99:PvP-光-2
≪決闘の開始は3分後になります。構えてください≫
「ああやっぱり、ハリとノノだったのね」
「こんにちは、セフィルーラさん」
「超大型ゴーレムの時はお世話になりました。セフィ様」
PvPであるためか、普段と違って俺とノノさんのコロシアムへの転送は一瞬で終わり、転送が終わった時点で既に決闘相手であるセフィルーラさんもコロシアムに立っていた。
「一応言っておくけど、アタシは手加減する気とかないから」
「それはそうでしょうね」
「当然ですね」
コロシアムの状況は、広さは直径30メートル程、石製の柱が数本立っていて……おっと、天井があるのか。
高さ10メートルほどの所に石の天井があって、それ以上に飛び上がれないようになっている。
これは俺たちにとっては多少有利な仕様と言っていいだろう。
なお、彼我の距離は15メートル程だ。
「で、答えてくれないならそれはそれで構わないけれど、ハリとノノは固定ペアって事でいいの? 前回に引き続き今回も一緒に居ると言う事はそう言う事よね?」
「固定ペアで合っていますよ。理由については言いませんが」
「そうですね。闘士になった頃からずっと一緒です」
「へぇ、そうなの」
セフィルーラさんの装備には特に変わりはなし。
鎧と翼は変わらず純白で、腰の剣は既に抜かれていて、右手で持って構えている。
盾は持っていないし、魔法発動の構えも現状は無し。
やはり、飛行可能・高機動型・光属性の魔法剣士と言う認識でおおよそは合っていると思う。
「さて、そろそろですね。ノノさん」
「はい。頑張りましょう、ハリさん」
「いい決闘にしましょうか。二人とも」
で、こちらはずっと固定ペアと言う情報を与えたが……これでこちらの連携を警戒してくれるだろうか?
まあ、やってみるしかない。
と言う訳で、三人共に武器を構え、俺とセフィルーラさんは強化魔法を展開し、ノノさんは自身と俺の背中に隠すように魔法の準備を始める。
≪決闘を開始します≫
決闘開始のアナウンスが響く。
「起動せよ。『ハリノムシロ』!」
俺は構えた棍を地面に着け、即座に『ハリノムシロ』を発動。
周囲の地面がガラス片に覆われる。
「先手必勝!」
セフィルーラさんは剣を振りかぶりながら、こちらに向かって飛び込んでくる。
「魔よ、土となり、波となり、途上にあるもの飲み込みながら進め広がれ。『
ノノさんが準備していた魔法が発動。
大量の土が生成されると共に、高さ3メートルに少し届かない程度の土石流となって放たれる。
そして、放たれた土石流は俺の『ハリノムシロ』を飲み込み、ガラス片が混ざり、その体積と威力を大幅に増しながら、勢いよくセフィルーラさんへと向かっていく。
「!?」
さあ、ここだ。
俺とノノさんによるセフィルーラさんについての調査と話し合いの結論は、相手の攻撃の全てに対処する事は不可能であり、しかも幾つかの攻撃は撃たせる事も望ましくないと言うものだった。
では、そんな相手にどうやって勝つのか。
それを考えた時、俺たちに取れる選択肢はただ一つ。
機先を制し、相手が何かをする前に叩き潰す、速攻策だった。
「まずっ……」
故に、こちらの初手は俺の魔法を飲み込んだノノさんの範囲魔法で、高機動型であるために守りが薄いであろうセフィルーラさんに高確率で手傷を負わせる事を狙った。
だが、セフィルーラさんは俺たち二人を一人で相手取れると判断された、格上の闘士である。
だから、この攻撃が必ず上手くいくなんて考えてない。
考えていないから、俺もノノさんも既に次の攻撃の為に動き出しており、俺は投擲の姿勢に、ノノさんは次の魔法の発動を進めている。
「こう……」
さあ、セフィルーラさんの動きは?
後ろに下がっても数秒の時間稼ぎにしかならない。
扇形に広がる土石流はコロシアムの壁にまで届く。
横に跳んで避ける時間は既にない。
土石流が扇形に広がる以上、発射直後にノノさんの側面に回り込むような動きでなければ間に合わない。
撃ち破る可能性は……ある。
剣か魔法かは分からないが、どちらにせよ、それならば盾で受けるだけである。
では、これら以外であれば……
「来るとは……!?」
「ふんっ!」
「魔よ、土となり、球となり、途上の結晶を飲みつつ、矢のように飛べ。『
セフィルーラさんは背中の翼を使って飛ぶしかない。
故に、土石流からセフィルーラさんの姿が見えると同時に、俺は全力で棍を投擲し、ノノさんも『土球』を複数発同時に撃ち込む。
「っう!?」
結果、棍を剣で弾いて防いだところに、ノノさんの『土球』が翼へ直撃。
即座に落下して土石流に飲まれるような事は無かったが、明らかに折れている翼で飛び続ける事は叶わないらしく、ゆっくりと落ち始める。
「ハリさん!」
「言われなくても」
もしかしなくても千載一遇のチャンスである。
だから俺はセフィルーラさんへと駆け寄っていき、魔力を込めた拳で殴り掛かる。
「甘いわ!」
「っ!?」
が、俺が殴るよりも一瞬早く体勢を立て直されてしまい、魔力を込めた剣を振るってきたので、距離を取って回避。
俺とセフィルーラさんの間に空間が生まれ、睨み合いの状態になる。
「ま、そう上手くはいきませんよね」
「当然でしょう。アタシだって闘士としてこれまで生きてきたんだから、この程度で音を上げるなんてあり得ないわ」
こうして近づいた状態で比較するとよく分かるが……俺の魔力だと、盾かサミさんが作ったマント以外で、セフィルーラさんの剣をマトモに受けようとしない方がいいな。
一度や二度ならともかく、数度連続で受けたらバッサリといかれそうなぐらいに魔力差がある。
「さあ、今度はこっちの番よ。ハリ、ノノ」
「そのつもりはないです。セフィルーラさん」
「そうです。このまま私たちが押し切ります。セフィ様」
では、予定通りに徒手空拳に近い形になってしまったので、この後も予定通りに行かせてもらおうとしよう。
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