93:レイドバトル・ゴーレム-6
「『
「炎よ!」
「ぶっ潰れろぉ!!」
「撃て撃て! 撃てぇ!!」
小型ゴーレムが砦に向かってくる。
それに対して、ノノさん含め、遠距離攻撃を持っている闘士たちが雨のように攻撃を降らせていく。
それらの攻撃によって直接破壊されるもの、脚の動きが鈍ったために後続に潰されるものなどが小型ゴーレムたちの中に生じ、数が減っていくが……それでも多い、多すぎる。
「ミニ……ゴオォォン……」
「落ちろっ!」
「『
砦に辿り着いた小型ゴーレムたちが砦の中に入り込もうとしてくる。
壁をよじ登るか、門を破ろうとするか、小型ゴーレム同士の身体を繋ぎ合わせて梯子のようになってくるかは状況と個体次第のようだが、どいつもこいつも目標は同じのようだ。
だから俺はノノさんを背中に乗せたまま棍を突き出し、砦を登り切った直後の小型ゴーレムを突き落として追い返す。
ノノさんも射程よりも威力と数を優先するように魔法を撃ち込んで、少しでも小型ゴーレムの勢いを削ぐように働く。
「クソッタレガァ!!」
「上からの指示はどうなっている!?」
「特にねぇ! 自分たちで好きにこの場を切り抜けろって事だ!」
そんな状態が続いていく。
一分、十分、十数分、数十分……小型ゴーレムたちが切りなく押し寄せてくるせいで、時間経過はよく分からないが、俺も、ノノさんも、周囲の闘士たちも、全力で押し寄せてくる小型ゴーレムを排除する事に注力する。
「ゴオオオオォォォォッ!!」
「爆破来るぞおおぉぉ!」
「「「!?」」」
そんな中で、小型ゴーレムの大量放出を終えた後に周囲への攻撃を続けていた超大型ゴーレムが、周囲への攻撃を止め、両腕を上げ、魔力を含む咆哮を上げる。
小型ゴーレムを爆破させる動作だ。
「間に合えっ!」
俺は咄嗟に周囲を確認。
二度目と言う事もあり、既に各自が緊急時用の防御を展開し始めており、そのような手段を持たない者は我が身を顧みず一体でも多くの小型ゴーレムを遠くへと吹き飛ばそうとしている。
だがそれでも、俺たちが立つ砦の壁の直ぐ下には十数体の小型ゴーレムが自爆できる状態で溜まっている。
「『ガラスノクモ』……っ!?」
故に俺は即座に『ガラスノクモ』を展開して、小型ゴーレムの機能停止を狙う。
が、俺のこの行動も二度目であったためだろうか。
機能停止していたはずの小型ゴーレムは残されていた腕を勢い良く動かす事で跳ね、俺の『ガラスノクモ』の効果範囲外へと逃げ出してしまう。
「学習機能付きだと!?」
俺はその光景に顔を青ざめさせ……
「大丈夫です。ハリさん。魔よ、命となり、波となり、途上にあるもの飲み込み巻き込みながら広がれ。『
「「「!?」」」
直後にノノさんが放った『魔波』が俺の魔力を飲み込み、取り込んで、その状態のままに広がっていき、居た小型ゴーレムたちを魔力の波の中に取り込んでいく。
そして、爆発の時が来て……周囲からは爆音が響くが、魔力の波の中に居た小型ゴーレムたちは悉く体の内側からガラス片が突き出て引き裂かれ、自爆することなく機能停止した。
「流石はノノさん。助かった」
「ありがとうございます。でも、ハリさんの魔力があってこそです」
だが、無理をしたためだろう。
ノノさんの顔色が少し悪くなってきている。
少し休んだ方が良さそうだ。
そう思った俺は周囲の闘士の人たちに声を掛けた上で後方に下がろうとして……見てしまった。
「ゴォ……」
「げっ……」
「ひっ……」
超大型ゴーレムが俺とノノさんの方を見ている。
俺とノノさんだけを見ている。
敵意に染まり切った目で。
殺意を視線に乗せながら。
「ゴレムウゥ……」
「うんまあ、此処だけ明らかに被害が少ないからな」
「あー、こりゃあ完全に狙われるな」
「ま、これは仕方がないな。ああしてくれなきゃ、今頃吹っ飛んでんだしよ」
超大型ゴーレムがこちらに向かって一歩踏み出す。
周囲の闘士たちの声が聞こえてくる。
幸いなのは、闘士たちの声の中に俺たちを非難するような響きはない事だろうか。
いや、非難する気がないと言うかこれは……。
「逃げな。無理をしているのは分かっているから、此処は一度逃げて、体調を整えてこい」
「いやぁ、見かけない顔が居ると思ったら、とんでもない逸材だった。なら、まだ後に出番があると前提で動いてほしいよなぁ」
「俺たちもポイントを稼ぐために良い所を見せなければいけないんだ。と言う訳で、この見せ場は譲ってもらえるか?」
俺たちを逃がすために死ぬ前提の時間稼ぎをするつもりだ。
「ハリさ……」
「すみません。助かります」
俺はノノさんの口を塞ぐと、直ぐに砦の中心、拠点への通路がある方へと向かっていく。
「なあに、倒してしまっても構わんのだろう?」
「くっくっく、こう言うシチュエーションは何度経験しても興奮するねぇ……」
「ふははははっ! 俺、転生したら、こういう場面から生き残れるようなカッコイイおっさんになりたいんだ」
「その気持ち、凄くよく分かるわぁ」
「禿同って通じる?」
「おっ、近い世界の人か。通じるぞ」
後方から、様々な種族の男女による死亡フラグっぽい言葉の数々が聞こえてくる。
凄く突っ込みたい、後、酒を飲み交わしたい。
が、ここはぐっと我慢して、俺は走り続ける。
そして、周囲には、いつの間にか俺たちと同じようにこの場から撤退するものが集まっていて、逆に砦の壁上にはこの場での時間稼ぎに専念するつもりの闘士たちが集まっていて、それぞれの得物を体の震えを抑えながら構えている。
「ハリさん!? あの人たちは……」
「此処で命を懸けると決めた人たちの邪魔をするわけにはいかない。報いたいなら、一刻も早く拠点に移動して、戦線復帰できるように行動する事だ」
「……はい」
そうして俺たちは通路を通って拠点に移動。
それから間もなく、通路が一つ消えた。