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63:樹林回廊-5

 ウルグルプを倒した俺はクロノコンボウの修理を済ませると狩猟神の神殿へと戻ってきていた。

 もちろん、戻ってきた理由は蟷螂竜に挑むためである。


「あ、ヤタですか。」

 と、神殿の外に出た俺に樹林回廊から戻ってきた直後と言った様子のミカヅキが声をかけてくる。


「ようミカヅキ。俺は今夜にでも挑むつもりだが、お前はどうするよ?」

「勿論行きますよ。十分にレベルは上がって装備も整えましたから。」

 ミカヅキは自慢げな顔でそう言う。

 今のミカヅキの装備はスレッドモスとヴァンプスパイダーの糸を中心に作られた黒と赤が入り混じった忍装束の様な防具と、ウタタネビートルの角を加工したと思しき水色の戈となっている。


「なら今夜あたり。」

「ええ、一緒にリベンジと行きましょう。」

 そして俺とミカヅキはPTを組んでボスゲートまで一緒に向かう事にした。



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「そう言えば蟷螂竜について掲示板でだいぶ騒ぎになっていましたね。」

 樹林回廊を警戒しつつも歩いている俺にミカヅキが話題を振ってくる。


「そうなのか?」

「ええ、明らかに今までとは格が違う。勝てる気がしない。同盟込みのフルメンバーで挑んだら5分で壊滅した。再戦したら今度は3分で殲滅された。等々色々な話が出ていますね。」

 まあ、確かに蟷螂竜の強さはヤバいよな……。

 何がヤバいってあの突進切り……というか居合抜きがヤバい。他の攻撃もヤバいが特にあれが問題だと思う。


 なにせ、距離があれば積極的に使って来ると言うのは行動予測がしやすくなって良い点ではあるけど、アレはあまりにも攻撃スピードが速すぎて紙一重で避けると言う戦術は使えないし、距離も離されやすいから行動が予測できても殆ど意味がない。


 正直、アレをどうにかしないと安定して勝つのは無理だと思う。


「まあ、攻略組も出張ってるなら対策とかももう考えられているんだろうな。」

「一応そのスレでの結論としては事前動作を見たらとっとと逃げろ。と言うような消極的な対策ですが出ていましたね。」

 ミカヅキは呆れたような表情でそう語る。

 というか何気にミカヅキも結構な戦闘狂(バトルジャンキー)だよな。ベノムッドの時もそうだったけど、意外と戦いに積極的だしな。


「消極的な対策ねえ。ならミカヅキは積極的な対策を思いついているのか?」

「ええ一応は。ただ、所有しているスキルの関係上やるのはヤタですけど。」

 俺たちの前にプロレスベアが現れ、ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。


「『俺がやるのか』!」

 俺は≪大声≫でプロレスベアの注意を引きつけつつもその動きを慎重に見極め、いつでも攻撃を避けられるようにする。


「グマー!」

 プロレスベアが突っ込んでくる。が、攻撃の構えを取ったところで、


「【スリープスイング】」

 プロレスベアの後ろにいつの間にか潜り込んでいたミカヅキが祝福が込められた戈でプロレスベアの後頭部を一撃。その追加効果によって昏睡させる。


「ヤタ。」

「分かってるよ。【ダークスイング】」

 そして俺は静かに寝息を立てているプロレスベアに接近。その頭に【ダークスイング】による一撃を全力で放って粉砕する。

 うん。流れるようなコンビネーションだな。スキル相性もいいんだろうが、俺たちの考え方も上手く噛み合っているっぽい。


「じゃ、剥ぎ取って先を急ぐか。」

「ですね。」

 そして俺たちはプロレスベアからアイテムを剥ぎ取ると樹林回廊の奥へと向かった。



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「人が多いな……。」

「そうですね……。」

 あの妙な気配の漂う樹まで来ると俺たちの目の前に何十人と言うプレイヤーが居た。

 どうやら彼らは攻略組であるらしく、何かを真剣に話し合っている。


 まあ、俺たちには関わり合いの無い事なので、俺たちはここで夜になるまでゆっくりと時間を潰すつもりだし、こちらから関わろうとしなければ向こうも絡もうとはしてこないだろう。


 と、話し合いが終わったのかプレイヤーたちが一斉にボスゲートの方へと歩いていく。

 向かうプレイヤーたちの顔は全員やる気満々……と言いたいところだが殺気に当てられているのか数人の顔色は良くない。

 それから幾人ほどは俺たちの方に顔を向けて微妙な表情を見せるが何か俺たちの格好等に妙な点などはあっただろうか?


 まあ、あの人数で対策も有るのなら一方的にやられたりはしないだろうし、しばらくは時間つぶしも兼ねて蟷螂竜攻略スレにでも張り込んでおくか。


 十数分後。


「第n次討伐隊。討伐失敗。ね……。」

「やはり相当な強さですね。」

 蟷螂竜攻略スレには先程俺たちが見たと思しきプレイヤーの集団が敗れたという報告が上がっていた。

 スレを見る限りではやはりあの居合切りが問題なようで、あまりにも多くのメンバーで挑むと味方同士で詰まって開幕の居合切りを避けられない上に、遠くのメンバーがターゲットされると居合切りを使われてしまって近接職が攻撃をする暇が無くなる。

 そのため次は全員近接or遠距離の二極化かつ6人ほどの少人数PTで挑む予定だそうだ。後は、一人だけ≪挑発≫持ちにし、他は全員≪隠密≫持ちにする。という戦法も提案されていた。

 まあ、確かにその辺が適当だろうな。


「で、ミカヅキよ。俺らは例の積極的な対応を使う。ってことで良いんだよな。」

「ええ。大変な役目を押し付けることになりますがよろしくお願いします。」

「任された。」

 さて、少しずつ日は傾き、徐々に辺りは暗くなってきている。

 そろそろいい時間帯だろう。


「じゃあ行くか。」

「行きましょうか。」

 そして俺たちは階段を上り、その先で激しく色を変え続けるボスゲートをくぐった。

次回ボス戦になります。


09/11誤字修正

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