18:始まりの村-8
「まずは素材の確認だな。」
俺は酒造りに使えそうなアイテムを確認していく。そして使うアイテムを決定した結果がこんなところである。
・井戸水×10(身体を洗うついでに回収しておいた)
・ウォークアップルの果実×6
・薬草×2(西の森で拾った)
・塩噴き草×1
・オオシオマネキの足×1
うん。今回は雑草を使ったりはしない。雑草酒の酷さはもう身に染みてる。
というわけで、まずはこの中でも作成の難易度が低そうなウォークアップルの果実を使った酒造りと行こうか。
「井戸水を入れて~ウォークアップルを入れて~櫂を…ぶっこむ!」
俺は表示されたタイミングを正確に捉えて桶の中に櫂を入れる。
そして混ぜる!動かす!美味しくなるように願いを込めつつかき混ぜる!!
「ヒャア!明らかに楽だぜぇ!!」
≪筋力強化≫を初めとして様々なスキルを入手・レベルアップさせたおかげも有るだろうが、明らかにウォークアップルの果実を使った方が雑草よりも難易度が低い。
恐らくだが、これは使用素材が酒造りに向いているかどうかによって難易度が変化しているという事なのだろう。
「うし。完成!」
と、そんな考察をしつつも俺は一本目の酒造りを成功させる。
「それじゃあ、二本目行ってみるか。」
そして俺は気分を良くしつつも二本目の作成に移る。
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さて、結果だけを言ってしまうならやはりウォークアップルの果実は酒造りに適した素材だったようだ。
最終的にウォークアップルの果実を利用した酒は6本中5本成功した。
で、残りの素材に関してだが、
・薬草→1本だけ成功
・塩噴き草、オオシオマネキの足→失敗
となった。
というか、予想以上に塩噴き草とオオシオマネキの足が厳しい。現状だとコンマ単位のタイミングと動きが要求されているようだ。
薬草に関しては…雑草より少し難しいぐらいか?ウォークアップルの果実で≪酒職人≫のレベルが3に上がっていなければ厳しかったかもしれない。
そして、肝心の作成物の効果はこんなところである。
△△△△△
ウォークアップルの果実酒 レア度:2 重量:1
ウォークアップルの果実をお酒にしたもの。度数は低いが、リンゴの風味が美味しい。
呑むと満腹度+5% 低確率で酔い
▽▽▽▽▽
△△△△△
薬草酒 レア度:2 重量:1
薬草を発酵させてお酒にしたもの。酒と言うよりも薬に近く、飲むと苦味が強い。
呑むと満腹度+1% HP+10 低確率で酔い
▽▽▽▽▽
果実酒は黄色い液体で普通に呑めそうである。薬草酒は緑色をしていて、明らかに苦そうである。
で、ここで一つ気になったのだが、世の中には蒸留酒の様に酒を加工して作る酒や、ハブ酒の様に酒の中に何かを漬け込んで風味などを加える酒が存在しているのだが、HASOではその辺りはカバーしているのだろうか?仮にカバーしているとしたら作れるのだろうか?
と言うわけで気になったなら確かめるべきなので、使い終わった桶と櫂を再び取り出して確かめる。
「うーん。蒸留酒は道具が無いからちょっと厳しそうだな……。漬け込む方は……一応出来るか。」
どうやらレア度2以上の酒なら挑戦できるようなので、ちょっと試してみる。
レア度限定があるのは…たぶん、レア度1の酒はことごとく酒の名を冠した別の何かだからなんだろう。
ただ、果実酒は呑んで楽しむのに使いたいので、薬草酒を元に作る。
「えーと、まず薬草酒を選択して、漬け込むアイテムを選択すればいいのか。」
俺はボックスの中から薬草をもう一つ取り出す。
薬草酒with薬草ならもしかしたら効能の高まった薬草酒が出来るかもしれないと言う希望的観測に基づいた行動である。
というか、薬草以外の素材だと難易度が跳ね上がるか酷い事になりそうだったんだよ。オオシオマネキの足とか元の酒造りでもまだ上手くいってない素材だし。
さて、作成手順であるが、非常に単純だ。
選んだ酒の中に選択したアイテムを入れ、酒瓶ごと大きく振る。
この振り方が漬け込む時に重要で、毎度おなじみのタイミングとスピードを上手く調節してやらないといけない。
だが、今の俺には≪握力強化≫と≪筋力強化≫がある!タイミングはともかく瓶が手の中からすっぽ抜けたり、重くて振れないという事は無いのだ!
「うおおおおおおぉぉぉぉぉ!!」
俺は大声を上げつつ、瓶を指定されたタイミングに合わせて上下に振る。
難しい!だが全く手に負えない難しさじゃない!何としてでも俺は成功させてやる!
「だらっしゃあ!」
そして、俺は最後の一振りを終え、ゆっくりと出来上がった酒の状態を確認する。
△△△△△
薬草酒(薬草漬け込み) レア度:3 重量:1
薬草を発酵させてお酒にしたものに薬草を漬け込んだもの。薬草酒よりも更に薬に近く、飲むととても苦味が強く、熟成が進むとそれだけ苦味も強くなる。
熟成度:漬け込み直後
呑むと満腹度+1% HP+12 低確率で酔い
▽▽▽▽▽
よし!成功した。
ただ、熟成度というメッセージ欄がある辺りこのまま放置しておくと漬け込み具合が深まるのだろうか?
情報がまるでないので判断が出来ない。まあ、腐る事は無さそうだししばらくはアイテムボックスの中に放置しておけばいいだろう。
後、苦味が強いらしいから趣味で呑むのは無しにして、武器とかの素材に回す事や、緊急時の回復アイテムと考えて使う事も視野に入れておくべきかもしれない。
しかし、こうして漬け込みができるならあれだな。蛇系のモンスターを何とか探し出したいな。絶対にハブ酒みたいなものが出来るはずだ。
是非飲んでみたいところである。
「まっ、何にしても今日は月見酒と行くか。折角ウォークアップルの果実酒が出来たわけだしな。」
そう言って俺は立ち上がり、ボックスの中からツマミになりそうな一部のアイテムを取り出し、プライベートエリアを後にするのだった。
△△△△△
Name:ヤタ
Skill:≪メイスマスタリー≫Lv.3 ≪メイス職人≫Lv.2 ≪握力強化≫Lv.3 ≪掴み≫Lv.4 ≪投擲≫Lv.3 ≪噛みつき≫Lv.4 ≪鉄の胃袋≫Lv.3 ≪酒職人≫Lv.3 ≪筋力強化≫Lv.2 ≪嗅覚識別≫Lv.2 ≪大声≫Lv.1 ≪嗅覚強化≫Lv.1
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やっとマトモなお酒ができました。