36:王都ミナカタ-3
日曜日なので本日は2話更新となっています。
なので、前話を読まれていない方はまずそちらをどうぞ。
「うし。何とか帰って来れたな。」
「ですね。」
さて、昼過ぎ頃に俺とハレーは無事に王都に到着した。
「ただ明らかに昨日よりも人が多いな。」
で、俺もハレーも今日は生産活動に専念する=神殿のプライベートエリアに籠るつもりのため、一緒に神殿に向かっているのだが、明らかに人通りは昨日よりも多い。
「恐らく、僕と同じように攻略組に連れて来てもらった生産組や、準攻略組とでも言うべき人たちがウルグルプを倒して王都に来たからだと思います。」
「まあそうだよな。俺だって攻略組じゃねえのにこうして王都に来ているわけだし。」
「えっ!?ヤタさんって攻略組じゃなかったんですか!?」
失礼な。俺はさっきの区分で言えば準攻略組だぞ。というか俺みたいなイロモノが攻略組に混じれるわけ無いだろうが。
さて、そんなこんなで俺とハレーは神殿前まで移動し、ハレーとフレンド登録をしたところで別れる事となった。
で、少し周りを見渡すと見知った顔と頭の上に出た武器を俺は見つけた。
「よう。ミカヅキ。」
「ヤタですか。久しぶりです。」
ミカヅキが近づいてくる。
と、更に後ろからユフにガントレットのオッサン。それにアーマさんも近づいてくる。
「よっ!ヤタ。お前この子と知り合いだったのか。」
「しばらくぶりであるな。」
「ヤタ君。良い素材持ってたら防具作るわよ。」
それぞれがそれぞれに声をかけてくる。
「おう。三人もしばらくぶり。」
ここで俺は今の自分の手持ちのアイテムの量と話すべき事。それに四人のスキルの傾向を思い出す。
「四人ともちょっと話したい事もあるし、俺のプライベートエリアに来てもらってもいいか?」
「ん。いいぞ。」
「分かりました。」
「良いである。」
「いいわよ。」
俺の提案に四人は頷き、そして俺たち五人は俺のプライベートエリアに入った。
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「他のプレイヤーの部屋も代わり映えしませんね。」
「まあ、この辺は一部のプレイヤーだけが気にする物だしな。」
「ほっとけ。」
俺のプライベートエリアに入ってきたて最初に言われたのがそんな言葉だった。
まあ、実際俺は戦闘メインの上に結構外で夜を過ごす事も多いからな。おかげで内装にこだわる気は起きなくなった。
「で、話ってのはなんだ?」
「ああそうだったな。」
と言うわけで、俺は今朝ハレーと一緒に遭遇した灯台のイベントについて話す。
「そんな事があったのですか。」
「ああ、多分だけど武と技に優れしとか言ってたし、今考えると武器系スキルと職人系スキルのレベルが関係しているんだと思う。」
「なるほどな。そう言う事なら今度行ってみるとしよう。」
灯台のイベントについては全員が全員。思う所があるのか思案顔だ。
「このイベントをこなすのは今は閉ざされている王都の西に行くために必要。と考えるべきなのかしらね。」
「恐らくはそうであろうな。三つの神殿の意味は分からないが、それは未知のエリアにあると考えれば不都合はないである。」
「となると気になるのが丘陵地帯のボスの位置だが……ヤタ。お前は見つけたか?」
「いや、見つけてないな。一通りは回ったと思うんだが見当たらなかった。」
「じゃ、それも含めて次の目標は神殿探しってところか。」
「ですね。」
と、こんなところで灯台のイベントに関する俺たちの考察は一度打ち切る。
「で、丸一日丘陵地帯に居たという事は相当な数の素材を手に入れたのではないのであるか?」
「まあな。」
と言うわけで、俺はアイテムポーチのアイテムをほぼ全てアイテムボックスに移し、その状態でユフたちに中身を見せる。
「「おおおおおおおぉぉぉぉぉ!!」」
で、見せた瞬間にガントレットのオッサンとアーマさんが目をキラキラさせながら画面を注視し始める。
「ヤ、ヤタ。これを使ってヤタの防具を……」
「ああ全身分作ってくれ。余った分は持って行ってもらっても構わないし。」
「キタであるうううぅぅぅ!!」
「アナタ!急いで知り合いの職人にも連絡を取るわよ!」
「当たり前である!」
二人がすごい勢いで誰かと通信を繋げて交渉していく。恐らくだけどなめし職人とかと連絡を取っているのだろう。
「凄い数の素材ですね。」
「まあ、丸一日戦い続けていればな。あ、ミカヅキも何かサブがあって使えそうな素材が有ったら言ってくれ、俺が使わない分なら渡すから。」
「良いんですか?」
俺の言葉にミカヅキが首を傾げる。
まあ当然だがタダで渡す気はない。
「代わりに作ったアイテムをあの二人に少し回して俺の防具を作ってもらいたいかな。」
「ああなるほど。そう言う事なら≪紐職人≫を持っているので少しクロスシープの毛と言うアイテムを貰っていきますね。」
「了解。」
なるほど。ミカヅキのサブ職人は≪紐職人≫だったのか。地味に良い情報だな。
「ヤタ。俺には何かないのか?」
ユフが俺にそう聞いてくる。
「知らんがな。お前のサブとか俺知らねえし。」
「そういや、言ってなかったか。一応≪小道具職人≫持ちだな。ピッケルとかちょっとしたアイテムを作れる。」
「なるほど。なら今回はお前の出番は無さそうだな。」
俺はテンションが上がり過ぎてヤバい二人の方を見ながらそう言う。
「まあ、そうかもしれん……。」
そしてユフも二人の気迫に気圧されて思わずそう言ってしまう。
と、ガントレットのオッサンがこちらに近づいてくる。
「ヤタ。明後日の朝。それまで待ってもらえるであるか?そうすれば吾輩たちが作れる最高の防具を揃えてやれるである。」
その顔はちょっとテンションが上がり過ぎてて怖い。
お願いだからもうちょっと落ち着いてくれ。
ただまあ、明後日の朝までに作ってくれると言うのなら俺にそれを断る理由は無いな。
「おう。どうせ今日明日は生産活動に専念するつもりだしな。よろしく頼んだ。」
「よろしく頼まれたである!」
そうしてガントレットのオッサンとアーマさん、それにミカヅキが意気揚々と俺の部屋の外に出ていった。
うん。これは新防具が楽しみだな。
変なものが出来上がりそうでちょっと怖くもあるけど。
ヤタは攻略組ではありません。少なくとも本人はそう思ってます。
06/20誤字訂正