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4.ミンクの選択

 30話目「ミンクの選択」

 そうそう、ちょっとした自慢なのだけど、私、これでも王様と面識があるのよ。

 きっかけはミンクの教育係になったことね。学識の高い魔法使いを求めていたそうで、当時、新進気鋭の研究者だった私に白羽の矢がたったの。実用的な魔法使いとしての腕は二流も三流もいいところだったけど、若手の研究者の中では一番だという自負はあったわ。なんたって、木系統の魔法を再興させようなんて人は私くらいしかいなかった、というか、今でもいないわね。

 そう、これはその用件で王様の執務室に呼ばれたときだったわ。

「そなたがツリーか。これに魔法の指南を頼みたい。引き受けてくれるか」

「はい。誠心誠意、努めさせていただきます」

「固いな。ほれ、そなたも楽にしなさい」

 そう言うや否や、王様は座っている椅子から脚を上げると、机の上に脚をのせて組んでみせたのよ。まさかそんなことをするだなんて思ってもみなかったから、なんて言えばいいのかわからなくなってしまったの。

 当のミンクはというと、さっきも言ったわよね。逃げたのよ、城から。

「王様、ミンク様はヘヴィ・ダブルの元へ参りました。いかがいたしましょう?」

「ダブルトリックの庇護下か。あれも刺激を求める年頃になったということか」

 以前のように、机の上に脚を組んだままでそう仰ったっきり、王様は口を閉ざされた。そのあと、伝令から『ミンクを鍛えろ』という趣旨の文が届けられて、ジークは毎日楽しそうに手合わせしていたわ。しかも、真剣で手合わせするものだから毎日ボロボロの傷だらけになるし、モールだって毎日一緒にいるわけではなかったから、私の新しい回復魔法の実験台にしたこともある。ミアと私の講義で、わざと暴発を直撃させたりもしたわね。そんなことで、ミンクが手を出した自衛手段が結界魔法。結界魔法は禁術ではないけれど、かなり異端な魔法なの。ある範囲内に一定の効果をもたらす魔法、空間と時間を操る魔法でもあるわ。ありとあらゆる魔法や現象に精通した者でなければその真価は発揮できない。それに、私たちはあれには結構厳しくやっていたから、いつ何をされるか分からない状態だった。そんな理由から速さを求めるようにもなったわ。モールの系統立てた講義とミアの実践的な指導で、様々な知識を身をもって学んだミンクだからこその選択ね。

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