろう。


「となれば、ここで倒すとまた目立つことになるわけですか。まあ、手早く攻略するが故の有名税だと思っておきますか。ハァ……。」

 最初にマンティドレイクを倒してしまったがために有名になり、今回の決闘騒ぎへと繋がったミカヅキとしては目立つのはやはり嫌らしい。


「ま、今回は5人で挑むんだし。そこまで目立たないだろうさ。よし。それじゃあ乗り込むぞ。」

「ですね。」

「分かりましたぁ。」

「了解です。」

「行くニャア。」

 そして俺を先頭にして俺たちは海底洞窟のボスゲートに突っ込んだ。

メンバーが多くなって獣人化をしてないとやっぱりヤタは器用貧乏っぽくなりますねぇ


09/30誤字訂正

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