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40:王都ミナカタ-7

「ふふふふふ。さあ。ヤタ!これを着るである!!」

 神殿の外に出てガントレットのオッサンを捜そうとしていた俺に対して先にガントレットのオッサンから話しかけてきた。

 その目は若干血走っており、心なしか目の下に隈が見えている気がする。

 そしてその後ろでは若干黒いがアーマさんが微笑み続けている。

 うん。なんというか二人とも怖いな。多分だけど、二人とも寝る間を惜しんで知り合いの職人にも協力を呼びかけて現時点で最高品質の物を作り上げてくれたんだろうけど怖い事は怖い。


「まずはこれである!」

 そう言って俺に向かって籠手を出してくる。

 籠手の名前はシュートアーム。シュートホースの素材を中心に作られた籠手で、俺が今まで使っていたウッドガントレットと同じく右腕は最低限の防具にして機動性を確保し、左腕は普通の籠手を使うよりも大きなものを掴めるように大きくなっている。

 ただ一番の特徴は爪の部分がシュートホースの蹄となり、肩の部分に馬の顔の模様が彫られているところだろう。おかげで見た目的にもだいぶ良い物になっている。


「そして続けてこれとこれである!」

 次に出て来たのは腰装備と脚防具。どちらもウルグルプの素材を基本に作られたもので、名前はウルグルプベルトにウルグルプグリーヴ。ベルトの方は狼をそのまま腰巻にしたような形をしており、グリーヴの方は膝と脛、踵を重点的に厚くすることで防御力を高め、足の先には地面をしっかりと捉えられるように爪が付けられている。


「ふふふ。それに加えてこれも着てもらうわよ。」

 そう言ってアーマさんが胸元が大きく開かれた毛皮のベストを渡してくる。どうやらこちらはスペルゴートの毛皮製らしく、様々な色が入り混じっているのが特徴的だ。名前はスペルゴートベスト。

 勿論、一見すると毛皮をそのまま服にしたかのようだが、裏地には別のモンスターの皮が加工した上で使われている。

 この時点で俺の外見は左腕が大きく、それ以外は毛皮をそのまま利用したような実にワイルドな外見となっている。


「そして首にはこれを着け、」

 ガントレットのオッサンが俺の首にクロスシープの毛を紐にしたものにランスビーフの角を削った物やカットチキンの羽根を通したネックレス。ビーストネックレスを着ける。


「頭にこれを被せ、」

 アーマさんがウルグルプの頭をそのまま加工したかのように見せ、実際にはクロスシープの紐やランスビーフの革を組み合わせた防具。ウルグルプヘッドを俺の頭に被せてくる。


「で、最後にこれを嵌めてもらって、」

 最後にアーマさんが二つの指輪を俺に手渡し、俺はそれを右手の人差し指と中指に嵌める。指輪の名前はスペルゴートリング(青)とスペルゴートリング(赤)。どうやら対応した属性の攻撃力と防御力を高める力があるらしい。


「完成である!」

「完成ね!」

 そして出来上がった俺の姿は異様に大きな左腕に獣の素材をそのまま防具に仕立て上げたかのような姿。つまりは蛮族ここに極まりと言ったような姿をしていた。


「何て言うか……ただ素材を持ってきただけでこんなに良い物を作ってもらっていいのか?」

 俺は明らかに攻略組でもトップの連中が着けるべきであろう防具一式を見て思わずそう呟く。

 というか、どう考えても俺の素材入手にかけた手間に対して、出来上がった防具の出来が釣り合っていない気がする。


「別に構わないであるよ。」

 と、俺の困惑を理解してくれたのかガントレットのオッサンがそう言ってくれる。

 ただ、理由も無しに納得できる出来じゃねえぞこれは。


「今回ヤタが持ち込んでくれた大量の素材のおかげで吾輩たちのレベルが上がっただけでなく、職人同士で生産のラインを形成することが出来たである。特に職人同士のラインは単純な金銭的な報酬や経験値を得るよりも将来的には旨味が大きいのである。」

「おまけに本来ならそう言ったラインを形成するためにもお金や素材が必要になるんだけど、ヤタ君が余った素材は好きにしていいと言ってくれたおかげで私たちの懐はまるで痛まなかった。」

 ああなるほど。裏にはそう言う理由があったのか。

 俺は二人の言葉に納得する。

 と、そこで二人は更に言葉を続ける。


「まあ実際の所、」

「依頼されたからには最高の物を作り上げるのが職人の性ってものじゃない。」

 ああうん。その方が下手な理屈よりもよっぽど納得できるわ。そうだよね。職人ってそういう物だよね。


「さあヤタよ!行くである!」

「目指すは最強の蛮族よ!」

「お、おーーーー!」

 そして二人の徹夜明けだと思しきテンションに若干引きつつも俺は二人に送り出される形で王都の外へと向かうのであった。



△△△△△

Name:ヤタ


Skill:≪メイスマスタリー≫Lv.8 ≪メイス職人≫Lv.5 ≪握力強化≫Lv.6 ≪掴み≫Lv.7 ≪投擲≫Lv.6 ≪噛みつき≫Lv.7 ≪鉄の胃袋≫Lv.4 ≪酒職人≫Lv.6 ≪筋力強化≫Lv.5 ≪嗅覚識別≫Lv.5 ≪大声≫Lv.4 ≪嗅覚強化≫Lv.4


ストック技能石×1

▽▽▽▽▽


△△△△△

Name:ヤタ


Equipment:攻撃力:140 防御力:38+水2+火2+風1+土1

武器:ボアノーズ 【スイングダウン】

頭:ウルグルプヘッド 【ハウリング】 【ウルフファング】

首:ビーストネックレス

胴:スペルゴートベスト

腰:ウルグルプベルト

腕:シュートアーム 【ストライクスロー】

脚:ウルグルプグリーヴ

指輪1:スペルゴートリング(青)

指輪2:スペルゴートリング(赤)


控え武器

Bドロップメイス+1 121+水5 【ヒール】

コヒツジジュウジ 130+光5 【ヒール】

▽▽▽▽▽

職人だもの。手なんて抜きません。


08/23 誤字訂正

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