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17:始まりの村-7

「さて、まずはメイスからだな。」

 俺は炉の前に座り、メイスと修復石を取り出して残りの耐久度と修復の為に必要なアイテムを確認する。

 と、やはり昨日今日と西の森で使い続けていたためかかなり耐久度が減っている。


「それでも初期装備だから修復石は1個で済むんだな。」

 だがそれでも修復に求められるのは修復石一つ。流石は初期装備と言ったところである。

 これがこの先武器を強化していくと修復石が複数必要になったり、修復石以外の素材も必要になるんだろうな。


「ま、とりあえず≪メイス職人≫のレベル上げの為に修復するか。」

 俺はこの前行ったのと同じ手順でメイスを修復していく。

 プライベートルームに甲高い金属音がリズミカルに響く。うん。いい感じだ。


「よし。修復完了。」

 しばらくすると修復完了のメッセージと共に耐久度が回復したメイスが俺の手の中に納まる。


 さて、ここからが本番である。

 先程の修復で≪メイス職人≫のレベルが2に上がり、それと共に今手持ちの素材でベースクラブがどのように強化できるかが俺の前に示される。


 と言っても細かいチューニングを除けば系統としては二種類で、一つは東の海岸に出現する魔物の素材を使ったメイスであり、もう一つは西の森に出現する魔物の素材を使ったメイスである。

 具体的に言うと現状では蟹素材か蝙蝠素材のメイスである。まあ、この二種は他の魔物に比べて結構な数を狩ったしな。出てきて当然だ。

 本当は芋虫素材とか魚素材のメイスとかもあるが、素材不足で選択は出来ないようだ。


「とりあえず、蟹素材で行ってみるか。」

 俺は蟹素材で作れるメイス。クラブメイスを選択し、自動生産ではなく手作業での生産を選ぶ。


 クラブメイスの作成手順はこうだ。

1、ベースクラブにオオシオマネキの鋏を被せます。

2、それを炉で熱した後ハンマーで叩いて癒着させます。ただし、どちらもタイミング指定有り。

3、イトキャタピラァの糸をグルグルに隙間なく巻き付けます。

4、オオシオマネキの甲殻を張り付けてから再び2を行います。

5、アレンジタイムです。好きな素材を選んで炉で溶かし、ハンマーで叩いてくっつけてください。ただし素材ごとに難易度の変化有り。


 と言うわけで、指定されたとおりに俺はベースクラブを弄っていく。

 特に気を付けないといけないのは熱する時間と熱した後の叩き方で、ここでミスをすると大惨事になってしまう。

 それにしてもイトキャタピラァの糸の粘着性はヤバいな。ちょっと圧力を加えると簡単に貼り付く。気を付けないと手にくっつくぞこれ。


「で、アレンジはどうすっかな……。」

 そして手順は進んでいき仕上げの5である。

 ここではアレンジタイムとして好きな素材を添加でき、添加した素材によって仕上げの難易度が上下するが、同時に性能を上げることも出来る。


「まあ、これがいいかな。」

 俺はその中でビッグバットの牙を選択。作成途中のメイスとビッグバットの牙を炉に入れて熱する。


「……。」

 俺は微かな変化も見逃さない様、静かに炉の火を見続ける。

 と、一瞬火が揺らぎ、その瞬間に俺はメイスを火の外に出す。

 続けて、メイスの所々に丸いポイントの様な物が表示され、丸いポイントの周囲に表示されるゲージが0になる瞬間を見計らって俺はそれを順番に叩いていく。

 何となくだが叩く順番に関しては次に叩く場所を嗅ぎ分ける。という意味で≪嗅覚識別≫が役立ってくれている気がする。気がするだけだが。


 やがて、最後の丸が表示され、その丸のゲージが0になる瞬間を見定めて俺は全力でハンマーを振り下ろして作成を完了する。


「ふう。何とか完成したな。」

 俺は完成したメイスの情報を見てみる。


△△△△△

クラブメイス レア度:2 重量:1 種別:メイス 作成者:ヤタ

攻撃力:110

防御力:2

耐久度:100%

オオシオマネキの素材を基本に作り上げられたメイス。防御力が上昇する効果がある。

形はオオシオマネキの鋏を模している。

▽▽▽▽▽


 ちなみに攻撃力110とあるが(ベースクラブは100だった。)、これはモーションごとに設定されている数字や、武器の種別ごとに用意されている数字に対して最終的に掛けられる係数なので、決して高い数値ではない。

 というか、全力で振っても110%分の攻撃力しか相手に伝わらないという事である。


 ビッグバットの牙の効果が出てないのは……まあ気にしないでおこう。所詮は最序盤のモンスターが普通に落とす素材だ。むしろ効果が出てくるとしたら強化を進めていった先の話かもしれない。


「と、ついでにクラブメイスからどういう武器に強化できるかも見ておくか。」

 俺はクラブメイスがどういう武器に強化できるかを見てみようとする。

 が、素材不足の為にほぼ閲覧できなかった。ただ、どんな素材が必要なのかというヒントの様なものだけが見えている。

 で、その中で気になったヒントが一つ。


「液体状の物?」

 液体状の物。普通に考えれば水だろう。だが、血液も液体だし、酒も液体である。というか世の中には水銀の様に通常の状態が液体と言う物質は普通にある。

 何と言うか、使う素材によっては特殊な武器も出来上がりそうで少々気になる項目である。


「まあ、仮に酒が使えるのだとすれば≪酒職人≫を早い所上げてやらないとな。」

 俺はクラブメイスの強化先の模索を止めて、酒造り用の道具を持ち出す。


「さあ、今日こそはマトモな酒を作り出してやろうじゃねえか。」

 そして俺VS酒作成の第2ラウンドが幕を開けた。

武器が一段階強化されてやっと狩りが本格化できますねぇ……

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