<< 前へ次へ >>  更新
53/249

53:狩猟神の神殿-2

「あー……日差しが気持ちいい……。」

 狩猟神の神殿に戻ってきた俺が最初に上げた感想がそれだった。

 いやまあ、言い訳をさせてもらうなら樹林回廊は木漏れ日レベルでしか日差しが無かったし、下層部に至っては光るキノコ以外の光源が無かったからね。

 ちなみに現在は夕方なのでもうすぐ日暮れである。

 で、


「相変わらず人影はない。と、」

 狩猟神の神殿だが相変わらず巫女以外の人影は無かった。

 まあベノムッドは夜に紫だったからな。恐らく朝や昼だとゲートの色が赤や血赤になっているだろう。それにループエリアを抜ける事も考えると……攻略組が来るのは恐らく明日以降の話だろう。


「とりあえず狩猟神の蜜月を置いて一眠りするか。」

 そして俺は神殿のプライベートエリアに入るとボックスの中に狩猟神の蜜月を入れて眠りについた。



---------------



「ふあああぁぁぁ~~~」

 目を覚ました俺がプライベートエリアの外に出ると辺りはすっかり暗くなっており、十人ちょっとのプレイヤーが神殿前の広場に屯していた。

 ふうむ。時計が無いから正確な時刻は分からないが、夜明けまで後、3,4時間ぐらいか?

 このタイミングで到達したという事は恐らくこいつら攻略組だな。


「よう。アンタがベノムッドを初討伐したプレイヤーか?」

 広場に居たプレイヤーの一人。金髪碧眼の刀使いが俺に声をかけてくる。

 何となくだがこいつとは反りが合わない気がする。


「正確には俺ともう一人いるけどな。それがどうした?」

「いやなに。どうせこの先のエリアにももう立ち入っているんだろ?なら中の様子を教えてもらえないかと思ってな。」

 ニヤニヤと笑いながら刀使いは喋り続ける。うわ、すっげぇ殴りてえ顔してるわ。

 まあ、樹林回廊について多少の情報を流すぐらいなら別にいいか。


「とりあえず。俺はこの先のエリアに関しては樹林回廊って呼んでる。で、そうだな……とりあえず下に落ちない様に気を付けた方がいいとは言っておく。」

「はあ?どういう意味だそりゃあ?」

「行けばすぐに分かるさ。」

 俺はそこで話はお終いだと言わんばかりにポーズをとる。


「ふーん。にしてもコンビでここまで来れるってことは相当いい腕してるってことだよな。もしよければ……」

 ああなるほど。こいつらの本当の目的はこっちか。確かに俺をPTに入れればこの樹林回廊に関する大体の情報は手に入るもんな。


「お生憎様。俺は基本ソロで、ベノムッドを倒す時の相方もそうだ。悪いがPT勧誘はするだけ無駄だよ。」

「そうか……。」

 ただまあ、俺もミカヅキもソロ主体のプレイヤーだし、樹林回廊に関しては下手に大人数で挑んでもやりづらいだけだしな。今PTに入る意味は無い。

 強いて言うならボスが手に負えない強さだった場合に臨時のPTを組むぐらいだけどその頃にはユフも来ているだろうしな。だから余計にこいつらのPTに入る必要性は感じない。


 ゆっくりと刀使いが元の集団に戻っていく。何となくだが、チンピラ的な歩き方で態度が悪い感じがする。

 うーん。そういやミカヅキって今どこに居るんだ?アイツ夜間の方が強いから今の方がむしろ起きてるだろうし連絡をしておくか。


 俺はプライベートエリアに戻ってメニュー画面からミカヅキへとフレンド間の通信でコールをする。


 コール1回…2回…3回…おっ……


「ミカヅキ今大丈夫か?」

『ヤタですか。今は非戦闘中なので問題ありませんがどうしました?』

 コールに出て来たミカヅキの声はどことなく不機嫌である。

 うーん。タイミングミスったか。まあ、用件が用件だし速いところ伝えておくか。


「狩猟神の神殿に他の攻略組が到達してPTに誘われた。ただ、そいつらの態度と言うか雰囲気が何となくよくない感じがするんだよな。あくまでも俺の主観だけどさ。」

『……。』

「そういう訳で今、エリアに出ているならしばらくは神殿に戻ってこない方がいいかもしれない。」

『なるほど。ありがとうございます。そう言う事ならしばらくはこちらに居ますね。何かあったらまた連絡お願いします。』

「ああ分かった。」

 そしてミカヅキとの通信を俺は終了する。

 なんて言うか気にし過ぎなのかもしれないけど、あの連中は恐ろしくウザいタイプな気がするんだよな。俺も今後は可能な限り関わらないようにしておこう。

 もしかしたら前にミカヅキが言っていたしつこくPTに入るよう迫ってきた連中かもしれないしな。


 ま、そんな面倒な奴の事は置いておいて武器の修理と蜂蜜酒の作成に移るか。

 と言っても武器の修理はいつも通りにそこら辺で拾える修復石を使って耐久度を回復させるだけであり、蜂蜜酒は狩猟蜂の蜜と狩人の水をいつも通りに混ぜ合わせるだけだけどな。

 うん。狩猟蜂の蜜はいい感じの色合いに匂いだな。これならいい酒が出来そうだ。



--------------



 うし。完成。元々現実にも存在していたものだから作成は楽だったな。


△△△△△

狩猟蜂の蜂蜜酒 レア度:4 重量:1


狩猟蜂の蜜から作られた蜂蜜酒。通常の蜂蜜酒よりも更に甘いが、その分味わいもコクも深まっている。

呑むと満腹度+15% 低確率で酔い。

▽▽▽▽▽


 普通の食料アイテムだけどまあいいだろう。

 で、とりあえずもう1本作製しておいて片方は薬草漬け込みにしておく。

 狩猟神の蜜月は……もう少し職人系スキルのレベルが上がってから扱うようにしておこう。今のレベルでレア度7の素材が扱いきれるとは思えない。


 さて、神殿でやるべきことはやったし。もう一回樹林回廊の探索をしてくるか。今度は孤立した枝に行っても問題なく戻れるといいなぁ……。

あくまでもヤタの主観です。

<< 前へ次へ >>目次  更新