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41:丘陵地帯-4

「よ、ヤタ。」

「おはようございますヤタ。」

「お、二人ともおはよう。」

 王都から出て丘陵地帯に来た俺にユフとミカヅキが声をかけてきた。


「二人揃って何でこんなところに?」

「今日はここでレベル上げと素材回収をしようと思っていてな。」

「それで、貴方が来るのを待っていたんです。」

「?」

 二人の言葉に俺は頭の上に疑問符を浮かべつつ事情を聴く。


「ん?お前気づいてなかったのか。」

「ここに出現する魔物は倒し方によってドロップ品が変化するようになっているんです。」

「あー、そう言えばそうだな。」

 ミカヅキの言葉に俺は何故かランスビーフとシュートホースの二種類だけ、他の四種類と違って5種類のアイテムをドロップしたことを思い出す。

 ただ、ソロ狩りをしていた関係でどれが条件ドロップなのかは分からない。まあそれはしょうがないな。


「で、俺は他の奴と組んでもよかったんだが……、」

「私は普段ソロで、ユフさん以外の攻略組はその殆どが私と特定のPTを組みたがっていてそれが嫌だったんです。」

 ああなるほど。なんだかんだでHASOも男性向けであり、女性プレイヤーの数は少ないもんな。

 PTに一人ぐらい華は欲しいよな。


「ただそれだと手に入らないアイテムがあったので、今回はユフさんと、それにヤタにお願いしようと思ったんです。」

「それにどうせ俺には丘陵地帯の調査があり、お前には新装備の確認とかがあるしな。」

 なるほど。そう言う事なら断る理由は無いな。


「了解。ならPT申請頼む。」

「分かった。っと。」

 そして俺はユフとミカヅキの二人と一緒に丘陵地帯での狩りを始めることとした。



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 三人での狩りは俺の予想以上に効率よく進んだ。


 まずカットチキン。


「【ハウリング】!『ウオオオオオォォォォン!!』」

 俺は【ハウリング】を起動し、効果が強化された≪大声≫でこちらに向かって飛んでくるカットチキンを怯ませて止める。


「【スイングサークル】!」

「コケッ!?」

 そして動きが止まると同時に俺の後ろから死角を突くように飛び出したミカヅキが【スイングサークル】という自分の回りを薙ぎ払って攻撃する祝福を発動。

 的確にカットチキンの首に戈を叩き込んで倒す。


 これが最も基本の戦闘パターンで、他にも状況次第でユフが両手剣で攻撃を防いだところにミカヅキが攻撃したり、俺が≪投擲≫で小石を投げつけて動きを止めた所でミカヅキが攻撃して倒すというパターンもある。

 で、肝心の特殊ドロップはこんな物だった。


△△△△△

カットチキンの卵 レア度:3 重量:1


カットチキンが産む卵。堅い殻に守られたその中身は栄養がたっぷりである。

食べると満腹度+1%

▽▽▽▽▽


 まあ、武器や防具には使えそうにないが、コッチミンナに渡せば目玉焼きとかを作ってくれるかもしれない。


 で、その後もスタンプボアは俺が【ウルフファング】の二度噛みで正面からダメージを与えつつ、ミカヅキが死角から後ろ脚を攻撃、動きが完全に止まったところでユフが【スイングダウン】を発動して首を切り落として倒し、特殊ドロップはスタンプボアのハラワタだった。

 ソーセージでも作れという事か。


 最後にランスビーフはユフが動きを止める役割となり、ミカヅキが急所攻撃で削り、俺が【スイングダウン】で頭に向かってメイスを叩きつけることによって倒した。

 特殊ドロップはランスビーフの乳だった。


「というかもしかしなくても特殊ドロップってみんな食べ物なのか?」

「この丘陵地帯に関してはそうなのかもな。」

「もういっそのこと肉の丘とでも名付ければいいと思います。」

 俺の感想に二人も同意を示してくる。

 それにしても肉の丘か、考えてみれば出現する全てのモンスターが肉を落とすんだもんな。 

 ぶっちゃけそう言っても違和感が無い気がする。


 と、ここで俺は少し気になったことがあったので戦いながらもユフに聞いてみる。


「そう言えばユフよ。今、攻略ってどこまで進んでるんだ?」

「攻略組か?今は皆灯台のイベントを見てから今までボスゲートが見当たらなかった西の森と北の山でのボスゲート捜索。それに東の海岸と王都北東の海岸…通称砂浜のボス討伐と、ここの調査。後はレベル上げの6パターンに別れてるな。」

