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5.少女と魔法

 26話目「少女と魔法」

 私の魔法のことですか? いいですよ。

 私の魔法は、私の母である『トリック』ミア・ルーツが用意した、私専用の魔法です。あまり使ったことはないのですが、始めて魔法を使えたときは、浮かれすぎて、倒れるまで色んな魔法を試していました。大量の魔法力を行使するのは、慣れていないと相当の体力を消費してしまうようで、いままで全く魔法を使ってこなかった私に、リーさんも加減が分からなかったみたいです。

 私の使う魔法は、自らの魔法力でその場に残る魔法力の残滓に働きかけて、それで魔法を発動すると言うもの。この魔法力の残滓というのが意外とやっかいで、使われた系統の残滓にしか魔法が反応しません。しかも、複数の過程が組み込まれた魔法でも、火系統なら火系統の残滓以外は残さないらしく、しかも、私の魔法で消費してしまうので誰かがいないと使えません。リーさん曰く、魔法力の残滓はそのあとに使う魔法にも影響を与えるそうで、その系統の残滓が多くあるほど魔法が強くなったり、相反する系統の残滓が多くあると魔法が弱くなるそうです。なので、様々な意味でもって、私の魔法は少々やっかいなもののようです。

 ミンク様が言うには、私に掛けた封印が解ける頃になれば、今まで読んできた『書』の魔法が一気に流れ込んでくる可能性があるそうです。とはいっても、今までに目を通した『書』は五冊ですし、うち一冊はいつもいつも読んでいるので、大した負担にはならないのではないかと思っているのですが、何が起こるか分からないですからね。とにかく、前例のないことだから慎重に進めた方がいいとのことなので、私も知らない『書』には近づかないように気をつけています。

 あとは、そうですねえ、必須魔法が使えません。母が用意してくれた魔法に似たようなものもあるのですが、やっぱり魔法力の残滓が必要でして、必須魔法程度の残滓では量が少なすぎるみたいで、たとえば、火が出そうな感じはするのですが、実際は何も起こらないと言うことがしばしば。そうかと思うと、急激に魔法力の残滓が供給されると、いきなり現象だけ現れて大変驚かされることも。どうやら魔法だけ不発のまま先に発現していて、そのままそこにあるような状態になっているみたいです。

 ちなみに、魔法力の残滓というのは術者の近くにのみ蓄積されるようで、私の魔法が発現するということは、過去にその発現した場所に魔法を行使した術者がいることを示唆することになるそうです。使われた魔法の系統までは分かりますが、誰がなんの魔法を使ったかのかは分かりません。

 次話より章外。

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