86:ゴブリンとの決闘を終えて-2
「それじゃあ、新しい魔法の名称は『ガラスノクモ』で行きましょう。ハリさん」
「ああそうだな。そうしよう」
じっくりと考えた結果。
俺の新しい魔法の名前は『ガラスノクモ』となった。
ノノさん曰く、遠くから見ていると、煌めく粒子が雲のように広がっているのが見えるそうで、それを由来の一つとさせてもらった。
それと、俺の感覚として、何となくだが相手を蜘蛛の糸で絡め捕るような認識を僅かながらに持っている、と言うのも裏にはある。
「さて、名前についてはこれぐらいでいいとして……ノノさん、次の決闘は何時にしようか。正直、今回の決闘は楽だったから、休養の期間を長くすると、体が鈍りそうな感じはあるんだよな」
「分かります。あまりにも楽でしたから、変な癖と言いますか、進む方向を間違えそうと言うか……一日休養するのはともかく、その後に何日も訓練すると、逆によくなさそうな感じがするんですよね」
さて、魔法の名称が決まったところで次の話だ。
話題は次の決闘を何時にするのか。
うん、俺もノノさんも言っているが、あまりにもゴブリンたちが弱かったせいで、ここで休むと数日の訓練を挟むと、あまりよくなさそうな気がする。
「いっそ、今の内に休養権を切ろうか。俺の絡繰穿山甲の時や、サミさんの俺たちの目の前で次の決闘が決まった案件とかを見る限り、今日の内に決闘の内容を決めれば、一日くらいの準備時間が貰えるっぽいし」
「そうですね。そうしましょうか」
と言う訳で、俺もノノさんもこの場で休養権を解除してしまう。
さて、普段ならばこれで直ぐに次の決闘が組まれるわけだが……。
≪決闘が設定されました≫
「来ましたね」
「来たな」
うん、直ぐに設定された。
なお、『カコカティ』の中なので、他のお客さんに迷惑をかけないようにPSSの音量は最低レベルにしてある。
≪決闘の開始は72時間後になります≫
「えーと、三日後、と言う事でしょうか」
「そうなるっぽいなぁ……」
で、問題の決闘開始日時だが……まさかの三日後である。
これまでにない準備時間だ。
うーん、一日は休むとして、残り二日で準備、どんな準備をするか……いや、まずは相手の確認か。
「さて相手は……おっと、そう来たか」
「なるほど、だから三日も先になるんですね」
俺とノノさんは相手の確認をした。
すると、PSSにはこんな表示が出ていた。
『レイドバトル・PvE:闘士1万名以上 VS 超大型ゴーレム 』
どうやら次の決闘では、俺たちは一万名以上の闘士の集団の中に入って、一体の超大型ゴーレムとやらと戦う事になるらしい。
「一万人か……もはや戦争だな」
「そうですね。それも国や街の存亡をかけるような戦いですよね」
「ん? あーうん、そうだなぁ」
「ハリさん?」
「いや、久々のワールドギャップを感じただけだから、気にしなくても大丈夫。俺の生前の世界だと戦争の規模によっては人口の都合上、もう一桁か二桁は関わる人間の数が増えるものでさ」
「っ!? そ、そうなんですか……凄いことになりそうですね……」
「まあ、凄いことにはなってたなぁ……」
うーん、一万人……一万人かぁ。
コロシアムの広さが相応のものになるのは当然としても、果たしてマトモに戦えるのだろうか?
ぶっちゃけ、ノノさんの足になる以外の役目を持てない可能性もありそうだぞ。
後、生き残れるかはたぶん運だな。
一万人で挑むべきだと裁定されるようなゴーレムの攻撃がマトモな方法で防げるとは思えないし、避けられるとも思えない。
「うーん、情報が足りないな。どういう準備が必要かとか、少し調べてみようか」
「そうですね。こんなに沢山の人がいたら、私なんて何も出来ずに潰されてしまいそうです」
「否定できない人数ではあるなぁ……とりあえず俺とノノさんで出来る限り一緒には居ようか」
「はい、ハリさん」
とりあえず改めてレイドバトルについて調べてみよう。
権利を貰った時に調べた時にも一応は調べたが、どういう立ち周りをすればいいかまではよく分からなかったし。
後、超大型ゴーレムとやらについても、念のために調べておく。
「これ、オニオンさん辺りに話を聞いた方が早い気がしてきた」
「そうかもしれませんね……」
で、調べた結果として、オニオンさんたち経験がありそうな先輩闘士から話を聞いた方が良さそうだった。
「とりあえず、この一万人と言うのが、だいたい自分と同格ってのは大きい情報か」
「それと、色んな地区から集められる、と言うのも重要だと思います」
まあ、それでも最低限は調べられた。
今回は一万人以上の闘士が集められるが、この闘士たちは総合的に見て自分と同格か、最大で上下二段階くらい強さが違う闘士たちであるらしい。
また、闘士たちは様々な地区から集められるため、地区ごとのマイナールールの差から、多少のいざこざはよくある事のようだ。
後は……指揮官役については、優秀かそうでないかはともかく、必ず居ると考えてもいいらしい。
「で、オニオンさんにする質問のまとめはこんな感じでいいかな? ノノさん」
「はい、これでいいと思います。ハリさん」
「じゃ、オニオンさんに連絡を取って、大丈夫そうなら聞きに行こうか」
「はい、一緒に行きましょう」
では、立ち回りについてはオニオンさんに聞いてみるとしよう。
と言う訳で、俺たちは『カコカティ』を後にすると、オニオンさんに連絡を取った。