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84:海底洞窟-5

「にしてもよく出来たダンジョンだよな。」

 俺は1個目の帯気石の効果が切れたため2個目の帯気石を砕いて使用し、水没した海底洞窟の通路の一つを泳いで行く。


「?」

 アステロイドが訳が分からないと言った表情を見せる。

 いや、実際かなり海底洞窟に関してはよく作り込まれていると思う。

 なにせ、時間に応じて水深が変化するというシステムに加え、そのシステムに合わせて水が無い時は壁や丘として機能する部分が水が深くなれば今度は休憩用の浅瀬に変化するわけだしな。

 おまけに採取ポイントが水に浸かっているかどうかで採れるアイテムにも変化が現れるし。


 と、SPゲージが危なくなってきたので俺とアステロイドは浅瀬に移動して休憩する。

 ふう。帯気石の効果によって一時的に泳げるようにはなっているが、所詮はレベル5の≪泳ぎ≫だしな。戦闘無しでも15分がSPゲージの限界で、潜水中に出る呼吸ゲージに至っては5分ぐらいで尽きるからな。

 それゆえに小まめに休憩しないといざって時が恐ろしい。


「ま、早い所この通路を抜けちまおう。」

 俺の言葉にアステロイドが肯き、俺とアステロイドは各種ゲージが回復したのを確認してから再び泳ぎだす。



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「また来たぞ。」

 比較的水深が深いエリアに来たところで俺はアステロイドを手で制止しつつ敵の数と種類を匂いで改めて確認する。


「数4だが、ウツボ3に珊瑚1だからアクティブコーラルにプルローパーが付いている可能性が高いな。」

 で、匂いを確認してアステロイドに伝えたところで、アステロイドが少しずつ前に出る。

 さて、現在の水深は3mちょっと。流石にこの深さになると水中戦になるな。


「「「キシャアアアァァァ!」」」

 移動速度の差から先行する形になったシビレウツボたちが視界に入ってくる。どうやら浅瀬での戦いと違って水面上に飛び出す事は無さそうだ。


「ん。」

「分かってるよ。アステロイドはアクティブコーラルを頼む。」

 シビレウツボが水上に出てくることが無いために、アステロイドがシビレウツボは任せるというジェスチャーをする。

 なので俺はそれを受け入れて水中に潜り、≪四足機動≫によって加速。アステロイドを追い抜かす。


「ギシャ!?」

 そして、その加速のままシビレウツボの一体に噛みつき、メイスを抜くと同時にその場で獲物を捕らえたワニの様に回転して周囲のシビレウツボを殴りつつ噛み付いたシビレウツボにダメージを与え、トドメとして他のシビレウツボに向かって投擲する。


「「ギシャアアアァァァ……」」

 が、水中で加速させづらいためなのかギリギリ生き残ってしまったようだ。

 ここで何か堅い物を叩くような音がしたのでそちらの方に≪嗅覚識別≫の感覚を集中する。で、匂いから察するにアステロイドがプルローパーに絡め取られ、アクティブコーラルごと斧で叩きまくっているようだ。


「「「キシャアアア!!」」」

 と、アステロイドの事を気にしている暇はないらしい。

 ダメージを負ったものも含めてシビレウツボが突進してくる。

 俺はそれを≪四足機動≫を使って横に逃げつつ、シビレウツボたちが俺の居た所を通り過ぎた所でダメージを負っていたシビレウツボにメイスを叩きつけて撃墜する。


「プハァ!」

 で、ここで呼吸のために一度浮上。

 やっぱり水中戦は如何にゲージ消費を抑えるか効率よくゲージを回復するかだな。


「「キ……」」

「と、ヤバッ!」

 俺が水面に出た所でシビレウツボが電撃攻撃の体勢を取ったのを見て、俺は急いで攻撃範囲外に離脱。

 そして俺が離脱した所でシビレウツボたちが電撃を発する。


「さて反撃だな。」

 で、電撃が止んだところで加速して接近。横回転によって≪噛みつき≫とメイスによる攻撃を強化してシビレウツボたちにダメージを与える。

 シビレウツボたちが苦し紛れに噛みついてくるが、こうなってしまえば大勢は決したも同然であるため、更に回転スピードを速めてシビレウツボたちを弾き飛ばすと一匹ずつ噛み殺してやる。


