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68:砂浜-1

本日は2話更新となります。

「ここが砂浜か……」

 俺はガントレットのオッサンとアーマさんの二人と別れると王都北東に広がり、東の海岸と技巧神の神殿の二つと繋がっているエリア。砂浜にやってきた。

 パッと見た感想としてはどこまでも障害物が無く平坦な砂浜が続いており、戦いやすそうなエリアである。

 なお、ユフ曰く採取ポイントは海岸線に分布していて、海藻等が拾えるそうだ。


「ただまあ、夜間だから砂の色とかは分からないな。星は綺麗だが。」

 だが現在は夜間である。そのため昼ならば海水浴に適していそうな光景が見られる砂浜だが、現在は波が寄せては返す音が聞こえるだけで、海と浜の境界は非常に分かりづらくなっている。


「とりあえず東の海岸と繋がるゲートまで向かうか。」

 俺は周囲を見渡して敵やプレイヤーの姿、それにオブジェクトなどを確認するとゆっくりと歩き出した。



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「流石に弱いな。」

 さて、こうして砂浜で戦い始めて最初に感じたのがそんな事だった。


 例えば、今俺の前に体高1m程のヤドカリの様なモンスターが居る。

 こいつの名前はボロウロッジと言い、その殻の堅さから掲示板でも砂浜のザコモンスターの中で最も厄介だと言われている。言われているが……、


「カチカチッ!」

 ボロウロッジが突っ込んでくる。


「よっと。」

 俺はそれを横に避けると反撃として単純にメイスを振り下ろし、そこから2,3度連打する。


「カチカ……」

 するとまあ、これだけでボロウロッジは倒れてしまう。

 いやまあ、順路的に言えば丘陵地帯の前に来てもおかしくない場所だしな。そこにマンティドレイクを倒せるレベルの武器を持って来ているんだから当然と言えば当然の光景なんだが。

 加えてボロウロッジって恐らくだけど物理的な防御力は高いけど、属性的な防御力は低そうだからな。それもあるかもしれない。


「ま、それでも素材は美味しいけどな。」

 俺は剥ぎ取り用ナイフでボロウロッジの体を突く。


△△△△△

ボロウロッジのみそ レア度:1 重量:1


ボロウロッジのみそ。酒のつまみとしてどうぞ。

▽▽▽▽▽


 とまあ、こんなアイテムが手に入る。

 他にもボロウロッジの甲殻なども手に入り、こちらはBドロップメイスの強化素材として使うことが出来そうな素材である。

 この調子ならボス素材も含めればそれ相応の強化が施せそうである。


「さーて、適当に≪四足機動≫も使ってみるか。」

 俺はメイスを腰に戻し、両手を地面に着く。そしてその状態で≪嗅覚識別≫を意識して使用。近くに居るモンスターの位置を確認する。

 うん。11時の方向にモンスターが居るな。


 俺は両手両足を使って地面を一気に蹴り上げて駆け出す。継続的な素早さとしては普通に走るよりも今は劣るが、瞬間的な速さを求めるなら今でも≪四足機動≫の方が普通に動くよりも速い。

 と、敵の姿が徐々に明らかになる。その敵は全身から水泡を生み出している猫のような生物で、確か名称はバブルキャットと言ったはずだ。


「フシャー!」

 バブルキャットも俺に気づいたのかこちらの方を向き、水の弾を飛ばしてくる。

 だが、≪四足機動≫を使っている俺にとってこの程度の弾幕はヌルい。俺はある時は手を使って身を翻し、ある時は四足全てを使って横に跳び、通常状態では決して出せない敏捷性を持って左右に小刻みに動いてバブルキャットに接近する。


「【ウルフファング】」

「ニャ!?」

 そして接近できる場所まで接近した所で【ウルフファング】を発動。バブルキャットの頭部を二度噛み、追撃として両手で上へと投げ飛ばして落ちてきたところにメイスを一閃してやる。

 まあ、当たり前の様に瞬殺である。

 ここまで瞬殺だと武器だけでなくスキルのレベルが高いおかげという考え方も出来そうだ。


 実際、砂浜に来てから≪四足機動≫以外のスキルのレベルが上がる気配が無いからなぁ……


「ん?アレはプレイヤーたちか。」

 と、ここで俺の目に砂浜から離れた場所で屯しているプレイヤーの集団が目に入る。

 だが、彼らと俺の間には海が広がっており、その流れは他の場所と比べると激しめだ。


「あー、つまりあそこが技巧神の神殿の入り口か。」

 技巧神の神殿の入り口は時間などの複数の条件が組み合わさって生み出されると言う。つまり、ここで待っていればその内道が現れるのだろう。


「ただまあ、ここにあるって知らなければ偶然に気づくしかないよな。」

 対岸に居るプレイヤーたちがまるで海の中に入っていくかのように消える光景を見て思わず俺は呟く。

 プレイヤーたちが居なくなると周囲に目印になるようなものは無く、強いて目印になりそうなものと言えば一見するとただのオブジェクトにしか見えない石の塔。インスタントポータルぐらいである。

 これは発見されるまで時間がかかったのも納得である。


「と、さっさとボスゲートに向かうか。」

 俺はここでいつまでも待っていてもしょうがないと判断すると、不意を突いて襲おうとしたスナハミーと言う砂の中に隠れて奇襲攻撃を仕掛けるモンスターを返り討ちにしつつ東の海岸と繋がっているボスゲートへと向かった。


 そして俺の前に現れたボスゲートの色は……紫だった。

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