85:ゴブリンとの決闘を終えて-1
「ふぅ……」
「ほっ……」
ゴブリンたちの決闘を終えた俺とノノさんは、いつも通りにサウザーブさんのお店『カコカティ』にやってきた。
そして、落ち着く効能のある温かいお茶を一口飲み、一息ついた。
「なんと言うか……弱かったな」
「そうですね。弱かったです」
では、ゴブリンたちの決闘を終えての諸々をしていこう。
「ノノさんポイントは? 俺は39ポイントだった」
「私は40ポイントですね。やっぱり弱いとそれだけ少なくなるみたいですね」
「みたいだな。13体も居たのに命ある毒の円陣以下のポイントなわけだし」
まずポイントの確認。
うん、当然ではあるのだが、少ない。
まあ、明らかに弱かったので、これについては当然と言えるだろう。
「ただまあ、ノノさんの範囲魔法があってこその楽勝さではあるか」
「私の魔法だけじゃなくて、ハリさんの魔法もあってこそですよ。私の波の魔法だけだとたぶん威力が足りなかったですから」
「そうか、それなら、全体的に上手くハマったと言う事で何よりだ」
「はい、私とハリさん、二人揃ってこその勝利です」
ただ、仮に13体のゴブリンが戦略的に動くと共に、ノノさんが波の魔法を編み出していなければ、相応の苦戦は強いられたことだろう。
ゴブリンたちは僅かながらでも魔力は扱えていたし、杖持ちに至っては火球の魔法も使う事が出来ていたのだから。
まあ、苦戦はしても、負ける気はしなかったのも本音ではあるが。
「んー、今回は反省会と言うより、成果の確認会と考えるか。ノノさん、波の魔法を実戦で使った感じはどうだった?」
「そうですね……状況に合わせて、もう少し範囲を狭めて威力を上げる事は考えてもいいかなとは思いました。ハリさんの魔法を巻き込んだから、杖持ち以外は倒せましたけど、ハリさんの魔法がなかったら、たぶん一体も倒せていなかったでしょうから」
「ふむふむ」
さて、今回の決闘ではノノさんは波の魔法を使った。
波の魔法はこれまでの魔法よりも大量に水や土を生成し、それを波のように流す事で、複数の相手を同時に攻撃する事が出来る魔法である。
ただ、ノノさん曰く、範囲攻撃になった分だけ威力は落ち、大量に生成する分だけ魔力の消費は激しくなるらしく、一度の決闘で使える回数は3回が限界のようだ。
「と、そう言えば俺の魔法と合わせるのってノノさんにとって負担になったりはするのか?」
「むしろハリさん以外の魔法や魔力を巻き込む方が大変ですね。たぶんですけど、ハリさんが私の事を受け入れてくれているおかげで、自然に巻き込めるようになっているんだと思います」
「なるほど。なら良かった」
まあ、威力については、ノノさんの魔力の性質が自然と言う、周囲にあるものとその魔力を利用する事で、威力を上げられる性質があるので、多少は何とかなるようだ。
また、この自然と言う性質には、周囲の環境からの悪影響も増大してしまうと言うデメリットもあるし、周囲の環境に敵の魔力が含まれていると巻き込むのが難しくなると言う欠点もある。
が、そちらについても、周囲の環境に散布された俺の魔力を優先的に取り込むことで、だいぶ抑えられるらしい。
「ハリさんの魔力放出についてはどうでしたか? 杖持ちの魔法を封じて、その後の復帰を阻害する事が出来るのは確認しましたけど」
「んー……俺の方もまあ、格下相手なら問題なし、かな。格上相手だと、普通に弾かれそうな気がするけど、そこは試してみないと分からないし」
「そうでしたか」
ノノさんの言う魔力放出と言うのは、杖持ちに対してやったアレの事である。
効果としては、俺よりも魔力の制御能力が低い相手に対する魔法の発動妨害、それに多くの存在が自然とやっている周囲の環境からの魔力取り込みの妨害がメインとなる。
これは俺の魔力の性質をほぼそのまま生かしたものであり、射程は短く、格上に効果があるかは怪しいと言う代物ではあるが、とりあえず今回の決闘で効果自体は確認された。
以降は俺の練習、扱い方、相手次第で、相応の成果を上げてくれるだろう。
いずれは怠惰堕落の時のように、相手に吸収させて内側から、と言うのもやりたいところではある。
「うーん……」
「ん? ノノさん? どうかした?」
と、此処でノノさんが悩む姿を見せる。
どうかしたのだろうか?
「その、ハリさんの魔力放出、何か名前があった方がいいかな、と」
「名前かぁ……付けるメリットはあるんだよな?」
「はい、それは勿論です」
ノノさん曰く、習得した魔法に名前を付けるのには、メリットとデメリットがあるらしい。
メリットは名前を付ける事で、自分の意識において効果が明確化、制御、威力、速度などの向上が図れると共に、仲間との意思疎通もしやすくなるらしい。
デメリットは名前と言う型を嵌めてしまうために、その型そのままでは対応できない範囲への対処が遅れやすくなるそうだ。
「ふむふむ。そうなると、今回の俺の奴はちゃんと名前付けた方がいいな。必要なら早打ちもしないといけない行動だし」
「そうですね。アレは名前を付けた方がいいと思います」
「じゃあ、二人で考えようか」
「はい、二人で考えましょう」
と言う訳で、俺とノノさんは二人で、俺の新たな魔法の名前を考える事になり、注文したお茶を飲み終えるまで、じっくりと考えるのだった。
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