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77:新たな権利-2

「まず調べるのは……レイドバトルでいいか」

「PvPじゃないんですか?」

「PvPはたぶん底なし沼だから、後回しにした方がいい」

「そ、底なし沼ですか」

「俺が思っている通りなら、だけどな」

 俺がまず調べてみたのはレイドバトルについて。

 基本的には少人数対多人数の非対称戦闘であるのは先述の通り。

 そして、今の俺たちが振り分けられるのも多人数側である事もほぼ間違いない。

 となると問題は、敵として出てくるのがどんな相手になるか、どれぐらいのポイントが得られるのか、どれぐらいの動きを要求されるのか、この辺だろう。

 結果は?


「凄く大きいですね。神殿と同じくらいでしょうか?」

「それぐらいはありそうだな。なるほど、これは確かに万単位の人数が必要だ」

 まず敵について。

 小さいものなら人間サイズ、大きいものだと高さ数百メートル程度までは簡単に見つかった。

 ぶっちゃけ、いつも通りの何でもありであるらしい。

 ただ、見た限りだと……レイドバトルなのに人間サイズの方が、そのサイズなのに多人数を相手に出来るだけのスペックがあると言う事で、危険視される傾向にあるようだ。

 後、敵が『煉獄闘技場』の用意したモンスターである場合だけでなく、闘士である場合もあるらしい。


「あ、ハリさん。こっちには同程度の人数の戦いがありますよ」

「ん? ああ、本当だ。なるほど、どっちも百人程度の大規模PvPもこれには含まれているのか」

 また、少々特殊な事例になりそうだが、人数差がほぼないパターンもあるようだ。

 どうやら大規模戦闘と言う括りで以って、レイドバトルに含まれているらしい。


「ポイントは……活躍次第。でも、特に多かったりはしない、と」

 得られるポイントは相応のものに、活躍による追加分を加えた程度。

 そこまで美味しい形式ではないようだ。

 いや、一度の戦闘に数時間から数日かかるパターンもあるようだし、下手をすると、マズイまであるか?

 しかし、途中で落ちても自陣営側が勝利すればポイントは貰えるから、相応の価値はあるのか。


「人数が多い分だけ、役割分担が大事になるみたいですね」

「だな。特に司令部と解析人員の実力と連携は重要みたいだ」

 では、肝心の勝利を掴むために必要なものは?

 調べた範囲だと、PvEである場合は、自分の側の陣営のメンバーが自分の実力を八割程度発揮できれば何とかなる、と言うのがおおよその意見であるようだ。

 しかし、そうして実力を発揮するためには、人数が人数である事もあって、相手がどんな存在であるかを素早く解析する事、解析結果を正しく周知する事、解析結果と現状に応じて適切な指示を出せる事、これらが重要になる。

 つまり、優秀な解析者と司令は必須であり、その出来によって戦況は大きく左右されると言う事だ。


「これは……味方運に恵まれるのが前提か」

「あははは……そうかもしれませんね」

 まあ、『煉獄闘技場』の主ならば、本当に変なのはレイドバトルに混ぜないか、混ぜてもそう言う重要な地位にならないようにする気はするが……勝利するためには幾らかは幸運に恵まれるのが前提になりそうか。


「うーん、御呼ばれしたら参加はするが、積極的には、と言う感じだな」

「そうですね。今だと私もハリさんも集団の中に埋没してしまって、特に何かが出来るような気がしないです。私が『顕現する(リリース・)自然の猛威(ディザスター)』を自分の実力で使えるようになれば、違ってくるのかもしれませんが……」

「だなぁ。ただ、『顕現する(リリース・)自然の猛威(ディザスター)』を自力で使えるようになったら、少人数の側に割られる事も考えた方がいいと思う」

「あ、それはそうですね」

 なんにせよ、現状だと俺は精々が数合わせの一人。

 ノノさんは遠くから少しずつ攻撃するくらいしか出来なさそうか。

 つまり、勝てるかは割と味方任せな上に、活躍が出来るわけでもない、と。

 今の俺たちには少し早いコンテンツになりそうだ。


「えーと、じゃあ次は人数制限の方か。こっちは……今後、自然に入ってくるみたいだな」

「そうみたいですね」

 次は人数制限の解除について。

 これで一番大きいのは、やはり相手が一人であるとは限らなくなることか。

 つまり、ヒロウクモ・怠惰堕落(スロウコラプス)の死体たちの時のような対多人数戦闘を今後は行う必要が出てくるようだ。

 こうなるとだ。


「んー、範囲攻撃で全体をまとめて弱らせるような手段か、単体高威力で一人ずつ確実に仕留めていくか……その辺は予め考えておかないと拙そうだな。合わせて俺の立ち回りについても考えないと拙いか」

「そうですね。相手の数や戦い方次第ではハリさんには私を担いでもらって、と言うのが最善策になるかもしれませんし、逆にハリさんが前で相手を惹きつけ続けて、と言うのが良い場合もありますよね」

 一気に戦術も戦略も難しくなっていく。

 とりあえず現状だと手札不足だなぁ。

 正直、『ハリノムシロ』ぐらいしか集団戦闘に適応していると言えるようなものがない。


「と、これは……なるほど。当然と言えば当然か」

「普段は接点なんてありませんもんね」

 さて、人数制限解除に伴う仕様は他にもある。

 味方が増える場合についてだが、この味方と言うのは同じ地区に住む知り合いとは限らない……と言うか、ほぼ間違いなく別の地区に住む面識のない相手になるそうだ。

 そのため、決闘の為にコロシアムに転送されてから、三分から一時間程度の話し合い時間が用意されるらしい。

 この間にお互いの自己紹介と、基本的な立ち回り、大まかな戦術は話し合え、と言う事のようだ。

 ちなみに味方の実力については、総合力についてはほぼ自分と同じ程度に考えていいそうだが……俺とノノさんの場合、俺たち一人一人で換算しているのか、二人合わせてなのか、それによって少し変わってきそうだ。


「得られるポイントは……何とも言えないみたいですね」

「だな。やっぱり相手次第、成果次第としか言いようがないみたいだ」

 得られるポイントについては特に言う事もなし。

 今後普通に混ざってくるようなので、挑まないとも言ってられない。

 最低限の対策ぐらいは出来るだけ早めに考えておいた方が良さそうだ。


「で、最後にPvPなわけだが……」

「えーと、書かれている情報が真逆のページが並んでいるんですけど……」

「まあ、そうなっているよなぁ」

 分かってはいた。

 分かってはいたが……やはり魔境のようだった。

 これは調べるだけでも時間がかかりそうだ。

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