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70:王都ミナカタ-13

「さて、色々作るか。」

 グランシザーを倒した翌日。

 俺は王都に戻ってプライベートエリアで生産活動に勤しむ事にした。


 とりあえず、クロノコンボウを修復して、その後砂浜で回収したワカメ等の海藻類を使ってお酒を造……る。


 ……。


 エロい意味は含まないからな。製法も狩人の水にワカメを突っ込んでかき回すだけの凄く普通の酒だったからな。

 ああ何でだろう。一切疾しいことは無いはずなのにHASOスタッフが微妙にエロいネタを含めたせいでいかがわしい匂いがしてくる。このゲームは全年齢対応だろうが。

 とりあえず出来たワカメ酒は永久にアイテムボックスの中に封印だな。


 でまあ、後は今まで回収して放置していたアイテムを使って適当に酒を造る。で、満腹度の回復量が多い酒に関しては蒸留をすると満腹度の回復量が減る傾向にあるようなので、蒸留せずにそのままアイテムポーチに入れておく。

 【獣人化:ウルグルプ】の満腹度消費は桁違いだったからな。


 と、そうして酒を造っているとユフからフレンド通信が来る。


『ようヤタ。ちょっといいか?』

「何の用だ?」

 俺は酒造りの手を一度止めてユフとの会話に意識を向ける。


『いやな。お前の事を軍曹に話したんだよ。そしたら軍曹が実際にお前の戦いぶりを見たいとか言い出してな。』

「ふうん。それで一体どうしたいんだ?言っておくがベノムッド辺りと一緒に戦えと言われたら断るぞ。面倒だし。」

 ユフの言葉に俺はそう返す。実際ユフたちの進行状況を考えると次はベノムッドだが、ベノムッドの素材はそこまで必要じゃないし、今の俺ならソロでも倒せるだろうしな。


『いや、ターゲットは砂浜と技巧神の神殿の間を塞いでいるボスだな。明日の朝に王都北東の門から生産組を技巧神の神殿まで連れていく用事があって、その時ついでに、という形で実力を見たいらしい。』

「ふむ。」

 うーん。それなら有りかもな。

 掲示板のまとめを見る限りだと狩猟神の神殿はどちらかと言えば少人数向けのエリアで技巧神の神殿は多人数向けのエリアだそうで、それはそれらのエリアへの道を塞ぐボスたちからしてそういう傾向になっているそうだ。

 となれば俺一人で技巧神の神殿へ行くのはそれ相応にキツく、簡単に抜けられるかもしれないこの機会を逃すのは得策ではないだろう。

 ただまあ、行くなら他にも聞いておくべきことがあるな。


「この話。ミカヅキには行ってるのか?」

 とりあえず、これは確認しておかないと今後の付き合い的に拙いだろう。ボス戦を二回も一緒に挑んでおきながら無関係と言うのは厳しいものがある。


『ああ、これから話すつもりだ。それとお前とミカヅキ以外のソロプレイヤー何人かにも話は行ってるな。』

 なるほど。ならもう一つ。


「ドロップ品とかはどうするつもりだ?」

 で、後で揉めないためにもこれも確認しておくべき事だろう。俺とミカヅキだけの時は自分で手に入れた物は自分の物っていう形に自然になっていたから特に気にしていなかったが、大人数で挑むならきちんと明らかにしておくべきだろう。


『ドロップ品に関しては俺の所属しているPTのルールとして、自分で回収したものは自分の物。という形だな。これが一番揉めずに済むから都合がいいんだ。』

 ふむ。なら後でいろいろ面倒な事態になるのは避けられそうだな。


「分かった。その条件なら受けるよ。明日の朝に王都北東の門に集合すればいいんだな。」

『お、ありがとうな。なら明日はよろしく頼むわ。』

「おう。色々と見せつけてやるよ。」

 主に獣人化とか≪噛みつき≫とか、獣人化とかな。


『おう。楽しみに待っているぜ。』

 と、ここで通信が切れる。

 さて、明日ユフたちと一緒に行くとしたら今日は生産活動に勤しむべきか。となるとBドロップメイスの強化だな。


 俺はいつも通りの≪メイス職人≫用の道具とBドロップメイスを取り出す。

 で、強化先としては……砂浜の敵の素材は勿論だが折角だしグランシザーの素材も使いたいな。そうすればクロノコンボウを上回るのは無理だろうが同格ぐらいの武器にはなるだろう。

 と言うわけでシザーメイスという武器を作成する。


①Bドロップメイスの外殻を外して中の液体を捨てる。

②バブルキャットの毛皮を巻き付け、糸(今回はスレッドモスの糸を使用)で縫い付ける。

③グランシザーの鋏の中身をくりぬいてそこにメイスを突っ込む。

④加熱→叩く→冷却の繰り返し。(地味に集中力がいる)

⑤せっかくなので、勝手にグランシザーの棘を取り出して加熱接着する。トゲトゲメイスはエグくて素晴らしい。

⑥バケツの中に液体(最早悪ノリの次元で狩猟蜂蜜のブランデー(発光茸漬け)を使用)を出し、その中にメイスを漬けて吸い込ませる。

⑦最後に軽く炙って、締めのアレンジタイムとしてビッグバットの血を使用。効果が有るのか正直疑問である。


 で、完成品がこちら


△△△△△

Rシザーメイス レア度:3 重量:2 種別:メイス 作成者:ヤタ

攻撃力:142

属性攻撃力:水15

耐久度:100%

グランシザーの強固な鋏を有効活用したメイス。敵を叩いた際に中から液体が噴き出す事によって追加のダメージを与えることが出来る。

アレンジとして棘が付けられているため少し攻撃力が上がっている。

狩猟蜂蜜のブランデー(発光茸漬け)によって少しだけ発光している。

▽▽▽▽▽


 実際に装備するとボンヤリとだが光っている気がする。ただ、この光量だと明かりとして使うのは無理だな。たぶん、本当に光の無い空間でなら目印に使えるレベルだ。


 ま、とりあえずメイスに関してはこのぐらいにしておいて、今日の残り時間は酒造りに費やすか。素材が足りないならちょっと取りに行ってもいいしな。

本当にノクターンに行っても何もないですからね。

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