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20:始まりの村-10

 さて、夜が明けて朝である。結局あの後も俺とユフはウォークアップルの果実酒を呑み続け、俺が作った5本の果実酒の瓶は4本目まで見事に空っぽになった。


 で、俺が神殿前の広場に向かっていると村の中に用意されているいくつもの井戸で水浴びをしているプレイヤーの姿が見られた。どうやらユフ経由で俺の伝えた情報がしっかりと他のプレイヤーたちにも伝わったらしい。

 というかプレイヤーたちよ。そんな何十回も頭から水を浴びなくても今ならまだ大丈夫だぞ。2,3回水を被れば初期状態まで臭いは戻るぞ。


 まあ、そんな事はさておいて、俺はガントレットのオッサンの店に行く。目的は勿論昨日製作を依頼した装備品である。


「ういっす。ガントレット。」

「おお、来たであるかヤタ。」

 俺の挨拶にガントレットのオッサンも片手をあげて応える。


「で、例の物は?」

「勿論出来ているであるよ。それからアーマの作った物も吾輩が受け取っているであるよ。」

 ガントレットのオッサンがメニュー画面を開き、俺に二つの装備品を送ってくる。

 そして俺はその二つの装備品の効果を確かめる。


△△△△△

ウッドガントレット レア度:2 重量:2 種別:腕防具 製作者:ガントレット

防御力:2

耐久度:100%

≪掴み≫の制限サイズ+1

木材とウォークアップルの枝を取り付けた籠手。カスタムされている。

▽▽▽▽▽


△△△△△

バットマスク レア度:2 重量:1 種別:頭防具 製作者:アーマ

防御力:1

耐久度:100%

≪噛みつき≫の攻撃力+1

ビッグバットの牙を加工して作られたマスク。カスタムされている。

▽▽▽▽▽


「装備してみてもいいか?」

「むしろ、こっちから頼むであるよ。」

「了解。」

 俺は効果を確認した所でガントレットのオッサンに許可を貰ってから装備してみる。


 俺はメニューを開いて装備を変更する。

 すると、顔には鼻と口を覆うような革製のマスクが着けられ、左腕に各部に木製の板が付けられて全体的に角ばったフォルムの籠手が装着される。

 マスクはアーマさんのカスタムの結果により、俺の口の動きに合わせて開閉し、口が開くと中からビッグバットの小さな赤い牙が飛び出すようになっている。この機構が付いているおかげで≪噛みつき≫の攻撃力が強化されるようだ。

 籠手は通常の腕防具が両腕に装着されるのに対して、ガントレットのオッサンのカスタムにより、右腕は肘の部分だけを木で保護することで防御力を犠牲に可動性を上げ、左腕は通常の籠手よりも一回り大きくすることでより大きなものでも≪掴む≫の対象に出来るようになっている。


「左右のバランスはどうであるか?片方だけ太く大きくしたせいでもしかしたら致命的なレベルでバランスが悪いかもしれないである。もしそうなら手直すであるよ。」

 俺はガントレットのオッサンの言葉を受けてクラブメイスを抜き、少し体を動かしてみる。

 確かに今までとは左右のバランスが違うために多少動きづらいかもしれない。だが、これは今までのバランスから急に変わったためであり、慣れでどうにかできそうなレベルではある。


「いや、問題ないな。むしろこのぐらいのバランスのズレなら何かに利用できそうな気がする。」

「そうであるか。それなら良かったである。」

 俺の動きと返事を受けてガントレットのオッサンは満足したように頷く。


「じゃ、いい仕事をしてくれたガントレットのオッサンにこれをプレゼントしておくよ。」

「ん?なんであるか?」

 俺はガントレットのオッサンにウォークアップルの果実酒を送る。


「おお!酒であるか。」

「おう。俺の作ったお酒だ。よかったら呑んでみてくれ。」

「ありがとうである。後で楽しませてもらうであるよ。」

 どうやらガントレットのオッサンもそれなりに酒好きのようだ。俺の作ったお酒を満面の笑みで受け取ってくれる。


「それで、話は変わるであるが。ヤタは今日、どこに行くつもりである?」

「そうだな……東と西はもう行ったし、今日は南の草原に行こうかと思ってる。」

 北の山を除外した理由としては他の場所と違って明らかに敵が強いためである。まあ、クラブメイスとこの防具ならトレインや集団に遭遇しない限りは大丈夫だと思うが。

 それはともかくとして南の草原に行く目的は夜間限定の狼の素材が欲しいからである。


 で、その事をガントレットのオッサンに話したら、


「なるほど。なら狼の素材が手に入ったなら持ってくるである。そうすれば吾輩が今度は腰装備を作るである。」

 腰装備か……狼をそのまま腰巻にしたような装備とか如何にもバーバリアンっぽくていいよな……。


「分かったぜガントレット!無事に手に入ったら必ず持ってくる。だからいい腰巻を頼むぜ!」

「言われなくてもその時の吾輩に出来る最大限の技術を持って作り上げてやるである!」

 俺とガントレットのオッサンは腕を交わして互いに頷く。


 そして俺は攻略組が各地に向けて出立していくのを眺めつつ、それに混じって南の草原へと向かっていった。



△△△△△

Name:ヤタ


Equipment:攻撃力:110 防御力:8

武器:クラブメイス

頭:バットマスク (≪噛みつき≫攻撃力+1)

首:F魚鱗のネックレス

胴:ベースメイル

腰:無し

腕:ウッドガントレット (≪掴み≫の制限サイズ+1)

脚:ベースグリーヴ

指輪1:無し

指輪2:無し

▽▽▽▽▽

防具装着です。

まあ、序盤なので悲しい数字ですが

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