2.憧れる少女
8話目「憧れる少女」
ミィが僕に懐いてくれたのはいいんだけど、だんだん離れてくれなくなってね。まあ可愛いからいっか、って思ってたんだ。
「おねーさん、妬いちゃうわー」
リーさんに茶化されるようになってね。ミィも対抗心むき出しでリーさんのことを僕の後ろから睨んでるし、ちょっとどうしようかと思ったよ。まぁ、リーさんにもだんだん慣れてくるだろうと思って、特になにもしなかったんだ。
「ねぇロイー。私もミィちゃんと遊びたいんだけどー」
「ローリーに言っても無理だろうよ。あれは人見知りってだけじゃねえからな」
そうだよね。ただの人見知りって懐き方じゃないよね、やっぱり。はぁ。ヒロさんもリーさんもニヤニヤしないでよ。
「ま、そんな私だって、ロイに教えて貰わなきゃ、魔法に本気になんてならなかったでしょうから、ミィちゃんの気持ちはよぉーく分かるわよ?」
そんなことを言われても、正直なんとも言いようがないじゃないか。まあそんなことで口論してもしょうがないんだけどさ。でも、リーさんの魔法って僕がきっかけだったんだ。知らなかった。
ミィが大分リーさんにも慣れてきてからは、よくリーさんと話し込んでてちょっと疎外感っていうのかな、そんなのを感じてたんだよ。
「ろい、さん。……これ……」
ミィがおずおずと差し出してきたのは、一冊の『魔法の書』。僕も原本から大分遠い複製本を読んだことがあって、既に知っている魔法だった。どうやらミィは、服の中に入れて持ってきていたみたいなんだ。ヒロさんには内緒らしい。まあ、知っていそうだけれど。
この『魔法の書』、あとでリーさんに聞いてすごく驚いたんだけど、なんと原本を直接複製したものらしい。複製者のサインも、僕にはどのくらいか分からないけど、ものすごく有名な人だったとか。そんなもの、どこで手に入れたんだろうと思ったら、原本はおじいさんの書斎の本棚に、絵本とかと混じって置いてあったそうだ。失敗のイメージしか流れてこなかったけど、そんなことを知らない当時のミィはこの魔法を発動させて暴発。酷い目にあったらしい。それで魔法に憧れて、というのもあるけど、おじいさんに勧められて城下街を目指したそうだ。そのあとは、途中で道に迷って、運よくヒロさんに助けられて、ここまでたどり着いたわけだね。
え、話が逸れてる? まあね、そんな話はしづらいじゃないか。