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72:砂浜-2

休日なので本日2話目となります。

「さて、これから技巧神の神殿に向かうわけだがその前に幾つかの情報を伝えておこう。」

 軍曹……初日に立て看板を読んだ男性が砂浜を移動しながら話し出す。


 さて、軍曹の情報によるとまずボスの名前はサハギンリーダーと言い、取り巻きに大量のサハギンナイトが居る。

 で、このサハギンナイトの数だが戦闘に参加しているプレイヤーの数とゲートの色によって数が変わり、紫でもフルメンバーで挑むと20体を超えるそうだ。

 ちなみに血赤だとこちらのメンバー数に関わりなく同時に30体以上出てきてしかも無限沸きするらしい。うーん。恐ろしい。

 なお、今回は攻略組6名+生産組6名+ソロ組3名の計15名で紫に挑む予定なので、サハギンナイトの数は12~14ぐらいだそうだ。


 で、役割分担としては生産組は集団で固まって自衛。攻略組は数を減らす事を優先しつつボスであるサハギンリーダーを狙う。そして俺を含むソロ組は遊撃役だそうだ。

 遊撃ねぇ……別にリーダーを俺たちが倒してしまっても構わんのだろう?


「そろそろだな。」

 と、ユフが時計の様なものを見ながら呟く。あの時計は恐らくユフが自らの持つ≪小道具職人≫で作ったアイテムだろう。

 そしてどうやら砂浜の隠し通路がもうじき出現するようだ。


「来ましたね。」

 変化は突然だった。

 急激に潮が引き、海の中に隠されていた砂浜の通路が露わになる。ここまでちょうどいいタイミングが分かっているという事は通路が出現する法則は解析済みという事だろう。

 さて、通路の先に見えるのはインスタントポータルに海中へと向かう穴。どうやら穴の先にボスゲートがあるらしい。


「では全員行くぞ。」

 そして軍曹の指揮に従って俺たちは隠し通路を渡り、インスタントポータルの登録を切り替えると、穴へと入っていく。



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 穴の中は不思議な場所だった。

 地面は岩で作られた階段なのだが、周囲は海で俺たちの歩く通路との間に壁の様なものは見えない。何と言うか不思議技術である。


「綺麗ですね。」

「本当ですねぇ。」

 まあ、ミカヅキとアステロイドも言うように海中を泳ぐ魚たちや時折見えるサンゴが綺麗だしいいか。


 と、広場の様な場所とその先に紫色のボスゲートが見えてくる。


「では一時間ほど休憩した後にボス、サハギンリーダーの討伐を行う!」

「「「おう!」」」

 そして軍曹の号令に従って俺たちは休憩を始める。



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「ヤタさん。ちょっといいですか?」

 休憩時間中。ハレーが俺に近づき声をかけてくる。


「ん?どうしたハレー?」

「ヤタさん確か≪投擲≫を持っていますよね。でしたらちょっと受け取ってほしいものがあるのですが。」

 ハレーが自分のアイテムポーチをガサゴソと探り始める。

 えーと、ハレーってたしか≪矢玉職人≫持ちだったよな。≪矢玉職人≫で≪投擲≫に使えるアイテムって作れるのか?


「これです。どうぞ。」

 ハレーが一本の矢を俺に向かって差し出す。

 その矢は矢じりは鉄で出来、他は木製だ。

 ただ、普通の矢とは少しサイズや太さが違っていて、握って投げるのに適していそうである。


「これは?」

「鉄の投げ矢と言います。」

 ハレーの言葉と同時に俺の前にウィンドウが開かれる。


△△△△△

鉄の投げ矢 レア度:2 重量:1 種別:矢玉 作成者:ハレー

攻撃力:110

耐久度:100%

鉄の矢じりが付けられた投げ矢。≪投擲≫等を使用して用いる。

▽▽▽▽▽


「へー、≪投擲≫に使うアイテムっててっきり≪投擲具職人≫以外では作れないかと思っていたんだが、他の職人系スキルでも作れるんだな。」

「はい。ただ、僕の知る限りでは≪矢玉職人≫で作れる≪投擲≫用のアイテムは投げ矢系統のアイテムだけで、やはり≪投擲具職人≫の方が作れるアイテムの種類は圧倒的に多いです。」

 なるほど。つまり俺の様に補助的に≪投擲≫を使うだけならただ物を投げたり、≪投擲具職人≫以外の職人系スキルで製作可能なアイテムでも構わないが、本格的に≪投擲≫で戦う事を考えるなら攻撃の種類を増やすためにも≪投擲具職人≫はやっぱり必要なのか。

 しかし、自分で取得するのはな……≪投擲≫用のアイテムって基本的に使い捨てっていう話だし。


「で、何でこんな物を作って俺に?」

「いえ、単純に≪矢玉職人≫のレベル上げで作ったのは良いんですけど、普通の≪投擲≫持ちプレイヤーは僕の所で買わずに≪投擲具職人≫の所で買うか、そもそも投げる物にこだわりが無いっていうプレイヤーばかりで在庫が有り余っているんです。」

 ああなるほど……確かに普通の≪投擲≫持ちプレイヤーならそうなるよなぁ……。


「そういう訳で、以前助けてもらった礼も含めて受け取ってもらえますか?」

「分かった。ならありがたく受け取らせてもらうよ。」

 そう言ってハレーが総計20本ほどの素材が違う投げ矢を渡してきたため、俺は素直にそれを受け取る。


「休憩終了5分前だ。そろそろ気ぃ引き締めて行けよ!」

 と、ここで攻略組の一人が全体に声をかける。


「じゃ、お互い無事にボス戦を乗り切れるように頑張ろうか。」

「はい。お互い頑張りましょう。」

 その声を受けてハレーは生産組の所に移動し、俺はソロ組の集合場所に戻る。


「では、今よりボス戦を開始する!」

 そして軍曹の言葉を受けて俺たちはボスゲートの中へと入っていった。

ちなみに石ころの攻撃力は10以下です。弱いです。


04/01誤字訂正

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