5.少年と少女
16話目「少年と少女」
そうそう、ミィちゃんがオーリーを宿に連れてきたときのこと。
「――へぇ、オリバー君はそんなに前からミィちゃんのこと知ってたんだ」
港町の出身らしくて『狩人』の姿を見たことがあったそうよ。それで一目ぼれしちゃって城下街に出てきたってことね。水系統、氷系統、風系統の魔法が得意で、船を動かしたり、船にあいた穴の応急処置に便利なんですって。最初に覚えた魔法が必須魔法ではなくて、下級上位にあたる『ウォーターフロー』で、『書』の題名は『水が流れる仕組み』だったかしら。この書は面白い仮説が多くて、なぜか火系統や風系統の最上級にあたる書でも頻繁に検証されているわ。
最初はミィちゃんから声をかけたのですって。出会ったのはたまたまだって言っていたけど、どうなのかしらねぇ。聞いた感じ、オーリーが追っかけていたとしか思えないくらいの遭遇率だし、本当に偶然かどうかは怪しいわね。
まあ、ミィちゃんもオーリーもお互いを高めあう存在としても十分に釣り合いが取れる実力だし、一生支えあう存在になるかどうかは、まだまだこれからのこと次第だし、なにより見ていて飽きないからね。あ、ミィちゃん、何よその目は~?
そんなこんなで私は楽しいわよ。微笑ましいというかなんというかね、私が始めて会ったころのミィちゃんはロイにべったりだったから、……え、本当のことでしょう?
そう、女将さんも喜んでいたわね。そのせいで私が女将さんに心配されるようになったのはちょっといただけないけど、ま、ヒロさんみたいにはならないようにするわ。ああなってしまったらもうだめね。いい実例があって本当に良かったと思ってる。その点では感謝してるわよ、ヒロさん。……えー、だからってヒロさん、私はヒロさんの相手にはならないわよ。
うーん、だんだん話が逸れてしまっているわね。私からの話は一旦お終いにしましょうか。
次話より第四章