<< 前へ次へ >>  更新
80/249

80:技巧神の神殿-3

「痛ぇ……。」

 技巧神の神殿に戻された俺は身体の節々に挑みを感じつつアステロイドを待つために少し離れた場所の床に座る。

 それにしてもまさかあのタイミングで挟撃されるとは思わなかった。ペナルティ有りの状態で戦力差5倍は流石に無理だわ。


「とりあえず回収したアイテムがどれだけ残っているかを確認するか。」

 ただまあ、やられてしまった物はしょうがないのでデスペナルティの結果として失ったアイテムがどれだけあるかを確認しておく。


 ……。


 手に入れたアイテムが五割近く無くなってる……。これは普通に痛いな……。今日の稼ぎの三割ぐらいは失った感がある。

 まあ、それでも目標のアイテムはいくつか回収出来ていたからいいか。


△△△△△

帯気石 レア度:2 重量:1


多孔質で柔らかく見た目以上に大量の空気を蓄積できる不思議な石。口に含むとパチパチする。

使用すると30分間≪泳ぎ≫Lv.5相当の能力を付与。

▽▽▽▽▽


 で、他に残っているアイテムは……アクティブコーラルの枝とか敵から入手したアイテムはある程度残っているか。

 これならそこまで問題ではないかな。


「はぁん……。」

 と、ここでアステロイドが艶っぽい声をさせながら何故か裸で死に戻りしてきた。


「……。俺が死んでからの数分の間に何があったし……。」

 俺は思わず顔に手を当てて天を仰ぎながらそう呟く。

 でも、この気持ちはきっといろんな人と共有できると思う。


「あっ、ヤタさん。どうせやられるのなら少しでもスキルのレベル上げをしようと思いましてぇ。これでも粘ったんですよぉ。」

 アステロイドが周囲に桃色なオーラを振りまきつつ(正確にはそんな気がするだけだが)俺に声をかけてくる。

 周囲の連中の視線は……おおよそ嫉妬と憐みが1対1でブレンドされてんな。まあどっちも理解は出来る。

 後、アステロイドが粘ったと言うのはよく分かる。俺がやられてからアステロイドが来るまで数分かかったしな。


「とりあえず、防具の修理のためにもどちらかのプライベートエリアに行きましょうかぁ。」

「ソウデスネー。」

 ただ、何にしてもこの状態のアステロイドと付き合うのは非常に疲れそうだ。



---------------



「じゃ、防具の修理頼んでもいいか。」

「分かりましたぁ。」

 アステロイドのプライベートエリアに入った俺はアステロイドに自分の着ていた防具と修復石を渡して修理をしてもらおうとする。


「あ、ヤタさん。すみません。この巨大狼の首飾りは私の≪修復職人≫では修復できないみたいです。ですから、これは作った人の元で直してもらってくれませんか?」

「ん?そうなのか。ならまあ、耐久度はまだ大丈夫だし。今度これを作った職人に会ったら頼むわ。」

 が、どうやら巨大狼の首飾りはアステロイドの腕では修理できないらしい。これもまた≪修復職人≫のデメリットと言ったところなのだろう。

 まあ、それなら今度会った時にでもガントレットのオッサンに直してもらうだけなんだが。


「すみませんね。じゃあ、私は二人分の防具を直しますね。」

 そして、アステロイドは炉を取り出して防具の修理を始める。その手付きは随分と慣れたものだ。


「というか。アステロイドが≪修復職人≫を取ったのはスキルのレベル上げで頻繁に防具が痛むからか?」

「そうですね。北の山に籠っていた頃なんて多い日には2、3回は修復をしていました。」

 2、3回って……普通、防具は損耗のスピードが遅いから数日に一回ぐらいで十分なはずなんだけどなぁ……下手な武器よりも損耗スピードが早くないか?


「あ、そうだヤタさん。」

「何だ?」

 防具を一つ修復し終えたアステロイドがこちらに声をかけてくる。


「私の回収したアイテムはそこのボックスに入れておきましたから例の水中対策のアイテムなら取り出しても構いませんよ。」

「分かった。なら帯気石を貰って≪酒職人≫で効果を上げられるかを確認しておく。」

「お願いしますねぇ。」

 俺はアステロイドのアイテムボックスを開く。

 なお、他人のアイテムボックスは持ち主の許可が無ければ触る事すらできない様になっているのだが、大した話題ではないのでスルー。

 むしろ問題はなのは……


「おいアステロイド。」

「何でしょうか?」

 防具の修復をしながらアステロイドが答える。


「何でデスペナを喰らったのにこんなにアイテムが残っているんだ?」

 大量にある海底洞窟産のアイテムの数々だ。

 うん。明らかにおかしい。俺は五割消し飛んだのに何でアステロイドのボックスには推定だがアイテムポーチの限界容量の7割近いアイテムが有るんだ?

 俺がその点を指摘するとアステロイドは。


「私はデスペナ軽減用のスキル。≪黄泉還り≫を持っていますから。ちなみにレベルはもうすぐ20近いですよぉ。」

 と、答えた。


「また、ドマイナーなスキルを……」

 俺は思わずそう漏らす。

 と言うのも≪黄泉還り≫のスキルは耐性系のスキルに分類されるのだがその効果はデスペナルティの軽減と言う非常に限定された効果だからだ。

 おまけに言うならスキルは効果を発揮しないとレベルが上がらない。つまりは≪黄泉還り≫の場合、死なないと(・・・・・)レベルが上がらないスキルなのである。

 うん。流石は『ドM山脈』。ここまでマゾいスキルを持っているのは恐らく貴女だけです。とりあえずこの件は吹聴しないでください。俺にまでその余波が来そうなので。

 というか、レベル20って≪黄泉還り≫がどういう風にレベルが上がるのかは分からないけど推定20回以上は死んでるよな。本当にマゾいわぁ……。


「あー、とりあえず明日の朝までに自分の部屋で色々試しておくからまた明日神殿前の広場で集合ってことでいいか?」

「いいですよぉ。」

 そして俺は大量の帯気石をアイテムポーチに入れて自らのプライベートエリアへと移動した。

アステロイドは本当に耐久特化で、スキルのレベル上げがかなりマゾいです。


09/23 誤字訂正

01/06 誤字訂正

<< 前へ次へ >>目次  更新