28:東の海岸-4
リアルが忙しい関係で日曜ですが一話更新です。
さて、北の山を降りた俺は日が暮れかけているのを確認してそのまま東の海岸に向かった。
何故夜の東の海岸に行くかと言うと、俺のクラブメイスを強化するのに使えそうな素材を落とす魔物が出るそうなのである。
「と、居たか。」
俺が東の海岸で塩噴き草やオオシオマネキをちょっと狩ったりしながら完全に日が暮れるのを待っていると、やがて太陽が地平線に隠れる。
西の森と違って障害物が無い東の海岸では月明かりのおかげでそれなりに視界が確保できている。
そして日が暮れると同時にフライフィッシュたちが海に帰っていき、砂地の部分から大きな甲羅を背負った亀が出てくる。
あの亀が今回の目的であるプロテタートルである。
「さて、それじゃあ早速狩るとしますか。」
俺はプロテタートルに関する諸々の情報を思い出す。
プロテタートルは体高1m程の巨大な亀であり、普段はノソノソとそこら辺を気ままに歩き回っているが、プレイヤーが一定距離まで近づくと四肢と頭を甲羅の中に引っ込め、こちらの攻撃に合わせて回転・弾き飛ばしてくる魔物である。
そういう訳なので戦術は回転される前に速攻で潰すか、回転が途切れた所で強襲するか、回転を無視できるレベルの一撃を与えるの三つである。
「まあ、俺が取れるのは前二つの方法だけだけどな。」
俺はクラブメイスを右手に持って構える。対してプロテタートルは既に俺が一定距離まで近づいているため甲羅に閉じこもっている。
俺はジリジリと少しずつ回転されないギリギリの距離まで接近。さあここからだ。
「【ダッシュタスク】!」
俺は【ダッシュタスク】を発動。
プロテタートルとの距離がドンドン近づいていく、まだプロテタートルは回転を始めない。
歯がプロテタートルの甲羅に触れる。ガリガリっという金属音と火花が散る。流石に堅い。だが回転はまだ始まらない。
そして、【ダッシュタスク】による攻撃が終了して向こう側に移動、このタイミングでプロテタートルは回転を始めた。その勢いは凄まじく、地面の砂が周囲に撒き散らされるのが見える。仮に直撃していれば結構なダメージを受けていただろう。
「しかしまあ、こっちもダメージを受けてないが、あっちにもほぼダメージ無しか。こりゃあ【ダッシュタスク】で攻めるのは厳しいな。」
俺は先程【ダッシュタスク】を放った程度の距離まで移動して、プロテタートルの回転が終わるか緩むのを待つ。
1秒、2秒、3秒……来た!
「『うらぁ!!』」
プロテタートルの回転スピードが僅かに緩んだその瞬間。俺は≪大声≫によってプロテタートルの動きを僅かに遅らせ、その間に接近してプロテタートルの頭が納められている甲羅の穴を掬い上げる様にメイスで叩く。
が、堅い。先程の【ダッシュタスク】が甲羅に当たった時よりはマシだが、この分だと結構な手数がかかりそうである。
「と、危な!」
俺はメイスによる一撃を当てた所で急いで飛び退く。と同時にプロテタートルが再び回転を始める。
だがまあ、時間はかかってもこの調子なら落ち着いて戦えば問題なさそうである。
「ッ!?」
が、そんな俺の余裕から来る隙をついて突然腰のあたりに衝撃が走り、プロテタートルの方に弾き飛ばされる。勿論プロテタートルは回転中である。
つまり、
「あだぁ!!」
俺は顔面から回転しているプロテタートルに接触、ダメージと共に大きく弾き飛ばされる。
砂場で転がされたために口の中に砂が入ってくる。
「くそっ!?誰だ!!」
俺は口の中の砂を吐き出しつつ俺を弾き飛ばした相手を確認する。
するとそこには……
「キチッキチッ」
ドヤ顔の様な物をしているオオシオマネキがいた。
なるほど。プロテタートルにばかり気を払っていると貴様が死角からやって来てドつくと、
「いい度胸だおらぁ!!」
俺はオオシオマネキに接近、自慢の鋏を左手で掴みとり、プロテタートルに向かって投げつける。
「キチィ!?」
「グゴッ!?」
プロテタートルはその場から動かないで当然オオシオマネキは普通に命中する。
二匹の様子から察するにお互い致命傷ではないがそれ相応のダメージを負ったようである。
だが、やられた分はきっちり返すべきだろう。
「ふっふっふ。不意打ちなどと言う馬鹿な真似をした自らの愚行を呪うがいい!オラオラオラァ!!」
俺は弾き飛ばされ、ダメージにもがくオオシオマネキに接近。再びプロテタートルに叩きつけ、弾き飛ばされたオオシオマネキを空中でキャッチして勢いそのままで方向だけを変えてプロテタートルに叩きつける。
「これで……トドメ!」
そして三度目の叩きつけでオオシオマネキが倒れ、プロテタートルも度重なる衝撃に耐えきれなかったのか回転を止めてしまう。
俺はこれを好機と見てプロテタートルに接近、メイスを連続で何度も叩きつけてやる。その連続攻撃にさしものプロテタートルも耐えきれなかったのかやがて地に倒れ伏した。
「うおっしゃあああぁぁぁ!」
そして俺は勝利の雄叫びを上げると二匹の素材を回収した。
その後、俺はプロテタートルを発見するたびにわざとオオシオマネキが襲来するまで待ち、オオシオマネキを連続でぶつけて体勢を崩す戦法を取る事にした。
定石?定番?考えてみたら俺ってばイロモノプレイをしているんだし、他のプレイヤーとは切れる手札が違ったんだよな。なら俺は俺の方法で狩ればいい。それだけの話だ。
そして使えそうな素材をオオシオマネキとプロテタートルから回収した俺は村へと帰っていった。
素材が必要なら過去のエリアにも行く。
まあこの手のゲームにはよくあることです。
08/13誤字訂正
08/17誤字訂正