「~♪」

 と、ここでアステロイドもアクティブコーラルたちを倒したのか浮上してくる。


「ふう。何とかなったな。」

 俺とアステロイドは水上で一度目線を交わすと再び潜って倒したモンスターの素材を回収していく。


 と、素材を回収していたところで俺の≪嗅覚識別≫が新たな敵とプレイヤーらしき臭いの接近を告げてくる。

 俺はジェスチャーでアステロイドにそのことを告げると近場の浅瀬にまで二人で移動する。


「サハギンダイバー5体か。」

「……!?」

 水中戦仕様のサハギンが5体俺たちに向かって接近してくる。

 が、俺たちの下に辿り着く前にそのサハギンの集団に切り込む影が現れる。


 その影はいくつかの点で俺たちの度肝を抜いた。

 影は俗に言うバサロ泳法で泳いでいた。恐らく≪泳ぎ≫か≪潜水≫でも持っているのだろう。だが、これは別におかしくない。おかしいのはその手に持つ物と防具だ。

 まず武器は本来両手用の武器であるはずの大剣を片手に1本ずつ。つまりは大剣の二刀流をその影はしていた。

 一応、俺にはどうやればそれが出来るかの予想は付いている。恐らくあの影の主は両手武器を片手で持てるようになる≪片手持ち≫と片手で持てる武器を両方の手で装備できるようにする≪二刀流≫を併用しているのだろう。

 だからその考えに至れなかったであろうアステロイドよりもその点ではそこまで驚いていない。

 しかし、影が身に着けいている防具。それは明らかに突っ込みどころが満載だった。なにせ……


「ネコ耳スクール水着だと……。」

 その影の主の頭にはネコ耳が生え、体にはスクール水着以外の防具が見えなかったからである。

 なお、きちんと影の主は女性である。その点は安心してもらいたい。


「「「ギョギョギョオオオォォォ!?」」」

 さて、仮称猫スク水だがその実力は圧倒的だった。

 なにせ、サハギンダイバー5体を相手に一切反撃を許さずに一方的に両手の大剣でサハギンダイバーたちを切り刻んでいくのだ。

 おまけにかなり激しい動きをしているのに呼吸が苦しくなっている様子も見せない。


「うーむ。水中戦特化するとここまで凄まじくなるのか……。」

「凄いですねぇ。」

 と、帯気石の効果時間切れなのかアステロイドも口を開いて感想を露わにする。


「手を振ってるな。」

「会釈ぐらいはしておきましょうかぁ。」

 で、俺たちが感想を言っている間に猫スク水は剥ぎ取りまで済ませ、俺たちに向かって手を振ると何処かへと泳いで行った。

 とりあえず、彼女は色んな意味でアステロイドと同類だと思う。でなければあそこまで水中特化になるとは思えん。


「じゃあ、俺たちも行くか。」

「ですねぇ。」

 俺たちも彼女を見送ると探索に戻る。

 で、探索に戻ってからしばらく経って俺たちは今回の探索の目的。つまりは


 ボスゲートを見つけた。

≪片手持ち≫≪二刀流≫≪両手持ち≫について


これらはいずれも制限解除系スキルであり、以下のような効果があります。


≪片手持ち≫:両手用武器をペナルティを受けますが片手用武器として持てるようになります。ペナルティは≪片手持ち≫のレベルが上昇することによって緩和されます。

≪二刀流≫:ペナルティを受けますが両手にそれぞれ同じ種別の片手用武器を持つことが出来ます。ペナルティは≪二刀流≫のレベルが上昇することによって緩和されます。

≪両手持ち≫:片手用武器を両手で持って使用することが可能になります。≪両手持ち≫のレベルが上昇することによって効果適用時の攻撃力等が上昇します。


なお、いずれのスキルも一部種別の武器には無効です。


で、作者的には≪両手持ち≫が一番扱いに困るスキルです。普通に使うと素直に両手武器を使えよ!と言われるだけなので。

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