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4.封印の少女

 15話目「封印の少女」

 さて、あなたは魔法についてどのくらい知っているかしら? ……そうね、一般的には、魔法の書を読むと成功するときのイメージと失敗するときのイメージが流れ込んでくる。魔法を使うだけなら、その認識で間違っていないわ。でも、ミィちゃんが『焼却の有用性』を手に取ったのは四歳。まだ字を読むことができないミィちゃんでも失敗のイメージは流れてきたわ。それは何故だかわかる?

 実はね、読まなくてもいいのよ。表紙から順番に全てのページに目を通せば。あまり知られていないことだけど、多くの魔法を知っている人にとっては常識ね。私やオーリーみたいに気付く人はすぐ気付くし。それに、一冊全部読むのも疲れるじゃない? あれって、多くはただの実験レポートだもの。実験の経緯から始まって、実験手順、観察の方法、実験結果と統計処理、既存の方法より有意であるか否かで締める。読んでいて楽しい?

 それと、流れ込んでくるイメージは人によって少し誤差があるのはご存知? 実は、同じ魔法でも出来ることと出来ないことが、人によって若干違うの。オーリーは変幻自在に使えるみたいだけど、私が『アイスクリエイト』を使うと、精緻な彫刻を施した氷の盾が出来上がるわ。変えられるのは大きさとだいたいの形だけね。……ヒロさん、私のことをガサツとはどういうことかしら?

 え? そうね。魔法が暴発する確率は、今のところ言えることは完全に運次第ね。呪文部分のみで発動させる突発魔法を使うときだけだし、突発魔法と呼ばれる所以はこの暴発にあるくらいだもの。簡易魔法と完全魔法、あと使い手は少ないけど無声魔法では暴発しないから、安心していいわよ。十三年前の『黒白戦』で没した『ヘヴィ・ダブル』のもう一つの異名は『無暴』だったらしいわ。彼は一割も暴発させなかったって話。人によっては半々以上で暴発させるっていうのにね。

 で、ミィちゃんが暴発させた原因は、そもそも成功するイメージが流れ込んでいなかったからだと思うの。未だに、時間があるときには日に四回くらいは読んでるってのに、全然ダメなんですって。他の『魔法の書』は、失敗するイメージすら流れてこないって、なんでなのかしら。あの放蕩王子の話を信じていいのならあと三年。あと三年して、ミィちゃんが普通の『魔法の書』を読めるようになるのならば、もっといろいろなことが分かりそうな事例ではあるのよね。少なくとも、王城内の一般に開放されている区画の資料には、そんな事例は一件もないわけだし。

 ん~? ええ、王城の資料館には一般開放区画があるのよ。王城図書館と違って、すべてが禁帯出なんだけどね。

 変更点(2014/6/13):十四年前→十三年前

 変更点(2014/6/13):ダブルブレイド→ヘヴィ・ブレイド

 誤記訂正(2014.7.24):ヘヴィ・ブレイドではなく、ヘヴィ・ダブルでした。申し訳ありません。


 変更・追加点詳細→http://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/302376/blogkey/923991/

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