77:海底洞窟-1
さて、やっとこさ3章のメインエリアに突入です。
俺とアステロイドは装備の修復を終えると技巧神の神殿から海底洞窟へと突入した。
ちなみに俺の武器は属性相性が悪いのを承知でRシザーメイスに変更済みである。まあ、こっちは【ディフェンスライズ】を使えるからな。しょうがない。
というか、突入前に通りすがりのプレイヤーから妙に見られていた気がするが何かあったのか?
「綺麗ですねぇ……。」
と、海底洞窟の中に入ったアステロイドが第一声としてそんな声を上げる。
海底洞窟。そこは珊瑚や岩によって構築された洞窟であり、洞窟内では縦横無尽に道が張り巡らされているので意外と起伏に富んでいる。
また、道の中には海水が浸入してきている通路もあり、中には完全に水没している通路も存在している。
なお、洞窟ではあるが集団戦闘が行えるようにと全体的に広く作られているため、閉塞感はそれほどない。
てか、絶対に水没した通路の先に採取ポイントとかあるよな。
で、そう言う所に樹林回廊で回収した狩猟神の蜜月のようなアイテムがあるよな。
というか、俺の≪嗅覚識別≫は既に採取ポイントが水没した場所にあるのを察知してるんだよ!
「ところで、水の中に入るとどうなるのでしたっけ?」
アステロイドが水辺に近寄り手に水を付けながら俺に聞いてくる。
で、俺はアステロイドの質問に答えるために以前スレで見た水の中に関する仕様を思い出して説明する。
そのスレのまとめによれば、
まず水場では足首より上まで水が来ると行動やスキル、祝福にペナルティ(行動速度の低下やSPの過剰消費)が発生する。
ペナルティは水深に比例し、膝上まで来るとまともな戦闘を行うのは難しくなる。
ペナルティは装備品の重量と種別にも比例する。
これらのペナルティは≪泳ぎ≫を初めとする各種スキルによって打ち消すことが出来る。
腰上まで水が来ると遊泳状態となり、遊泳状態から呼吸が出来ないような状態になると潜水状態となる。
遊泳状態・潜水状態では常時SPを消費し、SPが尽きると溺れて沈む。
潜水状態ではエアゲージが出現し、これが無くなると各種自然回復系の効果が無効化された上でHPが減り始める。
≪泳ぎ≫などの対応したスキルがあればSPやエアゲージの消費スピードを抑えることも出来る。
なお、一時的に≪泳ぎ≫を習得したのと同じ効果を得られるアイテムが技巧神の神殿で採取可能とのこと。
とりあえずの結論として水中・水面戦闘を行いたい場合は対応したスキルを持っているのが前提。無い状態でそう言う状況になったら慌てず急いで陸に戻る事。
対応スキルが全くないなら1分以内に必ず沈む。
「という事らしい。」
「なるほどぉ。そうなると水場には可能な限り近づかない方が良いんですね。」
俺の説明にアステロイドは納得顔で頷き、水場から手を引き上げる。
「現状ではそうだな。とりあえず色々採取して見よう。で、その中に水場対策のアイテムが有れば俺が≪酒職人≫で効果を強化できるはずだから本格的な探索はそれからにすればいいと思う。」
「分かりましたぁ。」
ま、どうせHASOスタッフの事だから樹林回廊と一緒で地底湖の上に通路が架かっていて、敵の攻撃などによって下の湖に叩き落されるとかそういう構造になっている場所とかあるだろうしな。
急いては事をし損じるだ。
「と言うわけで、とりあえずの探索を開始するぞ。」
「はーい。」
そして俺とアステロイドはゆっくりと海底洞窟に数ある通路の中から一本を選んで入っていった。
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技巧神の神殿はPT向けのエリアである。
俺は今まで何となくでしかこの言葉の意味を理解していなかった。
「【ディフェンスライズ】!」
「ふふ。ふふふふふ~♪」
俺の【ディフェンスライズ】によってただでさえ高い防御力がさらに高くなったアステロイドが敵集団に飛び込み、敵の攻撃を一身に受ける。
が、こうして実際に経験してみればよく分かる。
確かにここはPT向けだ。というか俺一人で攻略するなら【獣人化:ウルグルプ】を結構な頻度で必要とすると思う。
「おらぁ!」
「【スイングダウン】~」
「「ギョギョー!」」
アステロイドを攻撃していた数体のサハギンの内の一体の後頭部を俺が殴りつけると同時に、アステロイドが祝福で強化された一撃によって無理やりサハギンを仕留める。
続けて俺が≪掴み≫と≪大声≫で動きを止め、その間にアステロイドの斧が横に振るわれて残りのサハギンの体を打ち砕く。
「ふう。全く、毎回毎回4体以上で出現とかキツすぎるだろ。」
「ハァハァ……おまけに単一種で出てくるとも限りませんからねぇ。」
アステロイドがちょっと目を潤ませながらサハギンたちからの剥ぎ取りをする。この娘は……だからああいう二つ名が付くんでしょうが。ちょっとは自重しなさい。
と、話を戻すが、実を言うと海底洞窟で出現する敵はそれ相応に種類が有るのだが、どいつもこいつもPTを組んで巡回しているのである。
で、そのPTは最低で4体以上。場合によっては10体以上で構成された大PTも存在していることがあり、おまけにそのPT編成が樹林回廊の下層部のスケルトン軍団の様に一定で無かったりもするので、戦う際には相手のPT編成をしっかりと見極めた上で戦う必要があるのである。
ちなみに海底洞窟では樹林回廊と違って地上部も水中部も敵はPTを組んでいる上に広いと言っても戦いを回避できるほど広い訳ではなく、しかも一体が敵を見つけるとしっかりPT全員で襲ってくるようになっている辺りもPT向けと言われる由縁であったりする。
「おまけにまだ対策アイテムは見つからないしなぁ……」
「地上じゃなくて水中なんですかねぇ……」
で、この状況に追い打ちをかける様に俺たちはいくつかの採取ポイントでアイテムを探ったがまだ対策用アイテムは見つかっていない。
というか仮に水中だとしたら決死の採取作業になりそうだ。
「もしかしたら未鑑定組のアイテムに目標が含まれているかもしれないし、一度戻るか?」
「それもいいかもしれませんねぇ。」
俺の提案にアステロイドも素直に頷く。
まあ、とりあえずは俺の≪嗅覚識別≫では正体が分からなかったアイテムに対策アイテムがある事を信じて技巧神の神殿に戻りますか。
09/22 誤字訂正