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2.出会い

 28話目「出会い」

 私がミアとジークに出会ったのは、私が依頼で郊外へ行っていた帰りよ。依頼の内容は、たしか猫探しだったわね。

「ねえ貴女、そうそこの貴女よ。貴女がキラー・ツリーね? ね、そうよね?」

 お金持ちそうなおばあさんの猫を探して、ようやく見つけた帰りで、ついでに仔猫を一匹貰ってくれっていうもんだから、腕の中にはそれはそれは小さな仔猫を抱えていたの。ミアに声を掛けられたのは、ちょうど仔猫の首元をくすぐっていたときだったわ。

「俺たちは強いやつを探してる。今はシルキーとモールの返答を待っているところだ。あんたの研究熱心な性分は聞いてる。ちょこっとだけ、その頭脳を貸してくれ」

 名前を聞いて驚いたわよ。『鈍足の槍使い』シルキー・ミール。当時は『疾風の槍士』って呼ばれていて、まあなんであんな重装備に拘るようになってしまったのかが不思議ね。『黒白戦』で死んでしまったわ。もう一人は『ピュア・キュア』モール・ライツ。世界最高とまで謳われた回復術士なんだけど、中級最下位までしか使いこなせていなかった。十年くらい前かしらね。『黒白戦』で絶望を味わった彼はだんだんと気を病んでしまって、最期には自らに刃を突き立てて果ててしまった。『漆黒』と『純白』は私にとっても、四人の親友を殺した憎い相手よ。でも、私には戦うための力はそんなにない。その代わり、私が創った魔法を使ってくれる人が何人もいるわ。リサちゃんが使う最上級魔法の一つもそうだし、ローリー君が弓矢に乗せて使う魔法のいくつかもそうだし、いろんな人が使っているの。だから気分的には、私も一緒に戦っている。そう思っているわ。

 当時のミアは、ミア・ルーツと名乗っていたからしばらくは気付かなかったのだけど、私と会う少し前にはもう結婚していたらしいの。元々の姓であるルーツをミドルネームにして、ミア・ルーツ・アールというのが正式な名前ね。それを聞いたのが出会ってから二年目。私がミンクの教育係に抜擢される少し前のこと。……ええ、あんなやつ『様』なんてつけなくていいのよ。あんまり『王子、王子』ともてはやされるものだから、嫌気が差して当時すでに有名だったジークの下へ逃げたのよ。そこに私がやってきて王様に報告した次第ね。……王様があんなにフランクな方だとは思わなかったわ。

 王様からは本当にあっさり許可をいただいて、あれが私たちの仲間になったっていうわけ。魔法の指導はほとんどモールで、ミアはたまに口を出していた程度。四男五女の末の子とはいえ、さすがは王の血を引く天才よね。

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