 ユフがカットチキンの攻撃を防ぎつつ俺の質問に答えてくれる。


「東の海岸のボスっていつの間に見つかったんですか?」

 ミカヅキがカットチキンに止めを刺しながら質問を繋げる。

 それにしても本当にミカヅキは隠密からの奇襲が上手いな。成功率8割超えてんじゃねえか?


「俺も詳しい事は知らない。ただ、東の海岸と砂浜のボスゲートで出現するボスが同じなもんで、『始まりの村-東の海岸-砂浜-王都』っていうルートになっているんじゃないかって言われてるな。だから並列で砂浜の調査も他の所と同じように進められている。」

「なるほどな。それにしても一体丘陵地帯のボスゲートはどこにあるんだろうな?もう一通りは回ったと思うんだが。」

 俺はカットチキンから素材を剥ぎ取りつつ周囲を見渡す。


 丘陵地帯は所々に木や茂みがあり、後はちょっとした丘や平原が所々に存在しているエリアだ。

 ボスゲートは明らかに周りとは違うので、こうして一通り回っても見つからないという事は多少特殊な場所にあると考えるべきだろう。


「私の≪見識≫に妙なものは映りませんし……」

「俺の≪気配感知≫もダメだな。」

「≪嗅覚識別≫にこういう事を求めるのはちょっと酷だよな……」

 が、こういう隠された物を見つける時に力を発揮してくれるそれらのスキルには反応無し。

 ただMMOの性質上、スキル構成によって進めやすさに差は出ても、進められない。という事にはなっていないと思うんだけどな。


「ん?」

「どうした?」

「ちょっと待ってくれ……」

 と、ここで俺の鼻が一瞬だけ妙な匂いを嗅ぎ分ける。

 芳しく、ちょっと酸っぱく、様々な獣の体臭と排泄物が入り混じった臭い。一瞬だがそんな感じの匂いがした気がする。


「こっちか?」

 俺は慎重に匂いを嗅ぎ分け、その出元を探る。

 その先にあったのは小高い丘が途切れて出来た崖の壁。そこに置かれた大岩の部分で臭いは途切れている。


「岩?」

「この岩がどうした?」

「あれ?この岩何かが描かれていますね。」

 今度はミカヅキが何かに気づく。どうやら俺とユフには見えていないがこの岩には何かが刻まれているらしい。


「どういう事だ?」

「さあ?」

 俺とミカヅキが岩を前に頭を傾げる。

 ここに岩があり、RPGの定番ならこの奥に洞窟か何かが繋がっていると考えるべきなんだろうが、こんな岩を早々にどかせるとは思えないしな。


「うーん。情報が無さすぎるな。一応、攻略組のまとめ役をしている人にここの場所とか伝えてもいいか?」

「ああ頼む。俺にはこの岩が何かはさっぱり分からない。」

「私もです。今の時点で何かが出来るわけでもないようですし。」

 ユフの提案に俺とミカヅキは同意し、ここに関する情報を攻略組に流してもらう事にする。

 ゲーマーの勘だが、こことこの奥は3つの神殿とやらに関わりがある部分なのだろう。きっとそうに違いない。

 なら、


「うーん。明日は西の森に行ってボスゲートを捜してみるか。」

「どうしてそうなるんですか?」

「何となく神殿てのは新しいエリアにある気がするから。」

「ま、好きにすればいいんじゃないか?今日はここを発見できただけで儲けものだし、お前もミカヅキもソロプレイヤーなんだしよ。」

「だな。」

「……。」

 そして、その日は日が暮れる前に俺たちは王都に戻ったのであった。

PTプレイしてるとバーバリアンスイッチが入らない……。

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