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89:レイドバトル・ゴーレム-2

「どうだ?」

「いい感じだ。自動更新もしっかり働いている」

「誰かトラペスーピとか言う奴に連絡は行ったか?」

「3番の出口から向かった奴がいる。ダチョウっぽい奴だったから、もう着いている頃だろ」

 大きな機械が置かれている部屋には何人も闘士が居た。

 そして、大きな機械の操作を行うためのコンソールと思しき場所で数人が話し合い、その横のシリンダーの前にも数人居て、何かを話してる。


「えーと……?」

「施設なのは分かりますけど、どんな施設何でしょうか?」

 シリンダーの前に居た人が手に持っていたものを壁に貼り付ける。

 どうやら地図であるらしいそれは、中央に大きな丸が描かれ、下側には0から5の数字が書かれている。

 あ、今、6の数字が誰も触れていないのに書き足されたな。

 そして、この部屋に繋がっている通路も、音もなく一本増えた。

 それといつの間にか、各通路の入り口に1から5の数字が書かれた札が垂らされている。

 これは……そう言う事か?

 まあ、一応、事情を知っていそうな人に確認してみるか。


「あの、すみません。少し良いですか?」

「何かしら? 5番通路を開放した闘士さんたち」

 俺は大きな機械を眺め、少し暇そうにしている女性に声を掛ける。

 金色の髪、青い目、頭の上で光る輪、汚れ一つない白い鎧と背中から生える白い翼、腰に提げているのは煌びやかな鞘に包まれた剣。

 一言で例えるなら天使のような見た目の女性で、纏っている魔力の感じからして、明らかに俺たちよりも格上の相手だ。

 だからこそ質問をするのに良さそうで、礼を失しないように気を付けて話しかける事にする。


「俺たちは今回が初めてのレイドバトルなんですが、あの機械、それに地図は何なのでしょうか?」

「あらそうなの。手慣れているっぽい初動だったけど……まあいいか。あの機械は物質製造機ね。多少の怪我、疲労、空腹を回復するポーションぐらいなら、一定間隔で決闘終了まで無限に。あるいは一人100ポイント相当までだけど、このレイドバトル限定で使える道具を生成できる機械よ」

「物質製造機……」

「そんなものがあるんですね……」

「で、あっちの地図は今回の決闘の戦場全域の現在を示している地図。地図上の数字と通路の数字は対応関係にあって、0がこの施設の位置。上手く利用すれば、色々と出来るわ」

「なるほど」

「凄いものですね」

「ええ、凄いものよ。だから拠点一つにつき一枚は作っておきたいし、他の拠点の地図とも連動させたい。もっと言うなら、ポイント的に美味しいから自分で作りたいけど……まあ、今回は先を越されたみたいね」

 女性は快く俺たちに教えてくれた。

 なるほど、最低限ではあるが物資の補充が出来る拠点であると同時に、レイドバトル開始後に必要になったアイテムが入手できる場所でもあるのか。


「と、他の拠点との情報共有が出来たみたいね。ふうん……まあ、いつも通りか」

「ハリさん。数字が幾つも」

「なるほど。色で分けられるのか」

 と、気が付けば地図に書き込まれている数字の色が、黒だけでなく、赤、青、緑の三色が追加され、四色になっていた。

 また、通路の数も増えていて、どの色でも0から8の数字が、地図の各所に点在している。

 こうなると、中央の大きな丸が超大型ゴーレムの現れる場所で、決闘が始まるまで侵入出来ないエリアとかになるのだろうか。


『全員に通達する! 今回の施設と通路の位置が確定した。各自確認をして、必要に応じて利用してもらいたい。また、これから決闘開始までの間に敵が出現すると予想される場所に最も近い通路の入り口部分を起点に要塞化を進める。なお、今後指示役は赤の0番、施設内に陣地を敷く』

「鉄板の指示ね。まあ、指示役はそうでないと困るけど」

「要塞化?」

「どういう事でしょうか?」

「……。そうね、折角だからもう一から十まで教えましょうか」

 トラペスーピさんの声が再び俺たちの脳内に響く。

 地図を見れば、施設と通路の位置が確定したのは分かる。

 トラペスーピさんたちが赤の0番に、俺たちが黒の0番に居る事も分かる。

 しかし、要塞化とはどういう事だろうか?


「貴方たち名前は? アタシはセフィルーラ・エバウィン。見ての通りの天使よ。名前が長いと思うならセフィと呼んでくれればいいわ」

「え、あ、はい。俺はハリ・イグサと言います。それと俺とペアを組んでいる……」

「ノノ・フローリィと言います。よろしくお願いしますね。セフィ様」

 理由は不明だが、どうやらセフィルーラさんがその辺を教えてくれるらしい。


「ハリにノノね。覚えたわ。それじゃあ二人ともついてきて、要塞化と言うのがどういう行動なのか、どうして要塞化する必要があるのかをアタシが説明できる範囲で説明するから。えーと、そうね、黒だと2番の通路が一番相手に近そうだから、そっちの通路にまずは向かいましょうか」

 と言う訳で、俺とノノさんはセフィルーラさんの後ろに続く形で移動を開始。

 2番の札が下がっている通路に移動、明らかに地図から読み取れる距離よりも短い移動距離で外に出る。

 外に出た所では……数十人の闘士が魔法によって周囲の地面を盛り上げていた。

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