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24:始まりの村-11

「ん?」

 俺が神殿の床に転がっていると目の前で突然光が放たれ始めた。どうやら、また誰か死に戻りしてきたらしい。

 そして、俺がその場から動く暇もなく徐々に光は弱まっていき、一人の女性が現れる。


「はふぅ……」

「なっ!?」

 女性は腰まで届く青いストレートの髪に、大きな斧を背中にくっつけ、胸にはミカヅキとは比べるまでもないようなサイズの果実が付いていた。だが、驚くところはそこではない。ここまでなら普通のちょっと胸が大きめな女性斧使いだ。

 女性の特異な点は別にあり、女性は斧以外には初期配布であるベースメイルとベースグリーヴさえ着けていなかった。これが指し示すのは非常に特殊なプレイスタイルの一つ。


 裸プレイだ!!


 しかもこの女性はなぜか死に戻り直後だというのにふらついた様子も見せずに顔を紅潮させ、目を感動系の何かで潤ませている。明らかに死に戻りをした人間の表情ではない。


「さあ……もう一回……フフフフフ。」

 ヤバい。俺の本能が割と本気でヤバいと感じてる。こいつに関わったらいけないと俺の本能が叫んでる。というか、昨日から今に至るまでなんで三回もそれぞれ別な方向性の恐れを抱いているんだ俺は。

 しかし、幸いなことに女性は足元に居る俺に気づいていないようで、しっかりとした足取りで神殿の外に出ていく。


「……。」

 ちなみに裸プレイと言ったが本当に素っ裸なわけではなく、インナーと呼ばれる防御力0の装備がきちんと装備されている。

 インナーは所謂防具:なしの状態を示すものだが、防御力が0であることから防具を一切身に着けていない状態を裸と呼ぶのはよくあることである。

 なので、裸プレイをしても倫理規定などには引っかからないようになっている。


「とりあえず、ユフに会いに行くか……。」

 そして、俺はいつまでも寝転がっていると他の死に戻りプレイヤーの邪魔になると思い、デスペナによって失った素材を確認しつつその場から去り、ユフに連絡を取って会いに行った。



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「へー、ヤタも南の草原のボスと戦ってきたのか。」

「殆ど手も足も出なかったけどな。」

 俺とユフは神殿前の広場から少し離れた場所にあった人通りの少なそうな路地で話をしていた。

 こんな辺鄙なところを選んだ理由?神殿前の広場が南の草原のボスが討伐され、『電子の女帝』自身からのメッセージにより攻略が進む=現実への帰還が明らかになったことを祝っていて、ゆっくりと話し合える雰囲気じゃなかったからだよ。

 というか、≪料理職人≫に≪酒職人≫、≪飲料職人≫持ちをはじめとして生産職プレイヤーの頑張りが凄まじい。まるでお祭りだった。


「まあ、俺たち攻略組だって討伐完了時には10人ちょっと。つまりは半分ぐらいしか残ってなかったしな。そんな相手を初見ソロで打ち破られたらむしろ俺たち攻略組の立つ瀬がないよ。」

 ちなみにユフはしっかりとその10人ちょっとに残っているらしい。


「まっ、それは確かにそうだけどな。つーかユフよ。取り巻きが居るとか、咆哮で攻撃してくるとか知ってたら教えておいてくれ、酷い目にあった。」

「は?取り巻きに咆哮?そんなのあったか?」

「え……?」

 俺の質問に対するユフの返答に俺は思わずユフの顔を凝視する。が、ユフは心の底から何言ってるんだこいつは。という顔をしている。

 うーん。これはちょっと擦り合わせをしたほうがいいかもな。


「ユフ。確認だ。お前が戦った時は取り巻きも咆哮も無かったんだな。」

「ああ、無かった。というか、取り巻きがいたら生き残りはもう少し少なくなってた可能性もあるし、未知の攻撃があったならあの長期戦だ。必ずどこかで使っていたと思う。」

 ユフは俺の真剣な問いかけに対して真面目な顔で返してくる。

 どうやら祭りの空気に当てられて惚けた様ではないらしい。


「じゃあ、次の確認。ゲートの境界を示す線は何色だった?」

 この質問はそこまで重要なことじゃない。なんとなく気になったから確かめておきたかっただけだ。

 だが、ユフの返事は……


「何色って……普通に青だったと思うぞ。」

 俺が見たのとは全く違う色だった。


「そうか、俺が見た時は赤かった。」

「!?」

 俺の答えにユフは本気の驚きを示す。

 どうやらこれは割と本気で検討をすべき事柄のようだ。


「ヤタ。それは間違いないんだな。」

「ああ、間違いない。」

 俺は頭の中で何が原因で色のズレが出ているかを考える。

 と言っても全くの偶然である可能性もあるし、俺の知覚できない理由の可能性もあるので、今から挙げるのは可能性があり得ると思えるものだけだ。


「考えられるのは人数、時間、道中の戦い方、初討伐後かどうか。と言ったところか。」

「そうだな。それにしてもゲートの色によって強さが変わるなら今後の生産職を連れてのボス討伐は厳しくなるかもな。」

 ユフは真剣な顔で悩んでいる。

 生産職を連れてのボス戦というのは、戦闘能力が低い生産職が次のエリアに行けるように戦闘専門のプレイヤーが生産職のプレイヤーと、PTまたは同盟を組むなどして一緒にボス戦に突入し、戦闘専門のプレイヤーがボスを打倒することによって同じPTである生産職も次のエリアに行けるようになる。というものであり、当然ながら戦闘専門のプレイヤーだけでボスに挑むよりも難易度は確実に上昇する。


「ヤタ。」

 と、ユフが考えをまとめたのかこちらを向く。


「どうした?」

「すまないが明日は一日俺とPTを組んでもらってもいいか?」

「別にそれは構わないけど何をするんだ?」

 まあ、何をするかなんて分かってるけどさ。


「ゲートの監視だ。」

 ま、当然だよな。

青髪の女性はヒロイン候補になるんかなぁ…

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