6:東の海岸-3
「いやー、食った食った。」
結局、目的とする技能石はフライフィッシュからは5匹目で、オオシオマネキからは14体目で手に入った。
もちろん、たくさんの魔物を狩ったおかげで技能石以外にも色々な素材が手に入ったし、狩る際には出来る限り多くのスキルが発動するような戦い方をしていたからスキルのレベルも上がっている。
というかオオシオマネキうめぇ。スキル的にも素材的にも食事的にもうめぇ。
同時に2体に襲われた時は片方を投げては逃げを繰り返してヒイヒイ言いながら無理やり倒したけど。
ま、それはさておいてユフに言われたとおり技能石を2個手に入れたわけだし、入口に戻って合流するか。
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「ようヤタ。初めての狩りはどうだったよ?」
「三重の意味で旨かったな。」
俺の返答にユフは良かったなーと返してくる。
「で、質問なんだけど技能石を使って取るのにオススメのスキルとかあるか?」
俺は折角合流したのだからとどういうスキルがオススメなのかを聞いてみる。まあ、バーバリアンプレイをする上で必要そうなスキルの調査は済んでいるから、その中でユフの言う条件に一致した物を取るけどな。
「イロモノプレイをしている奴に俺から言うことは無い!と言いたいところだがイロモノプレイをするにしても普通のプレイをするにしても取っておくべきスキルはあるな。それは…」
「それは?」
「サブの職人系スキルだ。」
俺が一瞬何で?と言った表情を浮かべるとすぐにユフがサブの職人系スキルの必要性を教えてくれた。
サブの職人系スキルと言うのはHASOユーザーの中でいつの間にか出来ていた分類なのだが、簡単に言えば職人系スキルの中でも武器や防具、薬などの攻略に直接関わるアイテムを作れるスキルではなく、紐や採掘用のピッケルなどの一見すると攻略には直接の関わりが無いアイテムを作れるスキルの事である。
だが、勿論と言うべきだが、意味も無くこういうスキルが用意されているわけではない。
中にはこれらのサブ職人系スキルで作れるアイテムを用いなければ入手できないアイテムや、武器や防具の生産に必要なアイテムがこれらのスキルで作れることもある。中には武器などを作る時に+の補正を掛けられるようにする特殊なアイテムも作れるらしい。
「でだ、当然俺たちが今使っている武器にしてもその内サブの職人系スキルで作るアイテムが必要になるわけだが、その際に自分のスキルで作ったアイテムが自分の武器の強化に用いれなくても別に悲観する必要は無い。別の誰かがそのアイテムを求めているはずなんだから物々交換をすればいいだけの話だ。」
なるほど、流石はMMO。他のプレイヤーとの交流は大前提か。
そう言う仕様なら確かに俺みたいなイロモノプレイヤーも、ユフのような一般プレイヤーもそういう物は持っておかないと色々と不便な事になりそうだ。
ただまあ、最前線で攻略するギルドとかになるとサブの職人系まで含めて全部バックアップされていそうだけどな。
「まっ、β版だとサブが無くても
「だな。そうさせて貰うよ。」
俺はアイテムポーチとは
さて、ここで技能石について説明しておこうか。
まず技能石はプレイヤーが新しいスキルを取得する際に必要なアイテムで、廃棄・譲渡・売却が不可能である。また、一般のアイテムとは別の場所で保管されるアイテムでもある。
そして技能石は各プレイヤーがボスも含めて一種類の敵につき一個まで手に入れられるようになっている。この技能石の入手確率は敵の種類によって違うのだが、最初の五個に関しては補正がかかって入手しやすくなっている。
で、技能石を使った結果として俺のスキル構成はこんな風になった。
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Name:ヤタ
Skill:≪メイスマスタリー≫Lv.2 ≪メイス職人≫Lv.1 ≪握力強化≫Lv.2 ≪掴み≫Lv.3 ≪投擲≫Lv.1 ≪噛みつき≫Lv.3 ≪鉄の胃袋≫Lv.1 ≪酒職人≫Lv.1 ≪筋力強化≫Lv.1
空き枠3
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まず≪酒職人≫はその名の通りお酒を造れる職人系スキルである。製造元はまあ芋とか果物が主流だと思う。糖分さえあれば大抵のものはお酒に出来る気もするが。
で、≪筋力強化≫は強化系スキルの一つで身体全体の筋力を強化して、攻撃力、素早さ、握力、咬筋力その他諸々を強化してくれるスキルである。ただ、効果範囲が身体全体に及ぶ分だけ≪握力強化≫の様な一点強化のスキルよりも一つ一つの部位に与える効果は低くなっている。
まあ≪酒職人≫の取得理由に関しては、
「よし、スキル取得完了。」
「結局、サブは何を取ったんだ?」
「≪酒職人≫。」
「あれか。バーバリアンっぽくどぶろくでも作るのか。」
「まあそんなところだな。」
こんな理由である。
「さてと、ヤタもスキル取得をしたみたいだし食事とアイテム識別を兼ねて村に戻るか。」
「ん?食事にアイテム識別?」
「HASOはしっかりと満腹度が設定されていて、満腹度が減ると走ったりするのに使うスタミナの最大値が減るんだよ。で、アイテム識別に関しては村にかかっている祝福の効果によって外では未識別だったアイテムの正体が分かるようになるんだよ。」
「へー。」
ちなみに俺の満腹度に関しては≪噛みつき≫のおかげであまり減っていない。やっぱりオオシオマネキは美味しいな。
後、アイテム識別に関してはあくまでも村の中限定の祝福のため、手に入れたアイテムを村の中に置いていくと、外で再び同じアイテムを入手しても未識別の状態で手に入ってしまうらしい。厄介な。
そして俺とユフは村へと戻っていった。