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71:王都ミナカタ-14

 翌朝、王都北東の門前まで行くとそこには多数のプレイヤーが集まっていた。

 うん。帰りたい。人が多すぎると落ち着かないわ。


「お、来たかヤタ。」

 が、その前にユフが俺を見つけて声をかけてくる。もう引く機会は無いらしい。


「で、何だよこの人数は。」

 とりあえずこれだけの人数が集まるとは思っていなかったのでその辺りの理由を聞いておく。


「いやな。軍曹を中心にした同盟が技巧神の神殿を攻略したことって有名でな。その同盟の一部が今日生産組の一部を連れていくって噂が流れちまって、あわよくば便乗しようと言う奴が集まっちまったんだよ。」

「うわ……面倒だわぁ……。」

 ユフの話を聞いて正直にそう思う。攻略組だって忙しいんだから迷惑かけんなよ。


「ま、心配しなくても軍曹はこの手の便乗を許す気は無いからな。王都の外に出ればもう絡んでこねえよ。」

「そうかい。じゃ、とりあえず俺はミカヅキたちソロプレイヤー組を探してPTを組んでおけばいいのか?」

「おう、そうしておいてくれ。30分後に門の外に集合な。」

「了解。」

 そうしてユフは集団の中に消えていく。

 さて、俺もミカヅキを探すか。



--------------



 しばらく集団の流れを見ているとすぐにソロプレイヤー集団は見つかった。何と言うか周囲とは明らかに違う空気を纏ってる。特に2人ほど明らかに纏ってる空気が違う。


 纏う空気が違う2人の内片方はミカヅキだ。武器がマンティドレイクの素材製と思しき物に変わっており、攻撃力だけなら攻略組を含めてもトップクラスだろう。

 その周囲は威圧感からかピリピリしているが、ミカヅキ自身の存在感は薄い。自分の姿を見せずに周囲を威圧するとか流石はミカヅキだな。


 で、もう一人は青い髪に斧と全身を覆う重装備。

 纏う雰囲気は地味にピンクっぽい感じがする。うん。どう見ても彼女です。

 ドM山脈さんです。


「あ、来ましたか。ヤタ。」

 ミカヅキが近づいて来てPT申請を俺に出してくる。


「おう。他のソロプレイヤー面子は?」

 俺はミカヅキからのPT申請を受け入れつつ他のメンバーについて聞く。


「彼女がそうです。後は生産組6人に軍曹さんとユフさんを含む攻略組6人ですね。」

 そう言ってミカヅキはドM山脈さんを指さす。


「『アステロイド』と言います。妹共々今日はよろしくお願いしますねぇ。」

「ああ俺は『ヤタ』だ。よろしく頼む。」

 そう言って俺はドM山脈改めアステロイドと握手を交わす。


「で、妹って?ソロ組は俺達3人だけだろ。」

「ああ……それはですねぇ。」

「ヤタさん久しぶりです。」

 アステロイドの言葉を遮るように聞き覚えのある声がする。

 そこに居たのは以前丘陵地帯で出会って助けたハレーだ。


「あらハレちゃん。打ち合わせの方はもういいの?」

「僕は機会を見て撃つだけですから。姉さんの方はどうですか?」

「私たちはこれから打ち合わせ~と言ってもソロ同士だから話し合う事は少なそうだけどね。」

 アステロイドとハレーが仲良さそうに話している。

 あー、もしかしなくてもこれはあれか。


「お前ら姉弟なのか?」

 俺は思わずそう聞く。


「ええそうですよ。私とハレちゃんは姉妹なんです。」

 うん?今微妙にニュアンスが違った気がするが……まあいいや。


「コホン。そろそろ打ち合わせしますよ。ヤタ、アステロイドさん。それとハレーさんはそろそろ戻った方がよいのでは?」

「おう、悪いな。」

「ごめんなさいねぇ。」

「あ、すいません。」

 ミカヅキが不機嫌そうに声をかけ、ハレーが生産職の集まりに戻っていく。


「まあ、打ち合わせと言っても精々自分の戦闘スタイルを教え合うだけですけどね。」

「まあそうだよな。てことは自己紹介タイムか。」

「ですねぇ。」

 というわけで、俺たち三人はお互いに自己紹介をしあう。

 と言っても俺とミカヅキはお互いに面識があるのでアステロイドについて説明するような形での自己紹介だが。


「じゃあまずは俺からだな。俺はメイスでの攻撃だけでなく≪掴み≫や≪噛みつく≫も使った手数で押すタイプだな。今回はとっておきもあるぞ。」

 まあ、俺の戦闘スタイルに関してはこう言うしかない。一応の分類上はメイスの特性上殴りヒーラーとかにもしかしたらなるのかもしれない。

 なお、バーバリアンプレイと言わなかったのは初対面かつ言葉だけで理解してもらうのが難しいからである。


「とっておきですか。私に関しては奇襲、暗殺特化型ですね。他の人がヘイトを稼いでくれればそれだけ動きやすくなると思います。」

 ミカヅキの戦闘スタイルはまあそうだよな。雑魚相手なら一撃必殺だし。

 さて、問題は彼女だな。


「私は防御特化型。と言うのが正しいと思いますねぇ。ウルグルプの攻撃ぐらいまでなら問題ないです。」

 防御特化……ああなるほど。てことは北の山で俺が見たのはやっぱりスキルのレベル上げの最中だったのか。まあ、そうだよな。理由もなしに殴られるのを好む奴なんて早々居ない。

 というか、ウルグルプの攻撃までなら耐えられるって相当だな。どんだけ堅いんだ。


「今回は敵が集団で、突っ込めばタコ殴りにしてもらえると聞いて参加しましたぁ。」

 ……。前言撤回。やっぱり二つ名は伊達じゃないわ。恍惚とした表情でタコ殴りにしてもらえるとか言う人間は絶対に真正でアッチ方面だ。

 ミカヅキもちょっと引いてるし。


「と、とりあえず今日は一緒に頑張りましょうか。」

「だ、だな。」

 俺とミカヅキは内心の動揺を悟られない様に互いに頷く。


「それでは、門の外に行きましょうかぁ。」

「お、おー!」

 そして内心ちょっと不安を抱えつつも俺たちは砂浜へと移動した。

遂に青髪さん正式参戦です。

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